軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

317.決闘の決着

試合開始の号令が響き渡るがどちらも動かない。

「普通は若い方が胸を借りに行くんだろう?」

トラヴィスが首を傾げている。

「ヴァージルって聖騎士の中では年上の方なんですか?」

「いや、年上というわけではないが、格は上だからなあ。相手は今年成人したばかりと聞いた。16だろう? 10歳より前に神殿に仕えることを誓って、そこから神官として務めるか、聖騎士となるかっていう話だよね。だいたい仕えるときには決めているんだけどさ。そこで聖騎士となるための訓練を経て、成人と同時に入団する。ヴァージルはまだ4年、5年程度だけど十分差はあるから」

だからまずリチャードから攻め始めるのが普通なのだそうだ。

「勝てる相手じゃないんだよ。ヴァージルはすごいからね」

えっへんって、トラヴィスがとても自慢げに胸を張っている。そばで控えているセバスチャンもとても誇らしげだ。

「トラヴィスさんのところって……兄弟仲悪くないですよね」

「えっ……まあそうだね」

「ヴァージルはなんで聖騎士になってたんですか? 貴族の仕組みはよくわかってないんですけど」

別に実家で領主の補佐とかやっててもよかったんじゃね? とも思うのだ。なんなら王族の騎士団とか。

「昔からなんでも真面目にこなす子だったけど、聖属性の魔法を使えるってことになったあたりから、聖騎士への道を目指して……てそうそう、家門から聖騎士が出ることは名誉なんだよ?」

「あーそういうことかあ」

「神殿に仕えるために貴族籍から抜かれると言っても家門との繋がりは大切だからね。三男だし、言い方は悪いけどちょうど良かったんだよ。僕は武芸はからっきしだしね!」

本人はなぜか自慢げ、セバスチャンはそっと目を伏せていた。やめろよ、執事を悲しませるなよ。

そんなことを話していると、さすがに動かないリチャードにヴァージルが軽く剣を振るう。軽々と両手剣で受け止められるくらいのぬるい攻撃だ。俺は無理だけど。受け止められないあれ。

それを何度か繰り返す、リチャードは防戦一方だ。

「スキルは出さないのでござるね」

「聖騎士の戦いに、特に若い者同士の戦いにスキルは出ないよ。出さないが正解かな。それよりもただ肉体の実力で打ち合うってのが多い。弓師は出ないのはそのせいだね。これが後からの熟練同士だと相手が受け止められる程度のスキルを披露することはあるね」

あまりに一方的で、ヴァージルも1度引く。

奉納試合は神に捧げる試合。あまりにみっともないことはできないはずなのだ。何を考えているのだろう、と思ったところでリチャードが構えた。

「なっ!? スキル使用だと!?」

リチャードを中心に風が吹き荒れ、その風を纏ったままヴァージルに向かった。遠くてその技名はわからない。ヴァージルはそれをそのまま受けるつもりなのか剣を構えている。

盾もないのに、スキルを使っている方が明らかに有利だろう。

キャーッと、黄色くない悲鳴が響いた。

が、寸前でヴァージルがその場から消えた。

そしていつの間にか真横に立っている。リチャードは闘技場ギリギリで踏みとどまっていた。そこからは吹っ切れたのかスキルのオンパレードだ。

ただ、それをギリギリでヴァージルが躱すので、兜をしているとはいえ、リチャードが怒りに顔を赤くしているのが想像できた。

避ける姿があまりに余裕がありすぎて、段々可哀想になっていく。

「ねえ、セツナ君。あの子ヴァージルに何したの?」

ちょっとトラヴィスがドン引きしている。

「あー、手袋投げつけられた?」

「はあっ!? ヴァージルに!? 最年少聖騎士団長に!?」

「ですねえ」

「正気か?」

「まあ、正確には俺に投げつけたのに俺が思わず避けちゃったからヴァージルに当たった、なんですけど」

「……事故かぁ」

「なんかすんません」

俺のせい、なんだよなぁ。

「いや、貴族が手袋投げつけるなんて、恐ろしくてできない。それに代理を立てることもできるからヴァージルがその場にいて、セツナ君に当たったとしてもヴァージルがやるって言ったろうなぁ。奉納試合を血で汚すわけにもいかないし、死なないと約束されてるだけでもましなんじゃない? 相手も」

そんな話をしている間にも、リチャードはスキルを使ってヴァージルへ攻撃を仕掛けていた。

「それにほら、そろそろ終わるだろ。ヴァージルはとても強いんだ」

えっへんと、またもや自慢げなトラヴィスとセバスチャン。

それまでスキルを連発していた反動か、鎧越しでもわかる、肩で息をして疲労困憊になっている姿。

とそこでヴァージルが兜を脱ぐ。黄色い悲鳴。

ヴァージルが何か話している。オペラグラスで覗くと口をパクパクとさせていた。やがて兜を被り、そして剣を構える。

こ、怖い。なんか、ヴァージルの周りが揺らいで見える。

これが噂のオーラってやつですか!? このゲームの中にオーラがあるのか知らんけどっ!!

次の瞬間一気に間合いを詰めたヴァージルが剣を振るう。

避ける気力も無かったのか、もろに喰らったリチャードはそのまま吹っ飛んで闘技場の端まで飛んでいった。

「うわぁ……あれは痛い。絶対痛い」

「聖騎士の鎧は大変ものがいいと聞きますし大丈夫でしょう」

ドン引きトラヴィスと、ニコニコ執事。このコンビもなんか変な感じだ。

勝者の宣言がなされ、その後ヴァージルは新人には勝ち、熟練の聖騎士相手に引き下がった。今回無理やり入れてもらったと言っていたし、それが彼なりの線引きだったのだろう。

まあそんなわけで、俺たちの聖地での冒険はこれにて完結。

だと思っていたのだが。

「やめてーっ! 俺のために争わないでーっ! ……ていうべき?」

「言うべきなのじゃ!!」

「こんな時しか使えない台詞ね」

女子2人がウキウキしている。

目の前にはまたまたオコなヴァージルと、例の獣人さん、ウォール家のご子息、ローガさんです。

現場は第7都市の飲み屋。ヴァージルも一緒にご飯をしていたところ、ローガさんにばったりと出会った。

ピロリが気安く話しかけたのが気に入らなかったのだろうか、なんと今回のことが余計なことだったとか、ヒューマンがとかいう話になったのです。

もう終わったことなのに、またこじらせた人たちがいるよぉ……。