軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

362.ギブアンドテイクの街

あからさまなヒントに2人で顔を見合わせていると、パーティーチャットで半蔵門線から入電だ。

『スレで鳥の館というものが存在するとの報告があったでござる』

都市ごとに施設を発見したら報告するスレがあるそうで、今まさに聞いたばかりの鳥の館だ。

『なんでも鳥カフェみたいな感じだそうでござる』

『俺もッ! 悩みも吹き飛ぶヒーリングスポットだって教えてもらったところッ!』

『キーワードがぞろ出てきたな。よし、次はそこに行くぞ。正面玄関集合』

俺たちが狩りから帰ってきたのが夜中の1時。サウナでゆっくりして今は2時だ。

『こんな時間に行ってやってるのかしら?』

『それが、鳥の館も24時間営業らしいでござる』

エルフ、元気だな。

『もうちょっとかかるから先に行っててもいいよ~』

『もうちょっとッ! かかるねッ!』

だって俺まだとり天を囓ったところなのだ。

「せっかくだから食べ終わったら行ってみます」

「鳥、結構好きッ!」

強面エルフさんが相好を崩す。

「楽しんで来てくれ。この辺りの魔物は強いからな。森の中にいるハマドリュアスバブーンはかなりの強敵だ。最近数を増やしているから腕っ節に自信があるなら是非狩って行ってくれ」

マントヒヒが強敵の部類なのか。あれが上限に近いのかな。

「俺たち強いッ! もう倒したよッ!」

「何!? すごいな。あれを倒すとはなかなかのもんよ……腕に自信があるんだな」

「仲間と1匹ずつ戦って、やっと安定している感じですけどね」

ちょっと謙遜した。基本固めて殴るだし。1対7だもんね。

案山子はこんなときは全肯定タイプ。自信家というよりも前向きポジティブシンキングだ。

「ほう、それなら森の奥にエルフが住んでいるんだよ。武芸、魔法、なんでもござれ、誰よりも長生きで様々な知識を持つ賢者と呼ばれている人物だ。生半可な強さじゃ話してももらえないって言うが、ハマドリュアスバブーンをやるってえなら望みはあるかもな!」

「賢者ッ!! それは会ってみたいッ!」

「色々ありがとうございます」

「なに、いいってことよ。冒険者の出入りが多くなれば、周囲のモンスターも狩ってくれるだろう? ミラエノランも安心だからな!」

お互い利のある話だってことかな。

ファマルソアンさんの家から去るときに注意事項が1つ増えた。

このミラエノランでは「ギブアンドテイク」がとても大切だと言うことだ。お互い利のある話し合いができれば、次も同じようになる。だが、GIVEだけだと、相手は今後俺たちからGIVEだけを受けようとする。GIVEされたらTAKE、受け取ることも肝心だと。

そして今俺たちはGIVEされている状態に思えた。

「お礼に何か俺たちができることはありますか?」

「そうだな……俺はハマドリュアスバブーンの歯を素材として使うんだ。今、冒険者ギルドに依頼を出している。今後もぜひハマドリュアスバブーンを倒して冒険者ギルドに納品してくれ」

「依頼として受けましょうか?」

「いや、常時依頼になっているはずだ。わりと使われるものだからな、直接依頼の方が俺は割高になるし、他の薬師にも必要な素材だ。冒険者ギルドに納めてくれるだけでいい」

相手が望むならそうしよう。

たぶんこれでギブアンドテイクは上手くいったはずだ。

俺たちは互いに礼を言って分かれる。正面玄関に着くとまだソーダたちがいた。

「遅いぞ~」

「いやー、美味しかったもんね、セツナっちッ!」

「タルタルとり天カレーうどん、美味でした」

満腹だよ。

「えーっ! 食堂にいたのね。ずるい……まあ、いいわよ、行きましょう、鳥の館」

「あ、それなんだけどさその前に門兵さんのところに行かない? ほら、ギブアンドテイクの話。俺たち今テイクだけしてる」

「そっか、セツナっち、あの話を聞いただけのエルフさんにお礼とか言い出すから何かと思ったけどッ、ファマルソアンさんの言ってたギブアンドテイクかッ!」

ファマルソアンさんがああやって気をつけろと念押ししてきたのには意味があると思うんだよね。

「案山子のご飯でもあげにいくか。よいサウナだった、ありがとうって」

ソーダが言うと、案山子がさっと【持ち物】から取り出す。桃のジュースとはちみつクッキーだ。懐かしいな。

「実際サウナで情報を得たもんねッ! サウナ自体も面白かったしッ!」

ということで一度門へ行ってから鳥の館へと言う話に。

俺たちがお礼を持ってきたことに、門兵さんはとても満足そうだった。

先ほどお礼をしなかったのはセーフだったようだ。

『むしろ、さっきはまだサウナが俺たちにとっていいものかわからなかったから、このタイミングで合っていたのかもな』

『うわぁー利に聡いエルフの街は大変そうね。お互い気をつけましょう』

『ちょっとしたお礼用に案山子のお菓子系は【持ち物】に入れておいた方がいいかもしれないな。その賢者についての情報とかももらったんだろう? 先に冒険者ギルドでドロップ精算しておくか。まだ使用目的がわからないものはストックしておこうと思ったが、歯は売ろう』

初めてのエルフの街の冒険者ギルド。もちろん職員さんはエルフだ。

「まあ、ハマドリュアスバブーンの歯ですね! 常時依頼が入っているのでありがたいです。こちらも常時依頼分として処理しますね。ありがとうございます」

「他に常時依頼があるのは何ですか?」

「そうですね、ミュスはもちろんですが……リアノ草ですね。これと、先ほどの歯を使って痛み止めを作るんです。森で採れますので見かけたらぜひ」

鑑定していたときに確かにあった気がする。次見つけたら採取して帰ろう。

『怖いな、ギブアンドテイク。ちょっとスレにもこんな風に言われたがって注意喚起しておくか』

『あのファマルソアンが念押ししてきたと付け加えておいた方がいいぞ』

あのってついてる。変態商人とか言われてたけど、あれは嗜好が悪趣味ってだけだろ。ただそれ以上に警戒されているような気がした。猫じゃらしとかの言い方からだが。

まあ、貴族の商人だもんな。

やっておくべきことをやって、いざ鳥の館へ。

そういえば、神殿にまだ行っていないのだ。早く行かねば。なんとなく。

街に来たら神殿には行くべきかなと。