軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第273話まぁよく聞く話

「あんたの手には余るわ。今すぐ消えなさい……」

「いや、待ってくれよ!? 俺達から誘ったのにいくらなんでもそれはない!」

高圧的な天音さんを草薙君はすかさず止めに入るけど、ギロリと鋭い視線は研いだばかりのナイフのようだった。

「……俺達じゃない。私は誘っていない。あんた達も言ってよ。こいつを安易に連れまわすなんて死ぬだけだって」

「い、いや連れまわすわけじゃ……」

「ダンジョンの中で声をかけるってそういう事でしょ? それとも何? こいつに合わせて低層でハイキングでもする気? 時間の無駄よ」

不機嫌を絵に描いたような天音さんは、まだいつかのトラブルが尾を引いているんだろうか?

そう―――あれは、初めてまともに話した時の話だ。

彼女はレイナさんのファンで僕をレイナさんから引き離そうとした。

しかし盛大に拒否られて、涙目になった顔が頭を過る。

「やっぱアレかなぁ……」

「……なによ? こんなレイナさんにたまたま取り入っただけの金魚のフンが死のうが生きようがどうだっていいけど、目の前で死なれるのは気分が悪いわ。そんなのは私に見えない隅でやって」

おおっと、やっぱりこれはまだ尾を引いているな、言葉がキツイぜ。

だけど要約すると、レベルの足りない奴をパーティに参加させるなんて何事だ! 危ないだろう!という至極真っ当な指摘だった。

話を振られた月読さんとハバキリ君はすごく微妙な表情を浮かべて、まず月読さんが声を上げた。

「そんなに……邪険にしなくてもいいんじゃないかしら? 彼の知識は価値があるわ。とても精霊について詳しいし」

「精霊について詳しい? なにそれ?」

「私は彼に精霊を手に入れる方法を教わったのよ」

真実を交えて援護する月読さんだったが、その倍くらいの勢いで反論は帰って来た。

「はぁ? あの怪しい店のこと言ってんの? そりゃあ精霊の力は認めるわよ? でもそれを勧めて来るって意味不明すぎ。500円でたまたま買ったんじゃない? いつも1階をうろうろしてるじゃん」

「うっ……それは……でもそれなら精霊を持ってるだけで一緒に行く資格はあるんじゃない?」

「全部逃げられたんでしょどうせ? じゃなかったら精霊手に入れているのに、やる気なさ過ぎ。信じらんない」

「……」

月読さん? そこで黙らないで? いろいろ教えてあげたじゃない?

ただ跳ねのけるほど僕自身について知らないのが言葉のキレを鈍らせているのは明らかだった。

そして第二の助っ人は、ユグドラシルモドキ以来の美形メガネ男子。

ハバキリ君その人だった。

だが彼のフォローはとても漠然としていた。

「いや、彼は……すごい探索者だと思うぞ?」

「どこが? 何かやってるなんて話、トイレ作ってるくらいしか聞いてないんですけど? 私達がダンジョンアタックしている間、まともに顔を合わせたことある? じゃあそういうことじゃない」

「いや……それはわからないが……おそらく……」

「おそらくなに?」

「……」

ああ……ハバキリ君まで完全にフリーズしてしまった。

左右にせわしなく揺れる不安定な目が彼の迷いを如実に語っている。

何かを説明しようとして、信じてもらえる気がしなかったんだろう。

その気持ちはよくわかる。

僕だって本当のペースと攻略階層を馬鹿正直に話したら、間違いなく虚偽の申請を疑われて出入り禁止にされそうだもの。

だからここ最近はわざわざ自己申告もしていない。

そしてコミケのダンジョン探索経験など、ある意味それ以上に常識に当てはめるのは難しい。

だからこそハバキリ君は黙るしかないわけだ。

ちょっとはっちゃけ過ぎたかぁ……。

ある意味で自業自得とはこのことだなと僕も反省した。

「そう! こいつは圧倒的に実力不足よ! ……話があるなら上で、お茶でも飲みながら私のいないところでやって!」

「い、いやぁ、それじゃあ実力見れないしなぁ」

「見る必要なんてないって言ってるの。だいたい少々のお得情報目当てに無茶すんじゃないわよ。自分の道は自分で切り開くのが探索者ってものでしょう?」

「それはそうなんだけど……」

天音さんめちゃくちゃ男前だなぁ。

そして最後の砦であるはずの草薙君すらタジタジで押され気味である。

月読さんもハバキリ君も頑張ってくれたのだから、僕も少しは悪あがきしてみるのもアリかもしれない? そんなことを気の迷いでも思った僕は、完全に場の雰囲気に呑まれていた。

「あのー。別にパーティに加入するわけでもないけど……僕もそれなりに戦えますよ?」

「……」

ああ、分かっていたのに、つい口を出すと本日最高の冷ややかさで視線をいただく。

背筋が寒くなる天音さんの視線は、体に悪そうなくらい殺気が含まれていた。

そして天音さんは腕を組み、目を細めて僕を無遠慮に眺めると指を突き付けてこう言ったのだ。

「……そこまで言うなら。じゃあ、実力、見せてみなさいよ?」

「実力を……」

どうしよう?

なんか試されるみたいな流れだけれどもパーティに参加したいわけでもないし、困ったことにそれに付き合う理由が、知り合いとの付き合いくらいのうっすい理由しかないってことだった。