軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第250話切り札

「次行きます!」

ダメージを蓄積するサービスタイムだというならこの機に攻める。

僕は2体の上位天使を呼び出して、そのスキルをまとめて使用した。

「ソロネ! ケルビム! 頼む!」

機械仕掛けの天使と、ファンシーなクマはミスマッチだが、どっちもでかくて見ごたえがあった。

重力を操り敵の重さを何十倍にも上げ、時間を操り龍宮院先生を加速させれば、龍宮院先生の拳が音を置き去りにし始めた。

だがついに火の玉ぬいぐるみが動き出す。

渾身の龍宮院先生の拳がガツンと何かに阻まれ動きを止め、押し負けた瞬間を僕が視認することはできなかった。

「……!」

一瞬で砲弾みたいに弾き飛ばされて、柱の一つに着地していた龍宮院先生を、僕は一旦魔法で状態異常を解除して、落ち着かせることに成功した。

「狂化解除完了です! 正気ですか! 先生!」

「……き、記憶が飛んでる! 私なにした!?」

「先生はただ変態をぶん殴ってただけです! 今のところ最大ダメージは先生ですよ!」

「覚えてない……だけど妙にスカッとしてる!」

「そりゃ良かったです!」

そりゃあんなに全身赤くなっていたら状態異常もさぞ効いていたことだろう。

そして、現在。火の玉人形の周囲の空間がグンニャリと歪み、第二形態へと移行した。

闇を押し固め、鎧に剣、そして盾を形成すると巨大な暗黒の騎士のようになった火の玉ぬいぐるみは僕に間違いなく視線を向ける。

「おや? なんで僕かな? ああそうか、今更ヘイト管理が利いて来たか」

その姿は聖騎士の真似事か? どうせやるならしっかり真似て欲しい。

明確な敵意を向けられると体が重くなったような気がしたが、僕を脅威と感じているのならタンク冥利に尽きるというものだった。

「……じゃあ。全力で引きつけるから、畳みかけてくださいね」

そう仲間に告げて、変身が終わる前に僕は飛び出していた。

背後のアームは一旦外して、トールハンマーを構える。

「更に!」

頭に天使の輪が出ると、炎の色が黄色く変化した。

「うおおお!」

「!」

トールハンマーは振り下ろすだけで雷鳴と雷光が轟いて、火の玉ぬいぐるみ改め暗黒騎士を直撃する。

その攻撃はあらゆる障壁を貫通して、雷の触れた部分を焼く。

暗黒騎士の瞳の奥に動揺が走ったと感じたのは気のせいじゃないだろう。

「……っ!」

「効果は抜群だろ? 巻きで行くぞ!」

さてここからは僕も単純な殴り合いだ。

こっちの土俵で悪いけど、付き合ってもらわないと始まらない。

「ぬおおおお!」

とはいえハンマー使いの僕に出来ることなど限られていた。

僕は渾身の一撃を振り回す。

本来、動きの遅い僕が人間離れした動きで現れたり消えたりしながら移動するそいつを捕らえるのは難しい。

しかしロード化を実行した今の僕なら、動きに追従することも可能だった。

ロード化は使役している天使系モンスターの数に応じて、パラメーターの上昇率が上がる。

そして今のパワーアップ具合は正直凄すぎて超化の感覚すら霞んだ。

発動した瞬間、かなりの重量があるトールハンマーもまるで重さを感じなかったくらいだ。

それならと、アーム用のラウンドシールドのみ転移で呼び出して片手に装備し、僕は暗黒騎士に襲い掛かった。

でかい盾で身を守りつつ、ただ大きなハンマーで力の限りぶん殴る。

小回りは向こうが上だから剣をかわすたびに心臓が凍り付きそうになるが、すべてパラメーターでねじ伏せた。

そしてついに渾身の大ぶりが命中すると、暗黒騎士はくの字に折れ曲がってぶっ飛ばされた。

飛ばした先には仲間が待っていて、態勢が整った順に最大火力を叩き込んでいた。

「波あぁぁぁぁぁぁ!」

龍宮院先生渾身の”波”が特大の光の弾となって飛んで来るが、暗黒騎士は正面から突っ切っていくと、光の中を直接突っ切って先生の目の前で飛び出し、グオンと嫌な音のする腕の一撃で、横薙ぎに払う。

「なにぃぃ!」

今度は吹き飛ばされる龍宮院先生と入れ替わりに、桃山君の黒い桜が乱れ飛んだ。

「クロハナサクヤァァ!」

地面に落ちた影から、とんでもない大きさの樹木のような影が暗黒騎士を押し潰そうと飛び出すが、暗黒騎士の背後から、突然姿を現した人型の影がその腕を釘のように変形させて樹木に叩き込み、中から粉砕した。

「……アレは!」

確実に参考にされている!

そして打ち合うたびに、自分達のダメージが大きい。

アイツが攻撃するたびに迸る波動は、不可視の衝撃となって派手に僕らを吹き飛ばした。

そして向こうはたいしてダメージが蓄積しているように思えないのだから、精神的苦痛がひどい。

一向に動きが悪くならないそいつに、僕はいよいよ息切れして不平不満も漏れて来た。

なぁ攻略君? これって計算あってるか?

『当然……もう少しだ。ロード化の残り時間が30秒を切ったら、勝負だね』

だが、あまりにも短い時間で勝負を決めようとしていると知った僕は、眉を顰めた。

いや、そりゃ無理ってものだろう? 全然堪えた雰囲気がないのに!

そもそも疲労があるのかすら怪しい敵に対して、こちらは全員満身創痍。

正直攻略君の言葉がなかったら疾うの昔に撤退を考えたくらいだ。

だが攻略君は僕が切るべき切り札を告げた。

『……短くないと君が持たない。まだ使っていない手があるだろう?』

なにかあったかな?

『超化だよ。ロード化に重ねて使えばどうなるか―――わかるだろう?』

……。

僕はぐぅっと喉を鳴らした。

アレを重ね掛けか……。

返ってきた答えはもちろん肯定だ。

僕は攻略君がやらせようとしている事を完全に理解して、表情が引きつるのを自覚せざるを得なかった