作品タイトル不明
第281話過度なパワーアップは欲を過剰に引き出す
「シヤァアアアアアア!」
ガッキンガッキンと角を打ち合わせる巨大クワガタ型モンスターが生徒会に襲い掛かっていた。
しかし生徒会員の生徒が剣を構え、一振りすると光の刃が容易く黒光りする外骨格を切り裂いた。
「うおおおお! 戦える! 戦えるぞ! 俺は最強だ!」
「ハハハハハハ! なんだこれ! モンスターが脆い! 脆いぞ!」
「私は……最強の力を手に入れたわ! 私の事は……そう! 大魔導士と呼びなさい!」
うーん……ものすごく大興奮みたいだ。
他のパーティでも、快進撃が止まらない。
爆炎の魔法で爆散する甲殻類を眺めながら、僕はしみじみと真実について考えていた。
レイナさんは生徒会にオタク趣味の人がいないみたいなこと言ってたけど、やっぱ隠れが多かったんじゃないかなぁ?
度を越えたパワーは、暴力性だけでなく隠していた本性まで暴き出してしまうみたいだ、僕も気を付けよ。
「やはり抑圧してはいけませんね……先輩。反動ってあるんだなって」
「そうだよ? 何事もほどよく発散して行かないと」
「そうですねぇ」
いやしかしこうして見ていると、憑依は作戦として大成功だったといえる。
考えてみればなんでこれを思いつかなかったんだと思いついた時は膝を打ったが、同じようなことができるモンスターは多そうだった。
精霊、悪魔、天使、それにゴースト系辺りは試してみる価値はありそうだ。
そして人間の人海戦術はこちらにも得るものがある。
探索が進むとさすが人が多いだけあって、色んなモンスターの正確な報告が届いていた。
「! すみません! エルフは見つかりませんけど……フェアリーっぽいモンスターを発見しました!」
そんな中、知らせが入る。
瞬間、一部の生徒がどよめいた。
そして浦島先輩も予想外に動揺していた。
「なんてこと……! フェアリーとは……見落としていたわね」
「何をです?」
「超かわいいでしょフェアリー?」
「まぁ……はい」
「じゃあ。テイムしなきゃ」
随分考える工程が短い気がしたが、同じように考える人間は案外多いようだ。
思わずというか、我慢できずに一人僕に直接訊ねてくるくらいには、フェアリーは起爆剤として効果抜群だった。
「あ、あの! モンスターを仲間に出来ると言う話を聞いたのですが……フェアリーも可能なんでしょうか?」
恐々と僕に訊ねる女生徒を仮にAさんとしておこう。
そしてその後ろにはBさんCさんも、期待の籠った視線を僕に向けている。
ついでに浦島先輩もフェイスの向こうから同じような視線を向けて来ているのが分かった。
ならば期待に応えねばなるまい。
僕はフームと唸り。アイテムボックスから金を取り出すと形を変えて金貨に錬成し直し、彼女達に差し出した。
「これをフェアリーに投げてみて」
「金色の……メダルですか?」
「金貨だよ、正真正銘」
「えぇ! いいんですか!」
ぎょっとしている生徒A。
だがフェアリー系をテイムするなら、この金属を使うことに意味があった。
「これがないと始まらない。フェアリーは金貨が好きだ。仲間にするなら必須だよ」
「……なんかすごく現金なモンスターですね」
「そういうこともある。注意しないといけないのは、ダンジョンで採掘した金を使ってコインにすることだ。まぁ騙されたと思って試してみるといいよ」
Aさんはやっぱり複雑そうな顔をしていたが、捕獲アイテムさながらに金貨を投げつけると、フェアリーは華麗にキャッチ。
テイムに成功したみたいである。
金貨を大切そうに抱きしめたフェアリーは敵意なく飛んできてAさんの周囲を飛び回ると、感謝を伝える様にコインを掲げて、その肩に乗った。
「えぇ! やった! 嘘みたい!」
感動に打ち震えるAさん。
とたんザワリと驚きのざわめきが聞こえ、そして夢見る瞳が僕に集中した。
「すみません! 実はピーターパンに憧れていまして!」
「妖精で回復できるか検証したいんですが!」
「フェアリーよりさっきのクワガタ! クワガタをテイムしたいんです!」
「……一人一枚までなら試してみる? 後クワガタは専用に調合したゼリーを進呈しよう」
「ありがとうございます!」
「感謝します!」
「ほ、他にも気になるモンスターがいたら方法を教えてもらえるんでしょうか!」
皆グイグイ来始めた辺り、心の壁がなくなって来たのか、なりふり構わなくなってきたのか。
なんにしても、こいつはようやく今回の相談室成功への道が見えてきた感じである。
テンションが壊れて来た生徒会の人達としばし僕らはワイワイとモンスター狩りにいそしんでいると、とうとうその連絡は届いた。
「……エルフ発見! ……おそらくアレがそうだと思います」
「「!!」」
本日最大のどよめきが起こる。
天使の力を借りたとしても、それは十分に早いペースだった。