軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

420.写本師のお仕事と獅子座の神様

急に出てきた写本師の名前にきょとんとする。

あの眼帯イケメン野郎何かやったか? とうとう、犯罪を犯してしまったか……?

『写本師がね、確かに本を写すことが仕事の一つだったんだけど、どうもそれじゃあ物足りないだろうって色々と仕事しながらウォルトに聞いてたんだって。まあ、聞くってことは真面目に生産職をこなしてて、そうしたらとうとう、次のツリーが現れたのよ。なんと、スクロール!』

『すくろーる?』

『巻物ね。魔法の巻物を作ることができる職だったのよ!! 材料と道具は必要らしいけど、巻物に魔法を閉じ込めて破ることで発動するらしいわ』

スクロール?

『でもさ、別に魔法なら誰でも魔法使いになればできるじゃん?』

『ふふ、これのすごいところは、込める魔法の威力がそのまま。つまり、INT激弱の私でも、柚子ちゃんの魔法を閉じ込めれば柚子ちゃんレベルの【フロストサークル】を展開できるってことなのよ!』

『おお! それはちょっとすご……い?』

『すごいわよ、詠唱のディレイがあるのが、スクロールを使えば連続使用可能になるんだし、氷が溶けるたびに柚子ちゃんに魔物が寄っていってそれをかばわないといけなかったのが、例えば、ソーダがスクロールを使ったらタンクにヘイトが行くんだから』

『戦闘の幅が広がる?』

『そう! まあ、高レベルスクロールを作るにはそれなりの手間と金がかかるらしいからね。どんなものをスクロールにするのがオススメの使い方かを探る、検証組が張り切ってるわ』

【フロストサークル】は足止めにもなるからなおのこと期待されているらしい。

『後から出てきた生産職にそれなりの意味があるのは当然のことだからな』

何かしらうまみがないと今極めているものを放り出してまで熱心に打ち込むのは難しいだろう。特に、生産職は。よっぽど好きでやるか、うまみがあるからやるか、だ。

まあ、好きでやる組がかなりいるのもわかっているが。

『ダインのところで挑戦してる子がいるってのも聞いたし、蒼炎も始めたから何か欲しいものがあればって言われてるよ』

『売り物を買ってもいいしな』

新しい要素が入ってくるのは楽しいだろうなあ。

『セツナの修復師もそうだったろ? 退魔の書のアップグレードがあった』

『別にそっちは全然構わないけど。アンジェリーナさんに仕事振られるの嬉しいし』

『せっちゃんはそうじゃろな……』

アンジェリーナさんと過ごせる職業だから選んでるんでっ!!

『あ、そうそう。そのコーネリアスさんが、第六都市のことを憂いていたんだけど、基本他領に余計な口出しは無用だから何もできない。支援くらいしかって』

『支援?』

八海山が首を傾げた。

『他領地の民は何も余計なことはできないって。王家くらいしか。たぶん、来訪者が主導して蜂起するのを期待してる』

『ああ……そういうことか』

『つまり……クエストの予感ねっ!』

『ピロリ、第六都市にまで首を突っ込む時間ないだろう……さっきの、堕落した魔物を探したいんじゃないのか?』

『ぐぬぅ』

やることたくさんだ。

『第六都市にはセツナは行けないしな、あっちは誰かに任せよう。というか、今まで潜入して準備してたプレイヤーがいるのに、それを横からかっさらったらマジで恨まれる……』

『後でログをもらえるかな? 掲示板に落としておく』

第六都市は鬼門なので他の人に任せようということになった。

『当面の取り組みは、各地にある『堕落の名を冠する魔物』探しだな。クラン資金も元通りになってきたし、クラン狩りの日に行ってみるのもいいかもな。みんな他のクエストやらなんやらもあるだろうし。正直突っ走りすぎている気もするんだよなあ』

『えっ!? もう資金回復したの!?』

『ちょっと本気出して狩りしたらすぐよ~』

『露店売りで儲けたものもあるからな』

『これで、やっっっと、エルフの衣装買ったりできるわ。高いのよー』

洋服買うのが禁止されていたピロリが大喜び。

『寝る前の一杯、再開なのじゃ~』

ログアウト前の楽しみだそうです。たまに俺も付き合う。

まあみんなそれぞれのゲーム生活があるので合間を見て行こうという話になった。これまでの掲示板の雰囲気で、闇の魔物に関する話はちょくちょく出てきているのはいるが、『堕落した』のあたりはそれほど言及されていないだろうという。

『セツナが運営に負担をかけている気がしてならない』

『俺!?』

『裏ルート行って次々都市をオープンさせている気がね。第四都市であそこまで詰まってたのに、急に一気に開いたじゃないか』

濡れ衣! 濡れ衣だよ!!

『いや、なんというか、第四都市で詰まりすぎた感もあるから、そこまでではないと思うが、加速したのは確かだな』

八海山にも認定されている。

別に俺は先に進まなくて問題ない。アンジェリーナさんがいれば。でもなんか一応メインクエストあるならやっちゃうんだよね~。ゲームは楽しみたい。

『まあのんびりやろうぜ。ピロリは第六都市に突っ込むなら前から入ってるヤツと接触してきっちりやってこいよ?』

『わかってる。気にはなるからどんな風なのか伝手を辿ってみるわ~。でも、『堕落した』が優先だから行くときは教えてね』

そんな話をして今日は解散。特にやることがないならアランブレに行く。まだ夜中だからミュス狩りでもしようかな。こまめに狩っておかないとな。

話によると、下水道が開かれたサーバーは、下水道でのミュス乱獲が進み、ミュス大行進イベントは起きなくなったそうだ。

ミュスに何日もゲームを占拠されて何もできないのは困るもんな。

始まりの平原は、俺がゲームを始めた頃に比べて賑やかだ。空の国への通路が開かれたからだ。

でも俺は静かにミュスをただひたすら始末したいので少し離れた場所で遊んでいる。ぎょろちゃんも一緒にやっていると、半透明の大きなネコ科が跳ねていた。

「獅子座の神様、何やってらっしゃるんですか……」

『我が加護を持つ者よ……ミュス狩りだ』

口にミュスくわえてドヤァってしてる大きな半透明の獅子。

「ミュス狩り、趣味だから? はっ!! もしかして俺が狩る量が足りない!?」

『近頃彼奴らの力が強くなってきている。今まで以上に狩りをせねばならぬのだ。そなたは十分努力しているが、今後はそれ以上の努力が必要であろう』

にゃんと……もっともっと狩れってことか? どうしても初期よりは狩っている数が少ないからなあ。それでも、下水道で結構みんなミュス王目指して狩ってるって聞いていたんだが。

『乙女が彼のものの手に堕ちた……他の都市も気を抜けば彼奴らの巣窟となる』

「乙女……乙女座が加護している第六都市ですかね。あそこ、俺出禁になっちゃって入れないんですよ。他の都市も気をつけろってことですね。了解しました。これって俺たち来訪者で共有していい情報ですか?」

『そなたたちには期待している。土地のしがらみに縛られぬ者たちよ……星々は見守っている』

言いたいことを言った獅子座の神様はすいっと夜の闇に溶けてしまった。

なんだろね。