軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

406.海底通路の先

俺たちはもちろん、水の中ではなくコンクリっぽい通路を歩く。

『下水道とかそんな感じよね、作りは』

『水の深さが普通じゃないけどな。あと、幅』

『大きな魚もなんでもOKでござるね』

やがて場が開ける。

『さてさて、息はどうでござろうか。乙姫生誕祭の時は海の中でも息ができたでござるが』

コンクリート通路からその先が開けて海になっているのだが、ドーム状になにやら透明のガラスのようなもので覆われる巨大空間が現れた。さらにグレーのコンクリ仕様の石がその開けたあたりから白い綺麗な表面がつるつるに加工されたものに変わった。

それがまたドームの中央にある建物に繋がっている。

海面はその白い石の通路から少しだけ下がったところにあった。

『歩いてて怒られない?』

『どうだろうなー。まあ、あそこに向かえば何らかのアクションがあるだろ』

白い石の通路は中央の建物から四方八方へ敷かれていて、海の部分と半々くらいになっている。また、その足下に先ほどの光石の結晶がはめ込まれているし、宙にもぶらさがっていて暗い海の底のはずが、とても明るいのだ。

『お、第一海人発見、かな?」

俺たちが歩いている道を、向こうから二つの影がこちらに向かってやってきた。

距離が詰まってきっと声が届くだろうという距離で、ソーダが代表して口を開く。

開こうとした。

「やれやれ、いやに今日は土臭いと思ったら、なんとも珍しい客人じゃないか」

「やめなさい、キーレ。いらっしゃい、地上の人よ。どうぞこちらへ」

「うるさいな、ラーレ。さあ、さっさと来るんだよ。ここは海の底。肺しか持たぬお前たちが自由にできるのはこの海底都市でだけ。その主である我々の言うことは聞いておくものだ」

「キーレ、そのような言い方はだめでしょう。このドーム内は地上と同じように動けるが、乱暴はお断りしている。客人はまず海の主であるポセイドン王に会っていただく決まりだ」

『ポセイドン! 謎の馬に乗っている人だ』

『乙姫殿の父親……なのでござろうか。まざりまくってるでござるが』

『昔からここの運営そんなのお構いなしよ。海は海! みたいな。豆まきもしたし?』

わりと大人な対応をしているのがラーレで淡いピンク色の髪を肩より少し長いくらいの位置まで伸ばしている。言いたい放題なのがキーレ。水色のショートヘアだ。

二人ともサーフィンをする人たちが着ているような、膝丈くらいまでのパンツに、ラッシュガードのようなものを着ていた。

色はラーレが白にピンクの差し色、キーレが黒に水色の差し色だ。

The NPCって感じだな。色味と性別が違う双子ちゃんだ。

背の高さはほどほど。俺より低いくらいだった。

「あっちからやってきたってことは、あれか、空人の祠からか?」

「空人を知ってるんですね」

「そりゃなあ。海に戻る気はない、地上も飽きた、空を飛びたいんだと、海の魔女に願ったのが初代の空人たちだ」

魔女という新しい単語に顔を見合わせる。

「キーレ、あまり先入観を与えてはだめだ」

「ふんっ……ていうかこいつら土臭さがそこまでじゃないんだよな……。なんか、違う」

キーレがくんくんと俺たちの周りを鼻を鳴らしながらぐるりと巡る。

「あー、厳密には地上の人じゃないからかな?」

ソーダの言葉にラーレとキーレは顔を見合わせた。

「地上の人ではないの? でもあの祠の海の底から来たんでしょう? ヒントを手がかりに」

「空人はもう決して海に入れない。地上の人じゃないならお前たちは何者なんだ?」

今度は俺たちが顔を見合わせる。

「拙者たちは……来訪者でござるね」

「厳密には地元にいた、地上で住んでいた人たちとは違うらしいわ」

半蔵門線とピロリの言葉にラーレが目をまん丸くした。

あ、今まで髪に隠れて気づかなかったが、耳の後ろに何かひれのようなものが見えた。あと、時折見える手には水かきがある。

「そうか、来訪者か。それにしては地上の人によく似ているな」

「どうやら地元民の姿を写し取るような種族らしいですが……よくわかりません」

ソーダの言葉にラーレは考え込み、キーレは面白そうにじろじろ見てきた。

「その件も合わせて王にお話しましょう」

二人に案内されていった先には不思議な建物があった。どれもそこまで背が高くなく、たくさんの柱に、屋根がついている。また、屋根の梁部分から長い紐で吊されたネットがぶら下がっている。その中に海人であろう人々が丸くなって揺られているのだ。

「海人は海に入れば海の生き物に変化する。海水がないところで生活する場合はこのスタイルになることが多い。海を自由に泳ぎたい者が多いから、何か用事があるときにドームの外から繋がる通路を通ってやってくるの。個人の家を持たず、都市内で眠るときはああやって揺られて眠るのよ」

「ハンモックみたいでいいわね」

ピロリが面白そうに覗き込んでいた。

「さあ、こちらへ」

宙から吊されたネットに揺られてくつろぐ海人の間を通って、さらに奥へと招かれる。次は屋根のある通路。そして先にまたドームだ。そのすべてが白い石で作られていた。

奥のドームはこの都市を覆っている透明なものでなく、光石の結晶が所々はめ込まれていた。

とはいえ、その奥のドームも俺たちよりずっと大きい。

ずっと大きく無けりゃダメなはずでした。

「我が王よ、海底都市を訪れた者です。地上の人々ではなく、来訪者だとか」

見上げていると首が疲れてしまいそうな大きな大きなポセイドン王が……寝転がっていた。

なんかこんな感じの仏像をみたことがあるよ。

「よくきた、来訪者たちよ。問題を起こさねば好きなだけいるといい。帰りたくばもと来た道を行くか、キーレに上まで運んでもらうよう頼みなさい。息が続かねばならぬが……気泡草でなんとかなるだろう」

お、気泡草。ここにもあるんだ。

「えっ! 俺ですか!?」

「お前が一番いいだろう。細かいことはラーレに聞きなさい」

ポセイドンのイメージは乱暴者だったが、とても理性的というか、王様として落ち着いている感じがする。

解釈不一致だ!!

不満そうなキーレは、それでも海の王様の言うことに逆らう気はないようで、ぷんすかしながらそれ以上嫌だとは言わなかった。