作品タイトル不明
第317話選ばれしものの遊戯
「……生徒会長。少し下がっていてほしいでござるよ」
「あ、ああ……わかった」
花臣は一応注意を促し、一歩前に進み出る。
怪しい刀を持った鬼は、周囲の鬼をまた一体、横なぎに両断してこちらを見ていた。
感じる圧迫感は、この階層のそれではない。
だが向けられている殺気は、テイムモンスターのものではなかった。
「……リポップしたモンスター? まぁ何でもいいでござるな」
目の前にいるオーガは、間違いなく今まで出会った個体のどいつよりも歯ごたえがある。それが重要だった。
視線が合い、お互いから目を離せなくなってから数秒、文字通り歩み寄る。
ゆっくりのようで案外速く。
マスクの下の瞼は閉じずに。
そして剣の間合いに入った瞬間、スイッチが切り替わるように加速する。
意識も、そして―――体もだ。
回数にして数十回、刀を合わせ、弾かれた。
「!」
「!」
かつてない……いや、刀というくくりならば、最下層での戦いを彷彿とさせる手ごたえに、花臣は口角を吊り上げた。
「へぇ……いいでござるな」
痺れる手のひらを握りこみ、震えを黙らせて次に備える。
そしてモンスターのくせに、敵対するオーガも笑い剣を構えていた。
その構えは、オーガ特有の雑な感じが鳴りを潜めていて、確かなスキルを感じさせるものだった。
「……」
野生のモンスターが成長した?
いや、考察に耽るべき時ではない。情報が少なすぎる。
ひょうたんの蓋を開き、刀を構えた花臣は防御を意識して構えを取った。
「まぁ……すべて丸裸にしてから、考察はゆっくりさせてもらうでござる」
そのためにもまずは考察の材料の収集から。
テイムモンスターは激減してしまったが、今ここに極上の謎が転がっているのだから見逃せない。
花臣は少し前まで戦いを楽しむという感覚は理解から遠かったが、今ならそれが理解できた。
高い技量と、余裕。その二つが揃ってようやく生まれる感情は、戦いの高揚も合わさって、脳がしびれる快楽があった。
ああ……なんという選ばれし者の遊戯だろうと花臣は思う。
だけど、その領域に片足を入れかけているというのは素直に喜ばしい。
花臣のひょうたんからバキバキと黒い枝が伸び、満開の桜を咲かせれば準備は完了だ。
―――じゃあ、二回戦はもう少しギアを上げようか?