軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

302.聖地でもミュスはいる

ギルドは夜中もやっている。それが便利でよいところ。

不夜城聖地ではあるが、夜になると人通りはそれなりに少なくなった。それでも塔は常に開け放たれている。

塔の中の参拝スペースに神官が立っているのだ。

白い服に帯をして大変動きにくそうだ。アレだ、平安時代の狩衣に似ている。下に履いてるふっくらしたズボンは見えてないけど。そのまま上が足首まである感じ……着物か? 中身がよくわからないな。めくってみたい。

「すみません、冒険者ギルドはどこにありますか??」

第3都市の塔で聞いてみる。

「獅子神様のおわす塔のエリア、その外壁近くでございますね」

外壁というのは聖地の1番外側の壁のことらしい。

それは気付かないな。

だいたいどの辺りかを言葉で教えてもらうと地図にポイントが現れた。

「ありがとうございます」

「あなたに星座神の加護がございますよう」

ミュスを見つけては始末しつつ、双子座のエリアを通り、獅子座、アランブレのエリアへ。地図を頼りに無事冒険者ギルドを見つけた。

というか、ミュスが多い。気がついてからすごく多くなった……いや、獅子座の神様とお話してからか?

冒険者ギルド内はわりあい空いている。たぶん冒険者がいないから。聖地だもんなあ。

カウンターにミュスの尻尾を提出するとここでもまた喜ばれる。

「ありがとうございます。またミュスが多くなってきていたので助かります」

「聖地にもミュスが出るんですね」

「アレはどこにでも潜んでいますから。こうやって細かく狩りをしていただけると本当に助かるんです。どうですか? 聖地に定住しませんか?」

「聖地……定住できるんですか!?」

「各エリアに居住区画はございますし、来訪者様でしたら宿屋で来訪者割りを使いつつ暮らしていけると思いますよ」

にっこりと言ってのける受付さんであった。

やっぱりこれ今後も聖地開放されたままだ。

となると、各都市への移動が楽になればここを中心とする人たちも多く出てくるんだろうな。

「ここでの依頼はあるんですか?」

「そうですね、普段はございますが、今はもうすぐ武闘会があるでしょう? 腕試しをする方々はみんなその準備ですから。依頼掲示板は一時的に閉鎖されております」

お祭りが終わるまでは冒険者ギルドは機能していないということだ。

「ただし、ミュスは別です。あれだけは常時依頼ですので常に受け付けておりますよ」

ニコニコと笑顔の受付さんであった。

ミュスの尻尾納品の心配もいらなくなった。なので見つけたら即刻始末するようにしながらローレンガ、そしてウロブルのエリアで参拝も終えた。これで全部の塔を巡ったことになる。まあ順番はアレだけども。

彫像が光り出すとか何か演出はないかと覗いてみるが特に変わった様子はなかった。

うむ。クエスト探しに行こう。

何かもう少し拾いたいなと思う。となれば、やはり第7都市かな。ファマルソアンさんから引っ張れるものはないだろうか?

他にこの聖地に来そうな人物は、イコルム子爵くらいか? あとは……ウロブルのお爺ちゃん、元ヴィランウェバ伯爵、モーゼスさん。

ファンルーアの領主はメインクエストに関わっていて微妙なのだ。例のヴァージルを捕らえた商会がある領地でもあったし、あまり自ら飛び込んで行きたくない土地。

第6エリアに来たところでほらまたミュス!

こんなになるまで奴らを放っておくなんて!!

むむ……これ、もしかして下水道とかある!?

なんだっけ? ミュス大行進? 悪魔の所業がここで起こるかもしれない?

俺がむむむとミュスが現れた道ばたを睨んでいると、突然後ろから声を掛けられた。

「そこの者、往来で剣を抜くとはどういったことか?」

子どもの声だ。なんだ? と思って振り返ると身なりの良い御一行様が少し距離を取ってこちらを見ている。

お貴族様だね。ただなんだろう、小さな子どもとそのお付きって感じ。1番身分が高そうなのがその小さな子ども。

「ミュスが走っていたので始末したところでして」

「何っ!? あの可愛らしい小動物をそなたは殺したのか!! なんと残虐非道な!! これだから野蛮な平民はっ!」

ええーと思って後ろを見たけど、誰も止めないの。止められないの?

じっとお子様通り越して後ろの人たちを見たら目を反らしたよ。

第6都市かぁ。第6都市の、領主様のところの末っ子とかかなぁ……。

「即刻捕らえるのじゃっ!」

のじゃキャラかぶりは必要ないですよ……。

「こら、何をしている、行け!」

動かないお付きの人たちにかんしゃくを起こす様は……可愛いなこいつ。

年の頃は7、8歳かな? そんなに大きくない。小学校1年、2年くらいだよ。いやー坊や、世の中思い通りにならないよね~!

「ミュスを倒す者はミュスに泣くのじゃっ!! 思い知らせてくれるっ!!」

そう言って腰の剣を抜くからさあ大変だ。

「ちょっとー、止めてくださいよ、みなさん!」

お貴族様と事を構える気はないんだよ。相手も完全に自分のところのぼっちゃんが悪いのわかってるからこっち捕らえには来ないけど、領主の末っ子に振り回されてるってやつかなぁ。

俺はもちろん早々にダガーをしまっています。

「我が剣の錆にしてくれようぞっ!」

それは半蔵門線が言いたいセリフだと思います!!

「錆は嫌ですね~! ちょっと、お坊ちゃんどうにかしてくださいよ!」

小僧は話が通じない。後ろの大人に語りかけるしか手がないじゃないか。

「これ、応じたら俺怒られるんでしょ!?」

誰も目を合わせようとしねええ!!

どーする?? 剣を上手く避けるとかできる……か。よわそーだもんなぁこのぼっちゃん。丸々してる。ころんて転がりそう。

泣かせたらまた怒られそう……。

さっきまで人の行き交っていた通りが、いつの間にか人っ子一人、ミュスすら消えました。みんなめんどうごとに巻き込まれるのは嫌なのだろう。

普通さ、お付きって、自分のところのぼっちゃんがやらかす前に止めない?

暴君系なのか……。

「観念するのじゃー!」

のじゃはいらないのじゃーっ!!

もちろん余裕でひょいっと避けられます。

一応被害者ぶるつもりなので、お付きの人たちにそのたびにヘルプするのをやめない。

「う、動くな卑怯者っ!」

「だって痛いの嫌だし!」

紙装甲は伊達じゃないんだぞっ!

まあそんなことをしていたら止めてくださいましたよ。

「ハインリッヒ! 何をしているんだ!!」

「に、にいたま……」

にいたま助けてぇー!!