作品タイトル不明
439.バスタビア子爵の反乱
協力すると言うことになったら善は急げだ。各方面にクランメンバーがフレンドチャットを飛ばしている。
ジェロームは使用人たちに命じ、騎士の準備をさせるという。
「来訪者が協力を申し出るのはどちらにすればいいでしょう?」
八海山が聞くと、少し悩んだ末、イェーメールの門にそれぞれ受け付ける場所を設けることとなった。
「相手の規模をまだ把握しきれていない。来訪者の協力者にはそれぞれ部隊ナンバーを渡す。まとまりで動いてもらおうと思う」
俺たちは食事をしていた部屋から、今は四角いテーブルを立ったまま囲めるような部屋に移動している。そのテーブルには大きな地図が広げられていた。
同時に、俺たちのステータス画面から見られる地図も更新された。
特設マップができあがっている。イェーメールの南の方から繋がっていた。その入り口は例の実のなっていた果樹園の近くだ。
「現在このあたりまで進軍してきていると情報が入った。街に被害が出ぬよう、このあたりで迎え撃ちたい。ただ、このように目立って進軍してきているのが気になるな……」
「拙者ちょっと走って斥候してくるでござるよ。どちらかというとこちら、周辺の方が気になるでござる。知り合いの斥候にも声をかけているでござるから、すぐ連絡するでござる」
と、半蔵門線が飛び出していく。パーティーを抜けたので、これは忍者仲間で探ってくるのだろう。
「伏兵がいるのならこのあたりでしょうね。半蔵門線に任せましょう」
八海山が広げられた地図の数カ所にコマを置いた。
『軍議みたいで楽しいのじゃ!』
『空の国の軍議は入れなかったもんねッ!』
いつの間にか騎士が数人部屋に入ってきて、いっしょになって話し合っていた。
「よし! 来訪者からの情報まとめは猫じゃらしに押しつけたった。あ、ジェローム様、友人をここに呼んでいいですか? 来訪者からの情報を一手に引き受けてくれるヤツがいるんです」
「ああ、セバスチャンに言っておいてくれ」
「もうすぐ来るらしいので俺が屋敷の前に迎えに行きます」
セバスチャンさんも色々忙しそう。
「兄上、武器や兵站はどうしましょう」
へいたん……ああ、ご飯?
「ご飯は来訪者はたいがい自分で持ってるから平気だよ」
「今回のイェーメールへの協力はボランティアだと言ってありますよ」
俺と八海山の言葉にジェロームをはじめ、ヴァージルと騎士たちがええ? って顔で驚いてた。
EP回復用ご飯は来訪者のたしなみだよ。
「まあ、何かしら礼をというなら、また終わってから考えるでいいんじゃないですか?」
ソーダの発言にジェロームは戸惑って、唸っている。
「ただでというわけにはいかないが、のちのち考えさせてもらう。今は各自で準備した物に頼ろう」
急な対応でそんなものないもんね。
大丈夫大丈夫。来訪者、貢献ポイントの大切さすごくわかったから、喜んで参加してくれるよ。
「兄上、聖騎士団へ一度戻ります。街の防衛はお任せください。アランに指揮をさせて、俺は一時的にこちらに参ります」
「今後のことを考えるとお前も聖騎士団に残っている方がいいのだがな」
聖騎士団はあくまで聖地の持ち物という認識らしい。
だけど、その聖騎士団には多くその土地のものが採用されるし、誰だって自分の実家関連は気になるだろう。
「ここまできて仲間はずれはひどいですよ」
そうイケメンは笑って部屋を出ていった。
ふぅ、とジェロームは息を吐くと、再び地図に目をやり、騎士の配置に頭を悩ませ始めた。
実は俺はちょっと暇。
八海山とソーダは来訪者のとりまとめをしている。ソーダは猫じゃらしのお出迎えだ。柚子と案山子はいつの間にか姿を消している。
フレンドを眺めているが、生産組は必要ないかなと、一応定型文で、『ヴァージルというかアスター家のイベントが始まるから、戦闘に参加するならイェーメールの門の受付に行ってね』と送っておいた。
しかしたぶんきっと一番知りたいだろうアリンさんは今ログインしていないらしく、反応はない。
フレンドチャットは送れるが、ログインしていたら名前が黒文字になるんだよねー。今グレーだから自分の本鯖で遊んでいるのだろう。
後から怒られそうだから、せめてヴァージルをいっぱい撮っておくことにした。
「暇だから聖騎士団覗いてきていい?」
「あー、おっけ。行ってこい」
ソーダが言うと、ジェロームも頷いたので聖騎士団で。
門は顔パス。
そして奥に行くとみんな慌ただしそうに白い鎧を着ていた。
俺と行き合うとびしっと頭を下げてくるんだが……なんかめっちゃ偉そうだな、俺。
勝手知ったるイェーメールの騎士団。
ヴァージルの執務室へ向かうのも止められることはない。
部屋の外まで漏れ聞こえてくるアランの声に合わせて扉をノックし、返事を待たずに開けた。
「みんな忙しそうで暇だから来た」
ちょっとお怒り気味のアランと、仏頂面のヴァージル。
「セツナ君からも言ってくれない!? ヴァージルが俺には来るなって言うんだよ」
「聖騎士はイェーメールの治安を守るために力を貸すのは問題ないから、街を守れってことじゃないんですか?」
「セツナの言うとおりだな」
味方にならなかった俺にアランは頬を膨らませた。
「空の国との戦いの時、ヴァージルは俺の家門が参加しているから助太刀するってついてきたじゃないか!」
「あれはあくまで個人的な話だろう」
「これだって個人的な話だ」
仲良いな。
個人的とかじゃなくて友だちとしてとかにしたらきっとお互い少し違うのになと、ニヤニヤして眺めていた。
「今回は違う。聖騎士団としても出陣しなくてはならない。イェーメールの街が、市民が攻撃されるとなれば、イェーメールに駐在している我々は守るために動かなければならない。指揮する者が必要だ」
それならヴァージルが団長じゃないかと、アランは言うことができなかった。
自分の実家が参加するからとアランは個人として空の国の戦いに参戦した。ヴァージルも今同じことをするのだ。
ぐぬぬぬぬという顔をして言葉を探しているアラン。
「本来なら団長としての責務を果たすべきなのだが、すまない」
もう一押しだヴァージル! ちゃんと言え!
アランもわかっているはずだ。ヴァージルの立場ならアスター家として参加したいということを。
「アラン。頼んだ。お前になら後方を預けられる」
ぐぬぬぬぬが極まって、大きなため息とともにがっくり項垂れた。アラン陥落。
「これ食べて頑張ってください」
【持ち物】に残っていた氷ぶどうを渡すと、受け取りながらキッとこちらを見る。
「シャトーブリアンのシャトーブリアンステーキを要求する! 騎士団全員にだ!」
それは、しばらく二人で籠もらないといけない。
「頑張って一緒にとってくるよ」
俺が応えると、ヴァージルはこちらをチラリと見た後、アランに向かって頷いた。
「頼んだ」
「目立って進軍してきているから、前方に俺たちを引きつけておいてイェーメールを狙うとかありそうなんだって。頑張ってね、アランさん」
俺の言葉に真顔になったアランが力強く頷いた。