軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31ウニ丼を作ろう!

わたしは以前料理長から聞いたやり方でオコメを炊く。

最初にたっぷりの奇麗なお水で丁寧にとぎ、オコメと同量のお水を注ぐ。

確か、オコメは「乾物」に属しているはずだから……少し水に浸けて置く必要がある。

わたしは、水を吸わせる間に、ひと欠片の干して乾燥させておいたコンブを放り込んだ。

「あ、あの……ミルティア様? その、真っ黒な羊皮紙のようなものは一体?」

私が調理を始めると、城のメイドさんだろうか?

奇麗な女性がコンブの切れ端を見つめて、不安そうに首を傾げた。

「これは、コンブという海藻を天日干しして乾燥させたものなんです。とても上品でやさしい出汁が出るんですよ」

「へぇ……」

「その間に……」

わたしは『時空保管箱』にしまっておいたウニと、それを割る逆ハサミのような器具、通称『ウニ割り器』とザルを取り出した。

この器具、この辺りではまず見かけない不思議な形をしている。

ハサミは普通、切る時に力を加えると刃が閉じて、挟んでいるものを切断するつくりをしているが、これは逆で、持ち手部分を握り締めて力を加えると、刃に当たる部分が開き、硬く閉じた貝等の口をこじ開けることも出来るような造りになっている。

バードラ様にお願いをしたら新品を作っていただけたのだけど、元々は、やさしかった元料理長がお師匠様から頂いた、という道具をモデルにしている。

しかし、ゴロゴロと大量に取り出したウニがうにょうにょと元気よく棘を動かす姿に、メイドさんがかなり引き攣った顔をしていた。

「きゃあぁぁっ!? う、動いていますわ!? この黒い棘だらけの魔物、動いていますわよ!?」

『時空保管箱』ってすごい……活きた状態でも箱に入る大きさならそのまま『時を止められる』のだから……!

仮に、人間が入れるサイズの物を作れたら、未来へとタイムスリップできるんじゃないだろうか……?

ただ、それでも、この箱……サイズを親指1関節分大きくするだけでも、消費魔力量の桁が段違いだという話だから、人間が入れる大きさなんて、夢のまた夢ではある訳だけれども。

でも、こんなすごいものがゴロゴロしているなんて、流石公爵家だ。

「はい! 大丈夫です、これが新鮮な証拠ですから……えいっ!」

がきょっ!

わたしは、そのウニを一つザルの上に載せると、お尻の部分に突きたて、力を加える。

すると、ぱっかりとウニが二つに割れた。

「ひぃっ!! ふ、二つに割れてもまだ動いていますわっ!?」

「そうなんです、中身を全てほじくり出してもしばらくは動いていますよ」

わたしの言葉に軽く絶句するメイドさん。

多分、『王太子であるアルス様にそんな物を食べさせて、万が一のことが有ったら、どうしてくれる!?』と考えているのだろう。

「金貨」が変わらないのに「銀貨」の図案だけが変わるのは不吉の象徴だもの……そう考えられても仕方は無い。

わたしは元気よく、うにょうにょと動いているウニの中身をスプーンで優しくほじくり出す。

ワタや砂利などの食べられないモノをゆっくりと洗い流し、金色に輝く身を取り出した。

「試しに、お一つ、いかがです?」

「ッ!?」

わたしは、にっこりと微笑んで、取り出したばかりのぷるぷるのウニの身を彼女に勧めてみた。

流石に初めて調理する様を目にすると不安を覚えるのだろう。

毒は無い事を証明するために、ちゅるん、と取り出したウニの身を自分の口に入れた。

ふわり、と鼻孔をくすぐるのは爽やかな海の香り。

ワタを洗い流す為の水に塩を混ぜたから、わずかな塩味が、甘くクリーミーなウニの味を引き立てている。

ほんのわずかに残る歯ごたえは新鮮な証拠。

ああ、やっぱり、この食べ方が一番『海の幸は甘い』という事をダイレクトに味わえる。

本当に良いお味だ。思わず頬がほころんでしまう。

これを召しあがったら、きっとマリクル様も、あの少し驚いた時の可愛いお顔を浮かべて喜んでくださるに違いない。

それを想像するだけでも、3割増しで美味しく感じる。

アルス王子も気に入ってくれると嬉しいなぁ……

「とても、美味しいです」

その様子を見て、しばらく思い悩んでいたようだったが、意を決して、彼女はその身を口に放り込む。

「!!! あ、甘い!? それにとろけて……ッ!?」

ぱぁっ!! と瞳を輝かせるメイドさん。

「これを、このまま炊きたてのオコメに載せて、そこにある 東洋豆の発酵ダレ(オショーユ) をかけて食べるのが最高なんですよ」

「な、なるほど……!」

そう。わたしは、数多ある食材の中からオコメと 東洋豆の発酵ダレ(オショーユ) を見つけた瞬間、この料理を作ってみたいと直感したのだ。

自分が小さい頃、元料理長が作ってくれた至福の一品。

『ウニ・ドン』だ。

となると、まずは食べられる身の部分を集めなければ。

がきょっ! ぱきょっ! ぽきょっ!

慣れた手つきでどんどんウニを割り、その黄金色の部位だけを集めてゆく。

砕いたウニの殻は王宮の迷惑になっては困るので、時空保管箱に戻しつつ、作業することしばし。

ようやく、3人分の皿になみなみと溢れんばかりのウニの身を取り出すことができた。

オコメももうすぐ無事炊きあがる。

折角 東洋豆の発酵ダレ(オショーユ) があるのだから、汁物はこれで味を整えよう。

わたしは、砂抜きをした後にしまい込んでいた大粒のハマグリを取り出すと、それをスープにすべく、鍋に水とハマグリを放り込んだ。