軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第289話そんな装備で大丈夫か?

「あっ。桃山さんじゃないですか。どうしました?」

おおっと。東雲さん、普通に話しかけちゃった。

東雲さんのあまりにも普通のテンションに、マスクの奥の光が若干怯んだがしかし桃山君は負けなかった。

「……本当にそれだけでいいんでござるか?」

「ど、どういうことだい? 桃山氏?」

なるほど? 押し通すんだね?

ならばと乗っかった僕は訊ねる。

すると桃山君は重々しく頷いて、僕を指差した。

「武器の新調だけで本当にいいのかって話でござる。前から思っていたんでござるよ……聖騎士なんて超カッコイイジョブを選んでおいて、デザインに騎士モチーフを入れていないなんてそんなことあんまりだと。あえて言うでござる……そんな装備で大丈夫か?っと。何のための空間魔法? 何のための瞬間早着替えでござるか?」

「案外厳しいファッションチェックっ……!」

「……そこの所詳しくお願いします」

そしたら状況をようやく察し、そして桃山君の言葉に感化された東雲さんが喰いついた。

「この銃を使った時思ったんでござるよ。手数が多いことは決して悪いことではないと。ワタヌキ氏の使っている装備は主に鎖帷子とジャージ。戦いぶりを見れば文句も言いづらいでござるが、武器に比べてあまりにも……あんまりにも! 貧弱すぎるんでござるよ」

「……っ! 今更踏み込むのかそこに……」

「当然でござる。どう思うでござる? 東雲氏?」

そして東雲さんに振ると彼女は鋭く目を細め、断言した。

「……それは確かに嘆かわしい。正直ありえないです」

「東雲さん?」

あまりにもその通りすぎて、ちょっと申し訳ないくらいではあるんだけれどもね?

そう皆からダメなの全肯定だと、数々の修羅場を潜り抜けてきた愛用装備だけにちょっとショックですよ? ワタヌキ君も?

だけど僕の装備が有用かどうかはともかく、すでに二人は作る気満々らしい。

「大丈夫! 聖騎士の鎧なんておいしいの私、大好きです! 当然お父さんも大好きですのですごいの作ってみせますよ! ええそれはもう! それと……早着替えって何です?」

「ワタヌキ氏の得意技でござるよー。アイテムボックスから好きな装備をいつでも、そして瞬時に付け替え可能なんでござる。ああでも、東雲氏はご存じでござろう? あのアームの着脱と原理は同じでござるよ」

「……確かに! アレなら何でもいつでもいけますね! なんです? 装備つけ放題じゃないですか!」

「ちなみに拙者、小物には少々自信があるんでござる。……ここは一つ協力して装備のラインナップを揃えてみるのはどうでござる?」

「いいですね! 最高じゃないですか! じゃあ、あのアームもパワーアップしましょうよ! ここの設備を使えば……ムフフフ、面白いことになるはずですよ?」

おお、話が盛り上がり始めた。

自分で火をつけたが、確かにこいつは面白いことになって来た。

しかし僕は一旦ちょっと冷静になって、二人に待ったをかけた。

「いや、さすがに大盤振る舞い過ぎない? ちょっと聞く限りでもめっちゃ大変そうなんだけど?」

ただ武器一つ作るだけのつもりが、装備一式どころかそれ以上になりそうな空気は想定外。

流石にちょっと気が引けたわけだが、桃山君はそれに何か問題でも? と僕の心配を鼻で笑い飛ばした。

「何を言ってるんでござる? 我が愛刀と愛銃、拙者しかともらい受け、大いに気に入った。借りが返しきれなくて困っていたところでござる」

「私もです! 探索用の鎧の一つや二つ! 用意できなくちゃ東雲鉄工の名が廃ります!」

「! マジで言ってる? いいの!?」

念を押しても、東雲さんはどんと胸を叩いて力強く宣言した。

「もちろんです! ここだけの話……ダンジョン用銃開発の切っ掛けって相当ブレイクスルーだったんですよ。……昔、うちの工場が探索者用の銃を開発しようとしてたの知っているでしょ? 機材にも相当の投資をしていたんですけど……一旦ただのゴミになっちゃいまして。 かなりピンチだったんですよね。いわばワタヌキ先生は我が工場の救世主! 父からもワタヌキさんに協力できることがあったら、出来る限り協力するように言われてますから! ガンガン頼ってください! そしてあわよくば! 新たな技術プリーズお願いします!」

「おおっ……それはなんというか、裏表がなくて好感が持てるよ?」

「でしょう? よく言われます! まぁ任せてください! 必ず最高の装備を作って見せますよ! あ、でも趣旨を考えると、素材の方は全部頼りきりになりそうなんですが……」

「ああ。それなら気にしなくていいよ。材料ならいくらでも用意できるから好きに使っちゃって」

「えぇ? でも、さっきのハンマーに匹敵する素材ですよ? 自分で言っててとんでもないですが……」

東雲さんは実際言葉に出して恐れ慄き始めたが、もう少し脳みそを麻痺させて頑張って欲しい。

そして実際その心配は価値を気にさえしなければ、無用なのだ。

「ああ! 問題ないね!」

東雲さんもいろいろと下心はあったみたいだけど、それはある意味当然の事。

ならば存分に利用してもらおう。

ひとまず先の遠征で手に入れたものの中には素材として優秀な鉱石は山ほどある。

それに―――アイツがいれば、オリハルコンでだって装備一式くらいなら余裕だろう。

それこそ山……というか、ピラミッドくらいはあるから見てもらえば話は早そうだった。