作品タイトル不明
440.ヴァージルといっしょに主戦力
ヴァージルは普段着だったので、執務室奥の扉に消えて、白い鎧に着替えて出てきた。今日の盾は白地に金の縁取りをしたまたたいそうお高そうな盾だ。
もう無意識で【鑑定】してしまう。聖騎士の盾というそのまんまの名前だが、窮地に陥ると防御力が倍になるとかなんかやべえなって盾だった。
窮地に陥らなくていいからね。
しかし、羨ましいな。白い鎧。やっぱり俺も着てアンジェリーナさんに見てもらいたいなあ。イケメン度増すんだよね。黒もいいんだけど、俺が黒髪だから絶対白の方がマシに見えそう。
「どうした? 聖騎士団に入る気になったか?」
「入らないよっ!」
「イェーメールなら俺のスカウト枠が空いているけどな」
「……スカウト枠なんてあるんだ」
「騎士団長、副騎士団長には与えられてるんだよ。まあ、聖地で試験を受けてもらわないといけないが、セツナなら付与剣もあるし大丈夫だろう。この間の武術大会でもトーナメントで活躍していただろう?」
「入りませんからっ! アンジェリーナさんのところで本読む暇なくなりそうだ」
ヴァージルはそれに笑う。
部屋から出ると、騎士たちが慌ただしく動いていた。イェーメールの防衛ということでみんな本気の聖騎士鎧装備だ。聖地でそろっているのもかっこよかった。ただあのときはみんなどちらかというとお祭り気分だ。これから始まる本気の戦闘にぴりりとした空気が漂っている。
街の人たちにも話は漏れてきているのだろう。普段、通りは夕方でも賑わっている。それがいつもより街の人、NPCたちが少ない。
反対にプレイヤーがわんさか集まっていた。
薄闇に浮かび上がる白い聖騎士の鎧に、……黄色い悲鳴が上がる。
「相変わらずの人気だな」
「顔はいいからな」
いや……すみません。人気を押し上げているのはたぶん俺のせい。
余計なことをたくさん漏らしてます!!
しかしそれは俺の命のためでもあるから許して。
屋敷に戻ると見知った顔がちらほらしていた。
軍議をしていた部屋にさらに机が搬入されて、その内の一つに猫じゃらしが座っていた。
「お、セツナ君やっほ」
「こんばんは」
「セツナ君はC組ね。班長さんだからよろしく」
何やら話が進んでいる。
「私が説明するのじゃ」
執務室唯一のソファにでんと座っている柚子に手招きされた。
ヴァージルはソーダとジェロームや騎士が囲んでいるテーブルへ移動している。
柚子:
さっき流れた運営からの告知はチェックしたのか?
セツナ:
ヴァージルと話してるときだったからまだ見てないです。
柚子:
イェーメールの門でクエストに参加すると配布されるが、私たちはその前に参加しているから必要なしじゃ。で、今回のクエストは我々もコマとなって動くシミュレーションゲームなのじゃ。参加したプレイヤーが適当に割り振られてるが、最終的にはプレイヤーの意思で好きなように移動できる。そこで、うちのクランメンバーを各地に配置することにしたのじゃよ~。
八海山:
準備時間がゲーム内であと一時間程度なんだ。その後、各自配置に着く。セツナ君ももう移動していていいよ。ヴァージルと一緒だから、ヴァージルと行ってもらってもいいが。ちなみにCが完全に正面だ。
運営からの告知をチェックしていると、滞在可能領域が表示されている。扇形になっていて、AからEまでがあった。Cが中央で、主戦力衝突予想域だった。
セツナ:
ジェロームさんと話してるみたいだからもう少し待ってから移動するよ。
八海山:
半蔵門線を初めとした斥候部隊が周囲を洗っていて、両端のAとEの外れあたりから突破してくると睨んでいるのでそちらも少し多めに人を割り振ってる。同じC組のプレイヤーには声が届くようになっているらしい。ヴァージルがいるからまあ、Cは密集しそうだ。気をつけて。
人気者で大変だな……。
それで人員が偏るのも困るのか。さてどうしようね。
ソーダ:パーティーチャットはロジック、蒼炎、漆黒、それと御庭番衆でアライアンスを組んでいるからよろしく
おにわ……慌てて見てみると、パーティーリーダーが半蔵門線で他に九名参加していた。赤影さんとかいるwww 最初からなる気満々じゃんwww みんなドリームしてたんだなあ。よかったね、忍者の役職あって。
あらかた話し終わったのか、ヴァージルがこちらへやってきた。
「セツナ、配置は聞いたか?」
「うん、正面だってね。まあ、頑張るよ。もう行く?」
「そうだな。行こうか」
お誘い合わせの上、現場に向かうことになりました。
門から出る頃には後ろにプレイヤーの大群が……。ものすごく強者感がある!!
「おいでシュヴァルツ」
「ぎょろちゃん、行くよ~」
騎獣を呼びだし指定マップへ向かった。
パーティーチャットはゲーム丸出しなのでヴァージルは誘えない。C組さんの領域につくと、チャット横に広域というボタンができていた。そこをぽちっとなすると、声が全体に届くという。
「えー、各人、振り分けられた場所に行ってくださいね~」
エリアCにいるのはいいんだよ。そこに振り分けられたのなら。
「時間になったらきちんと動いてください……」
そんなに近くにくるわけではないが、円形にヴァージルを取り囲む形になっている。みんな、クエスト頑張ろうね?
すると、俺たちにだけ公式アナウンスが入る。
《『バスタビア子爵家の反乱』へ参加されるプレイヤーのみなさん。十五分後に戦闘が開始されます。今回の戦闘はターン制となります。十分ごとに敵の集団配置とエリアの状態が変化します。ターンは全部で二十ターンになります。二十ターンでバスタビア子爵家の主戦力を排除できればプレイヤー側の勝利となります。なお、ゲーム開始直後より、会話のNPCへの配慮を一時的に緩和いたします》
つまり?
メタ発言OKってことかな?
まあ、あと何ターンで終わるぞとか、ターン終了時間まで何分だぞとかはゲームシステムな発言だもんな。
でもゲームプレイヤーとしてはそこら辺大切だから言うしかないわけで。
ただ、今はまだヴァージルも反応するので話すことはできませんね。
「ヴァージル緊張してる?」
「いや? ……うん、そうだな。緊張はしているよ」
そして笑う。
「隣にセツナがいるからまあなんとかなりそうだ」
そーいうのはっっ!! アンジェリーナさんに言われたいんだよっ!!!