作品タイトル不明
第210話あの島がちょうどいい
ダンジョン内部には空を意識した階層が存在した。
そして鳥ばかりが住んでいるその階層は、底のない空間に浮遊する浮島のみで構成されていた。
「えーあの浮島。見ての通り空を浮遊します。ちょうどいいのでそのまま持っていこうかなと」
「えぇ?」
心底から困惑する声、同感である。
でもいつものことだが、やってみないと始まらないんだ。
僕はうーんと指で四角を作り、形のいい浮島を探しているとピタリとイメージに近い島を発見。
これはいいんじゃないかと僕は何度か頷いて、その島を持っていくことに決めた。
「いや持っていこうかって……一体どうやって?」
「流石に無理じゃない?」
「大きすぎるんじゃないでござるか?」
見物に来たギャラリーは口々に僕が目を付けた浮島を見てそう言った。
面白そうだから見に行くとみんなやって来てしまったわけだが、そう言えば桃山君以外はヴァルキリーの時に使った空間魔法を知らないんだったか。
いや、桃山君ですら懐疑的な反応なんだから、そりゃあなんじゃそらだろう。
でも家は収納できたが、小型とはいえ島はどうなのか?
不安ではあったが……体感、感覚的な話なのだが―――おそらくできる。
目の前にある物を手に掴めるかどうか? と考えるような目測でしかないけれど、一度実行して物差しが出来上がったのか、妙にはっきりそう断言できるのが我ながら面白かった。
では改めて―――領域を展開し、島を捕捉。一気に空間ごと圧縮して収納。
ブツンと妙な音を立てて一瞬にして消えた浮島は、今この手の中にある。
一仕事終えて振り返るとギャラリーのあんぐりとした顔が並んでいた。
「はー……私初めて魔法で、やばいって思ったかも」
「これは……いくら何でもでたらめすぎないか?」
「いえいえ。もうみんなもこれくらいの事をできる魔力があることは自覚してくださいよ」
しかし僕なんて魔力の量的には所詮戦士タイプのビルドでしかない。
浦島先輩や、レイナさんには当然ながら敵わず、戦闘で中々減らないMPをこういうテクニカルな方向に使っているだけだということを忘れてもらっては困る。
つまり、今僕を見て驚いた一人一人が、これに勝るとも劣らない規模の魔法が使えるわけだ。
そして早いところ感覚でそれを理解してもらわねばならなかった。
「そ、そう言われてみると……そうかも?」
「魔力の感覚って今一掴みづらいとは思う」
「でも……属性のせいもあるんでござろう?」
「いや。まぁできる事はね? でも例えば空間魔法と似たようなことなら、いくつか闇の属性でもできるはずだから、試してみたら?」
「拙者もできるんでござるか!?」
「できるよー……たぶん」
「どっちなんでござる!」
「流石に感覚的な話だから、やってみてくれとしか……」
それはもう。是非一度試してもらいたい。
やはりまだ急速なレベルアップにみんな頭の方がついていっていないのは無理もない話だった。
だがそもそも僕は魔法が得意じゃなかったわけだし、こうして感覚で扱えるのはレベルが上がって魔力そのものを自覚しやすくなったことと、空間魔法がイメージにはまりやすかったこともあるんだろう。
なんでイメージにはまったかって? そりゃあ、そういう系統の能力が大変大好きだからですね。
瞬間移動とか憧れるからだとも。
魔法を把握するのはすごく大事で、攻略君曰く魔法の理解は=力とのこと。
そしてこれも攻略君曰く、本来であればダンジョンの中にいるモンスターなんかよりも、一から地道に物事の構造を解析してきた僕らはより強い魔法を使うことができるらしい。
だからみんなには是非ともいつか魔法の理を越えたすさまじい魔法を見せてもらいたいものだった。