軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

435.アンジェリーナさんを傷つける奴はデストロイですよ

「今の第六都市に行くなんて、よっぽどの用事だったんだな」

ブラウン先生の言葉に、アンジェリーナさんは力なく首を振った。

「第六都市の噂が聞こえてきて、あまりよくない事態なのもわかっていたわ。第六都市の貸本屋仲間からも色々と漏れ聞いていて……手紙のやりとりはできるのよ。まあ、検閲は入っているらしいけれど。書いてあることの端々からあまりよい状態じゃないということはわかったから、頼まれていた本を届けるついでに少し覗いてみようと思ったのが間違いだったわね」

「アンジェリーナさん、お届け物なら俺がやるのに!」

「セツナくんは指名手配になったって言っていたじゃない!」

ああ、そういやそうでしたね。

「その件も気になっていたし自分の目で見たかったというのもあったのよ」

「アンジェリーナさんみたいな、明らかに無害な人にまで乱暴なことをするなんて、許せませんよ」

「その件は、きちんと私が話を聞けばよかったのよ。もう門のところだったから、聞こえないふりをして騎獣で移動してしまったのがよくなかったわ。それにしても、ここまで追いかけてくるなんて思いもよらなかった」

頬に手をそえて、ふうと息を吐く姿が美しい。

そんな彼女に怪我をさせるような輩は、許せないね。

「どうします? 俺、アランブレまで送りましょうか? ファンルーアの飛行船に乗ってしまえば安全だと……いや、あ、友だち呼んできてポータルで帰りましょう! そうだそれがいい。ブラウン先生、この間の退魔師の友人を学院に呼んでも構いませんか?」

「……来訪者は便利だなあ。いいよ。呼びなさい」

先生優しい! 何か俺にとってきてほしいものがあったらお任せあれっ!!

セツナ:

八海山、今からウロブルの学院に来てもらうことってできますか?

八海山:

ああ、別に大丈夫だが。

セツナ:

受付に話を通しておくんで、お願いします。生活魔法研究室のブラウン先生に会いに行ってください! ちょっと俺忙しいんでお願いしますね。

とりあえずぶん投げておこう。

「友人がすぐ来てくれるそうです」

「受付には俺から話しておこう」

「よろしくお願いします」

深々と頭を下げた。

「ああ。で、セツナはどこに?」

そのまま部屋を出て行こうとする俺にブラウン先生が疑問をぶつける。

俺はくるりと振り返り、笑顔でサムズアップ。

「ちょっと様子を見てきますよ。アンジェリーナさんのことをよろしくお願いしますね」

男と二人っきりにさせるのは大変不安ではあるが、俺にはやることができたからね。

アンジェリーナさんを追いかけ回すなんて、デストロイですよ!!!

街はすっかり日が落ちて暗闇が増えていた。それでもまだ夜は始まったばかりだ。プレイヤーだけでなくNPCもたくさんだ。

黒い騎士服はなかなか見つかりにくくなっていたが、そんなことで諦める気はないのだ。なんたって、アンジェリーナさんは怪我をしていたのだから。

ぜってぇゆるさねえええええ!!!!

黒い服黒い服。

こう見ると、単なる黒い服はそんなにいない。NPCで黒づくめはほぼなしだ。

プレイヤーだって真っ黒なのは忍びの者たちくらいだろう。いや、たまに黒い鎧いるけどさ、プレイヤーの髪色結構派手だからね。

と、かなり目立つ真っ白な男たちが現れた。

聖騎士団だ!

彼らもまたキョロキョロとあたりを見回していた。捜し物……はっ! そうか、聖騎士はその領地の治安維持にも協力するってヴァージルが言っていた。きっと黒騎士探してるんだ。他の領地で好き勝手させられないもんな。

どうせなら一緒に探した方が効率がよさそうだ。

「こんばんは、何か捜し物ですか?」

俺が突然話しかけたから、あちらは戸惑いの表情を浮かべている。

「実は俺も不埒な輩を見て探してるところなんですよね。女性を追いかけ回してたみたいで」

嘘は言っていない。

そして、女性を追いかけ回していたのところで顔色を変えた。

「そんな人物が? 女性は大丈夫か?」

「女性の方は大丈夫ですよ。俺はそのうろついてた怪しげな男たちがどうなったか確認しに来たところなんですけど……あ、俺、イェーメールの聖騎士団長ヴァージルの友人です! ほら、奉納式の前の来訪者も参加できる武闘会に出場して――」

すると明らかに聖騎士たちの態度が軟化した。

「ああ! ヴァージル殿の」

「覚えている。 細剣(レイピア) で素晴らしい戦いをしていた子だね」

さすがヴァージルっ! そこにしびれる憧れる!! 一発で警戒解除された。

「俺たちもウロブルに不審者が紛れ込んだと捜索依頼が来てね。兵士もだが、聖騎士も駆り出されたところだ」

きっと同じだ! あいつら見るからに怪しいもんな。

「だが、人相風体はわからないそうだ。後ろ姿を追いかけてきたらしくてね。だから、俺たちみたいな目立つのが歩いていたらそうそう悪さはしにくいだろう?」

「見せることで抑止力につなげるんですね!」

そういった取り組みはありよりのありだと思います。

だが、そうなると彼らと一緒に行動していては探せなさそうだ。

闇夜に浮かび上がる白い鎧には近づかないだろう。

「まあ、俺は俺でぐるっと見たら帰りますね。お仕事頑張ってください!」

さすがに丼ものをぽいっとここで渡すわけにはいかないな。立ち食いしながら見回りとか、コントだ。

「今度差し入れ持って行きますね~」

と言ってわかれた。

まあ軽くぐるりと見よう。

なんて思っていたら、すぐ見つかった。

奴ら、なんと門のところで堂々と徒党を組んでいたのだ。

胸にキラリと光る乙女座のマーク。

第六都市のヤツらですよ!!

デストロイですよデストロイ。アンジェリーナさんを傷付けた報いを受けよ!!

細剣(レイピア) を抜いて近づこうとしたところでクランチャットに止められる。

八海山:

アンジェリーナさんを最後まで送ってきたよ。何があったんだい?

ピロリ:

私も一緒だから~、八海山と二人っきりにはしてないわよ★

うーん、アウトかな。

柚子:

私もいたのじゃ! 一緒なのじゃ!

セツナ:

セーフですね。

ピロリ:

何がよwww

なんか第六都市で絡まれそうになって親衛隊から逃げてきたって話だったわよ。

セツナくんは今何してるの?

セツナ:

第六都市の親衛隊を門のところで見つけたので今からデストローイしにいこうかと。

柚子:

すとっぷなのじゃあああ!! せっちゃん何するのじゃ。ステイ! ハウス!!

セツナ:

アンジェリーナさんを傷つけといて、生きて帰れると思うなですよ。ハハハ!

なにのうのうとそのまま暮らせると思っているのだ。阿呆めっ!

今度こそ 細剣(レイピア) を抜く。

と、あ、ミュス。

反射的にぶすっとなしたところ、ちょうど門前の親衛隊と目が合いました。

「あっ!!」

「はあ!?」