作品タイトル不明
433.学院で修復依頼
「師匠はこいつなんだろう?」
「いや、修復師の方の師匠ですよ。アランブレの方に住んでらっしゃいますね。これを見ていただいて――」
「持ち出しは禁止だ」
なんてこったい。
「反対にいくらなら出すんだよ?」
「そうだな……五十万シェルくらいまでなら出す」
え? 高くね??
図書館の時より高いぞ。
「うーん、セツナ、材料費なんかと釣り合うのか?」
俺を振り返って見たブラウン先生の目は笑っていた。
「正直どれをどのくらい使うかなんですよね。やってみないと、この状態じゃわかりません……」
材料費、ほぼタダなんだけど、そう、修復の道具の減価償却分を得ていかねばなりませんねっ!
「もう十万シェル、一応用意しておけ。セツナ、悪いが友だちのよしみで最大六十万でやってくれないか?」
「完全修復できるかもわかりませんし、実際やってみてでも構いませんか?」
「ああ、頼む」
ボサボサさんからもOKをいただいた。
さて、この部屋は無理だ。
「仕事スペースの空いているテーブルが欲しいんですが……」
「俺の研究室でやろう。いいか?」
「学院から持ち出さなければいい。できたら教えてくれ」
ということで預かってまたもや部屋を移動することとなった。
「実は、あいつボンボンでな。金があるんだよ」
生活魔法研究室に戻り、どさっとソファに座ったブラウン先生が笑う。
「ユーファもそれを把握していてな。ほら、あれもがめついエルフだ。引けるところからはとことん金をもぎ取る主義さ。実際あの部屋から出てくる修復が必要な本は、いつもひどい有様だしな」
「有機物的な汚さはなかったんですけど、埃ヤバかったですね」
「またそろそろ研究生を使って生活魔法のテストでもしてやろうか」
正しい生活魔法の使い方の指導だろう。
「さて、では机をお借りします」
持ってきた本と、俺の修復道具セットを取り出した。わーい。何度見ても心躍る。
職人の道具って感じでかっこいいんだよなあ。
今回も本の傷み具合がなかなかひどく、そうなるとミニゲームの判定がシビアになる。結局できあがったのは真夜中だった。
「建築の、本?」
「お、できたか。どれ……すごいな。読めたもんじゃなかった本をここまで回復させるとは。六十万とっていいぞ?」
「実際中をよく見れば図書館のよりはましだったんで五十万でいいですよ。それより、この建築の本、各都市の建築物の特徴ですね」
「あいつは都市構造の研究者だからな」
「えー、欲しいなあこの本」
ハザック親方に見せてみたい。
「持ち出し禁止なのにはわけがあるんだよ。都市構造がわかるってことは、その都市の防衛機能が露呈するってことだ」
ああ、それはいけないな。確かに。
「とはいえ、研究はしたいとどこからか借りたのかどうか。各都市ってのがなあ。国の持ち物か? まあ、代金徴収に行こうか」
「え、真夜中ですけど……この時間はむしろ宵っ張りの研究者にとってはゴールデンタイムな感じですかね」
「その通りだよ。そしてあいつは宵っ張りも宵っ張り。昼夜逆転人間だ」
ということでお届けにあがった。
「お待たせしました。こんな感じの仕上がりですけど、どうでしょう。だいたい直せたと思います」
俺が本を差し出すと、おおおと声を上げながら本に集中してしまった。
「おい、金を先に払え」
見かねたブラウン先生が小突くと、部屋の隅を指さす。
お金が無造作に置いてある。
やだーこのボンボンっ!!
「六十万シェルあるぞ。全部もらってけ」
「五十でいいですよ」
適正価格でいきましょう。すでにぼったくりだし。
「そちらの本って、俺も読んだらダメですか?」
まあ、アランブレの本屋にないか確認してからだが、持ち出し禁止まで言われるのならたぶん、ないのだろう。
ボサボサ改め、ボンボンさんがチラリと本から顔を上げてこちらを見やる。
「まあ、ここで読んで行くなら構わないよ。俺のあとだけどね」
「ありがとうございます」
となると、ウロブルでログアウトが正しいか。
「それじゃあ、研究室で眠ろうかなあ」
「俺も寝直す。そうしよう」
常人はこの時間寝ているものなのですよ!!
ブラウン先生も眠そうだ。
「セツナは都市の構造なんか読んでどうするんだ?」
「うーん、貸本屋になさそうな本なので、読んでおいて損はないかなあと。別にそこまで時間がとられるものでもないですし。図書館にもなさそうな雰囲気がするし?」
といいつつ、ぺらっと見たところ、第六都市の構造について詳しく描いてあったのだ。
レジスタンス側に情報として流してあげたいなとおもいつつ。流したら俺って一発バレするのかな。ちょっと悩ましいところ。俺というよりもボンボン先生が捕まったら可哀想。
流すかどうかはまた別として興味があったので一度覗きたい。
プレイヤーの特権で、一度見た本はまた見返せるのだ。
寝て起きて。
準備室には長椅子がある。俺がここから登場するときは、この部屋で休憩をとったという認識になるようだ。
「おはようございます!」
「もう夕方だがな。とはいえ、あいつの研究室に向かうならこの時間が一番だ。あいつにとっての朝だからな」
そういって今日も先頭を行ってくれるのだ。ブラウン先生って結構世話焼きだ。
「失礼します」
そういって入ると、俺が修復した本が、山積み本タワーの一番上に載せられていた。
「ああ……いいよ、ジョンの部屋で読むなら。読み終わったらジョンに持ってこさせればいい」
「ありがとうございます!」
よかった! この部屋読むところないんだもん!!
たぶん、この部屋で一番地位の高い物は本だ!
いつもブラウン先生が寝転んでいるソファに座らせてもらう。
先生はソファの反対側で優雅に生活魔法で入れたコーヒーを飲みながら別の本を読んでいた。
ここで俺が読めたのは、1~7都市まで。第八都市はなぜかページがめくれないっ!!
く……また今度読ませてもらわないとなのか?
確かめたいことがあって!! と言うしかないか。
各都市の特徴なんかも描かれていて面白い。ローレンガはやっぱりお江戸だな。木材建築。水路による都市の交通機能なんかも言及されていた。
ウロブルはそんなに見て回っていないからか気づかなかったが、木の家も多いそうだ。ただ、貴族の屋敷とメインストリートは西洋風の石畳でできている。
他の都市は一般的にぱっと思いつく西洋風の街並みだった。
面白いのが地下の下水道について結構書かれているのだ。
アランブレの例の下水道についても注釈があった。
第六都市の下水道についても。