軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

303.ミュスを愛でる者

暴君お坊ちゃまは、金色の髪に青い目をしていた。まあ端的に言って天使である。ただちょっとぽよってて転がしたらいい感じに弾みそう。甘やかされたお坊ちゃまだ。

反対に現れた青年は同じ色味を持ちながらすらっとした体躯で、凜とした姿にキャアキャア騒がれることが予測できる。

これで領主の長男とかいったら引く手あまた、すでに婚約者有りのやつだろなぁ。

あ、ちょっとふんわり嫉妬心が出ました。

「ハインリッヒ! なぜ剣を抜いているのだ……というか誰だ、ハインリッヒに剣を持たせたのは」

それなっ! 頭の中でにいちゃんの有能さに拍手する。

ちょっと大きな剣なのだ。お子様には長い。危ないんだってそれを振り回すから。剣の自重に振り回されているんだから。たまに予測不可能な動きをするのだ。

「にいたま……そやつが、そやつがミュスをこ、こ、殺したのじゃあああ!! うわあああああああんん」

お子様ずりぃいい! 俺悪者になるやんっ!

にいたまはこちらをチラリと見てため息を吐き、距離を詰めてきた。

そして頭を下げる。

「弟が理不尽なことを申し訳なかった。剣を抜いた者相手に剣を抜かずにいてくれて感謝する」

「……まあ、ミュスは始末しないとだめって、説教してください」

これからも俺はミュスを狩り続けるからさ。

「ミュスによく似た愛玩動物がいて、それを溺愛していてこうなってしまった。誠に申し訳ない」

貴族版トム君はええっ!? みたいな顔をしているが、こっちがええっ!? ですからね。ちょっと言っておこうかな。

「ミュスは冒険者ギルドでも常時討伐依頼が出てるんですよ」

ハインリッヒ坊ちゃんの顔が、ええっ!? 第二弾になってるけど、ホント、ちゃんと教育しろよ。なんかこの後ろのお付きの使えなさの方にイライラしてきた。

「私はサディアス・プロアフアノマ。プロアフアノマ伯爵家の次男です。この度はご迷惑をおかけしました。すべてこちらの不徳のいたすところです」

「いえ、サディアス様は何も悪くないと思いますよ。環境の問題なんじゃないですか? 誤解も解けたようですし、俺は失礼しますね」

ハハハ、苦しめっ!

教育係が教育しないせいだぞ、阿呆が生まれたのはっ!!

すたこらさっさと逃げ出して、ファマルソアンの店に突撃した。これ以上余計なものに出会わないためにっ!

「聖地で面白いところですか? そうですねえ。商売として面白くはありますが、冒険者の皆様の今の目的は奉納試合前の武闘会でしょう? そこへ向けて出場登録をして、事前に敵になりそうな者を潰すのがやり方ですよ」

はははって、すごく怖いことを言う。

「潰すんですか?」

「そうですよ。出場枠は決まっていますからね」

「普通はどうやって出場権を得るんですか?」

ピロリは当たり屋をやり返してそうなったって言っていた。細かい話は聞かなかったが、本来正当な手順があるはずだ。

「普通は塔へ行きます」

「お祈りをする?」

「ええ、星座神たちを祭っている塔に枠があります。その代表として出るんです。塔ということは、エリア、つまり貴族の息のかかったものが基本は出るのですよ。そこで己の力を見せれば出場権を手に入れることになります」

これは流してあげるべきだろう。情報として。後続組の武闘会に出たいプレイヤーのためにも。

「そのほかにスカウト枠がありますね。強い冒険者をスカウトして出場させます。結局、都市の見栄の張り合いですね。セツナさん、うちから出ませんか? 細剣(レイピア) のスキル、結構覚えたのでしょう?」

「でも俺紙装甲だから、多対1で、全員がこちらに向かってきたら勝てないし。あ、ピロリは出るらしいですよ」

「ピロリさんはかなり強そうですからね、期待大ですね」

ファマルソアンさんから見て強そうだと感じるならそれは期待大だ。

「枠はもうほとんど埋まっているのではないですかね。スカウト枠を狙うか、または引きずり下ろすか。あと1週間ありませんから、どちらにせよ皆さん急がねばなりませんね。明日あたりに飛行船も通るようになるらしいですし、ファンルーアから来訪者の皆さんがどっと押し寄せますね」

大変楽しみですというファマルソアンの表情に、金の匂いを感じました。

「……賭け事、あります?」

「ふふ……奉納試合は不敬が過ぎるとありませんが、武闘会はもちろん、動いておりますよ。ちなみにこれは公式ですから、セツナさんももちろん賭けることができます。選手が出そろってからアランブレの冒険者ギルドで賭けることができますね」

「おおお……ってか、武闘会、見ることできるんですか?」

「ええ。席料は取られますけどね。会場は奉納試合と同じ、塔の内側にある円形闘技場です。出場者が決定し次第、売りに出されます。早い者勝ちですね。まあ、私は確保済みですが」

「いいなーっ!」

「ふふ。もしよかったらお誘いしましょうか?」

「えっ!? マジで……」

「どなたか第7都市の選手として出ていただけるなら」

「おおお……ちょっと聞いてみていいですか?」

「もちろん。都市対抗みたいなところがありますからね。強い選手スカウト権を、実は私も持っております」

セツナ:

注目っ!!

ピロリ:

どうしたのセツナくん?

セツナ:

あ、ピロリさんて、どこの都市代表になりました?

ピロリ:

都市代表??

セツナ:

武闘会、都市対抗みたいですよ。この間の当たり屋どこの都市で出くわしました?

ピロリ:

あー、イェーメールねっ!

セツナ:

ううん、それは完全にイェーメール代表確定……。

ピロリ:

そんなことになってるのね。

セツナ:

それで、武闘会見るのに、席が早い者勝ちで金で席取るみたいなんだけど、ファマルソアンさんがうちのクランから誰か出てくれるなら席を用意してくれるって!

八海山:

それは勝つことを期待されてるんだろうな。そうなると攻撃職だ。

ソーダ:

半蔵門線かセツナか魔術師だろ。

柚子:

別に出てもいいが、前も言った通り半ちゃんみたいなタイプにやられて即死亡じゃぁ~。

案山子:

だねッ!

まあそうよなあ。

「あ、基本同じ都市から出場する者同士は協力しあいますね。私は2人までならスカウト権を持ってますよ。あと、賞金はもちろん副賞もかなり良いものですね。かなりの人数ですから、何回かに分けて試合をしますし……1度詳しく説明しますか?」

お願いします、ということになりました。