軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第309話建築はやってみるととても楽しい

「ふわぁ……」

僕は部室の中に流れるあまりにもマッタリした空気に、あくびを一つ零した。

部室でコントローラーを握った僕らは、今日はサンドボックス系のゲームで協力プレイにいそしんでいた。

「おや、お疲れでござるな?」

「ゴメンゴメン。いや、ちょっと気が緩みがちかなぁ」

「まぁ無理もないでござる。何だかいつも忙しそうでござるからなぁワタヌキ氏は」

そんな風に言って苦笑する桃山君だが、そんなに忙しそうに見えているとは何だか意外な視点だった。

「……そう見える?」

「まぁ。ここ最近は相当でござるなぁ」

「確かに……」

改めてしみじみ言われるとその通りな気もしてくる。

そして画面の向こうでせっせと整地しながら砂を掘っていたレイナさんが追い打ちをかけてきた。

「そうですね! 人類1000年分くらい一気に踏破するようなスピード感を感じますね!」

「まぁねぇ……でもそういう二人だって、何かやってるじゃない? 順調そうにも見えるけど?」

しかしそれは僕だけの話ではないんじゃないだろうか?

桃山君もレイナさんも最近は自分の担当階層に掛かり切りになっていて、天使の手まで借りているのは僕とて把握している。

だからこそのそんな質問に桃山君はその通りだとうむと頷く。

「拙者の方はもうほとんど目標達成でござるな。例の外に出られない島は順調に大物の飼育場になっているでござる。見張りの塔も建てて、ついでに風呂場も完備でござるな」

「おおーすごいじゃない!」

レジャーまでできそうな話に感心して唸ると、桃山君は照れ臭そうに笑っていた。

「ふふっ……テイムモンスターの管理は割と急務でござったからなぁ」

「そうなんだよねぇ……」

カフェのある階層にモンスターの飼育場所は存在するのだが、何でもかんでも突っ込めるわけではない。

強力過ぎたり、巨大過ぎたり、はたまた凶暴過ぎたりすれば、分けておく必要がある。

大抵のモンスターはそんな時、発生した階層に放し飼いにすることが多いのだが、テイムしていればレベルが上がってしまったり、希少なスキルを獲得してしまったりと、放置したくない場合もあった。

そういう時、一括で管理できるように整えたのが、桃山君管理の島だった。

桃山君は浮けない海の島に、順調に重量級モンスターの居住区を作り上げているみたいである。

おそらくは大猿達と一緒に、オーガやドラゴン。100層で大量ゲットした好戦的なモンスターなんかを逃がさず、かつ元気に住まわせる場所を作ってくれている。

目論見通りにいっていれば、モンスター達が小競り合いしつつもにぎやかに暮らす、混沌とした島に仕上がっているはずだった。

「それは中々すさまじいモンスター島になってそうだなぁ」

「まぁ。やることないモンスターだけでござるから、そんなに数はいないでござるけどね。基本遠征中でござる。暇な時にでも遊びにきてくだされ、中々楽しいでござるよ?」

ゲーム内でドンドコ石壁を積み上げている桃山君に、僕はうんと頷いて応えた。

「へー……この間のメドウーサも、天使の島よりもこっちの方がいい仕事しそうだし、近いうちにお邪魔しようかな。レイナさんも順調?」

そして今度は砂を大量に積み上げて水辺の水を抜いているレイナさんに話を振ってみた。

するとレイナさんは予想外にしょんぼりと言った。

「ワタシは……ちょっと苦戦中です」

「おや意外」

「そうですか?」

「うん。さらっとやっちゃってそうなイメージだった。どんな感じ?」

レイナさんでも躓くことがあるんだなぁと、当たり前のことで納得しながら、その内容に興味を引かれると、彼女はむむむと唸って言った。

「そうですね……ワタシは悪魔のいる階層すべてに手を入れてますから。ただ、広すぎてどこから手を付けたものやらって感じです。階層の把握だけでも一苦労なんですよ」

これは中々贅沢な方向の悩みである。

だがダンジョンというやつは深くいくほどにどんどん広くなる傾向があった。

確かに広すぎて大変そうというのは分かりやすい問題だった。

「あー……まぁ結構深いしね。適当な階層だけとかにしておいたら?」

だが無理して手広くやる必要はないんじゃないだろうかという僕の言葉にレイナさんは頷いた。

「結局そうなっちゃうんですよねー。でも何がどこにいるのかは把握しておきたいので探索は続けつつ、めぼしい奴を集めて絶賛勢力拡大中!ってところです! こうご期待ですね!」

手こずっているという割には、レイナさんの言葉には相当な自信が垣間見える。

うまくいってはいないが、成果としては彼女が胸を張るだけのものがすでにできていると思った方がよさそうだ。

「みんな頑張ってるなぁ……」

僕もなんか一段落した気になっちゃってる暇はないのかもしれない。

もっと気合を入れなきゃなって感じだった。

先日のメドゥーサ探索もだが、ダンジョンの中にはまだまだ未知の要素が山盛りなのだ。

これから少しずつ探索の手を広げていかなきゃならない現状、そうマッタリとしてもいられない。

とはいえ今はこの瞬間を楽しむべきだろう。

「よし完成!」

僕らは3人で、せっせと作った家をバックに記念撮影。

やったーと盛り上がっているアバター達を眺めてホッコリしていると、その時、部室の扉が勢いよく開け放たれて、僕らはまったりとした顔のまま振り返った。

「ちょっと話を聞かせてもらおうか……」

「やぁ」

入って来たのは二人である。

現実というやつはいつも殺伐としていて慌ただしいね。

もうゲームの中に住めないだろうか?

扉を開けたのは八坂生徒会長と、後ろからついて来ていた如月副会長で、少なくとも八坂生徒会長の方は、ご機嫌斜めのように見えた。