軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第28話お目汚しですが

僕はサブカル同好会のノルマ達成には、もっと時間がかかると踏んでいた。

だから今日はジャングルフロアで見つけたでっかいダンジョンワニを仕留めて、唐揚げ風にしてタッパーに詰めて来たんだが……切り出す前にそれどころではなくなってしまった。

最初の作業が終わったと知らせを受けたのは、たったの3日後―――そう今日だったわけだ。

「終わったよでござる」

「まぁ私に掛かればこんなものよね」

「えぇ? 早くないですか?」

ずいぶん頑張ってくれたみたいだが、しかし先日のすさまじい動きを思い出すと僕はそりゃそうかという気分になった。

「いやー……錬金釜があるとあんなに同じモンスターばかり倒せるんでござるな。案外いけるでござるよ」

「1階だと弱いしね。数だけこなすのも……メンタルにきついけど」

「すごいなぁ」

やはり二人とも僕よりはるかに戦闘経験のあるレベルの高い探索者だったということだろう。

同じくらいだと思っていたのに、なんだかずいぶん差があったみたいである。

僕はなるほどなと納得しながら、ひとまずせっかく持って来たのでお昼ご飯の準備を始めた。

沢山の白飯と、大量のアリゲーター唐揚げを披露すると無事歓声が上がった。

「おお! 唐揚げでござるか!? 好物でござるよ!」

まぁワニさんの唐揚げですけどね。

「いいねぇ。がっつりパワー飯じゃない。私、血筋的にボディビルとか家族がやってたから結構食べるんだー」

でもモンスターは食べたことないでしょう? ちなみに魔力もふんだんに含まれているから、精神力も回復するんですよ?

先輩も僧侶系のスキルツリーだから、そのうちやり方を教えてもいいかもしれない。

ダンジョン飯は発展途上。進化にはもっと人口が必要だった。

一欠焼いてみた時は泥臭くて大丈夫かと思ったが、攻略君が教えてくれた臭みとりのモンスタープラントハーブが効いたのか、凄くさっぱりしていて臭くもない。

ハーブ自体の風味もとてもスパイシーで唐揚げにしたのは大正解だったかもしれない。

お弁当を平らげつつ、僕は今後の予定の話を始めた。

「えーこんな僕が、仕切るのもアレなんですけれども……じゃあさっそくパワーレベリングと行きましょう」

「なんでちょっと悲しそうなんでござる?」

「さぁ? でもパワーレベリングかー。下級生にそんなこと出来るのかなぁ?」

浦島先輩が訝しむのは尤もなんですけれども、ここはご協力いただきたい。

転移宝玉はもう一個入手済みですので。

そしてもう一つ僕は提案した。

「……じゃあ、今日はあまり人のいない階層に行きますから……せっかくだから例のコスプレしてみません?」

「いいでござるな! せっかく用意したんだから着てみるでござる!」

「人のいないフロアってどこ連れてく気だよー。まぁやっちゃう? デビューしちゃう?」

お腹いっぱいになり、ワニパワーで活力を取り戻した二人とともに弁当を片付ける。

そして和気藹々と僕らはコスプレ衣装を着込みながら、準備を始めた。

「「……」」

「えーでは今から鉄巨人に挑もうと思います」

「「待て待て待て!!」」

しかしさっきまで楽しそうだったのに、必死の形相で止められてしまった。

「どうしました?」

「どうしましたじゃないでござる! 鉄巨人!? ここ10階でござるか!?」

「そうだよ」

「いやいや。無理でしょ! 鉄巨人って守護者でしょ? 殺されるって!」

「いえ、そこは攻略法があるので。僕が最初にやって見せますね」

「「攻略法?」」

「そうです。では行きます」

「いや! ワタヌキ殿!」

「ちょっとぉ!」

まぁなんやかんや言ったところで、最初に見せた方が早い。

もはや慣れ親しんだ殺気が部屋の中から叩きつけられたら、スタートの合図である。

『今回は三人だ。万一に備えてヘイトをこちらに向けるといい。戦士のスキルにあるはずだ』

「了解」

ウォークライ!

叫びに力を乗せて鉄巨人に叩きつけると、注意が完全に僕に固定された。

急激にレベルが上がった僕は鉄巨人が追いつける程度の絶妙な速さでダッシュ。

壁のギリギリを丁寧に走る。

そして目標の出っ張りまでやってくると、すぐさま飛んでダッシュする。

鉄巨人が出っ張りに躓いて、僕は転んだのを見もせずに方向転換して跳んだ。

巨体の上を軽く飛び越える跳躍力はレベルアップの賜物である。

そしてがら空きの背中に光る文字に狙いをつけて、ハンマーを振りかぶった。

せっかくなので聖騎士の聖なるオーラをハンマーに乗せれば、今の自分の最大火力の出来上がりである。

「よいしょ!」

インパクトの瞬間、ズガンと聞いたこともない音がした。

おお、今回は寸分も手元が狂わず文字に直撃だ。

落下の加速も合わせた一撃はいい手ごたえで、勢いあまって鉄巨人のボディをビスケットのように叩き割ってしまった。

「ふぅ……よし、終了」

『お見事』

カンカラと鉄巨人の破片が飛び散る中をジャンプで脱出。

僕はやり慣れた作業を披露して、少し気恥ずかしいものを感じながらサブカル同好会の面々の元へ駆け戻った。

「えー。こんな感じです。外周を壁ギリギリで走るのがコツで、出っ張りを見逃さないでください。こけたら鉄巨人の背中に弱点の文字みたいなマークがあるので、頭文字を削りとったら終了です。お目汚し失礼しました」

とりあえずペコリと頭を下げる。

そして顔を上げたのだが、ポカンと口を開けたままの桃山君と浦島先輩が口々に言った。

「……こんなに強かったんでござるなワタヌキ殿」

「……ヤバー。ほんとに人間?」

「ええ? そんな反応なんですか?」

生まれてこの方強いなんて言われたことなかったが、何かが二人にそう思わせてしまったようだ。

ただ二人も試してみれば、このお手軽さが分かるはず。

まぁワニパワーもあるし頑張って欲しい。

僕はつかの間の優越感にちょっとだけ浸ってみることにした。