軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第175話売店強化計画

「何してんだ? 店長?」

「んー。新しい試みの一つ?」

僕は自作のポスターを真っすぐ売店の壁に張り付けることに成功して、よしと頷いた。

そしてポスターの内容を店番中で暇していた松林君はやる気なさそうに読み上げていた。

「ファイアーボールヘッドのお悩み相談? ダンジョンでのお悩み、解決します。ってナニコレ? ファイアーボールヘッドって、なんかエキスポの怪人じゃなかったっけ?」

「そうそう。それそれ、僕なんだけれどもね」

「へー店長怪人だったんだ……は? マジかよ?」

「マジだよ。まぁこれは秘密にしてもいいし、秘密にしなくてもいいよ」

「どっちだよ」

言ったところでイコールで結び付けるには一儀式いるだろうからとそんな風に思っていたのだが、この松林君ときたら最初こそ驚きはしたものの、あっさり受け入れていた。

「うーん、今の所店長が店長だってことも面白いから秘密にしてるけど、実際どんなつもりなん?」

そして実に面白い理由で僕の秘密の一つは守られていたようだが、そこは好きにしてもらって構わなかった。

「……うーん。別に言いふらすようなことでもないから言ってない感じ? 目立つの嫌いだし」

「目立つの嫌いなんかい。じゃあこれからも秘密にしておこうっと。そっちの方がカッコイイから」

「……確かに。僕も秘密にしておこうかな?」

「うんうん。そうしよう。カッコイイのは大事だろう? でも……このポスターについて聞かれたら、連絡すればいい感じ?」

火の玉頭がプリントアウトされたちょっと恥ずかしいポスターを改めて眺めて僕は一瞬だけ考えてしまったが、おおむねそれで大丈夫だった。

「そうね。そしたらコスプレしていくよ」

「コスプレするのか! そういう趣味があったとは……意外だな。モテたりする?」

「モテはしない。でも案外楽しいよ」

「モテないかー……そっかー。いや、オレも先輩方に合わせて天使に寄せた方がいいかなって思ってたんだけど?」

「それはやめておこう。せっかくお客が来るようになったのにまた客が遠のくって」

「えぇ? むしろ寄ってこないか? いや、来るだろう?」

「えー? 来ないんじゃないかなぁ」

僕は松林君の前向きな行動力はある意味尊敬すらしていたが、そのポジティブはたぶん失敗するやつである。

これ以上深堀すると大変なことになりそうなので、僕は素早く話題を変えた。

「そんなことより売店だけどさ。また近いうちに改装することになるかもしれないよ」

「ええ!? マジで!? なんで?」

僕の正体をバラした時より確実に驚いている松林君だが、本格的に生徒会に協力するならあわせて売店も組み込まない手はないと僕は思っていた。

「なんかちゃんと建築しなきゃいけなくなるかもしれなくてね。生徒会の要望なんだ」

「えぇ? どういうことなのー? 生徒会と? どんなコネだよてんちょー」

「……なんと言うか、一緒にご飯を食べた仲?」

「めっちゃ社交的じゃーん」

「そうかなぁ」

社交的とか始めて言われた。ちょっとうれしい自分にビックリだ。

だが確かに、最近仲良くなるなんて想像もしていなかった人達と交流が増えてきたのは間違いない。

人生何があるかわからないもんだと噛みしめてしまうけれど、大体攻略君のおかげだった。

「で、まぁまず1階辺りを弄るらしいんだけど。売店の事も説明してちょっと増設してもいいかなって」

これは僕の勝手な計画だが、せっかく手を入れるのなら浦島先輩辺りには負けられまい。

低い階層は僕のテリトリーだ。そこはそうそう譲れるものじゃなかった。

ただ改装と聞いて松林君は純粋に喜んでいた。

「あ、そうなの? ならお風呂が欲しいです!」

「……了解。天使用のちっこいのでいい?」

「クラスメイトの扱い悪くない? 大は小をかねない?」

「……冗談だよ。代案は銭湯付き、ソフトクリーム食べ放題の漫画喫茶なんだけれども」

僕がしなくても浦島先輩辺りが実行しそうだけど、こっちには店員さんがもういることだし都合がいいと思う。

反応はどうかと思っていたら、さすがの松林君でも混乱していた。

「どんなミラクル進化? そんなんできたら、オレ寮引き払ってここに完全に住むぞ?」

「流石に1階じゃ怒られそうだから、深度深くなるけどだいじょぶそう?」

「改装って言ったのに……何階くらい?」

「おそらく5階より下かなぁ」

「ふかぁ……めちゃめちゃ隠す気じゃん! さては後ろめたさがあるな?」

「……いらないなら作らないけど?」

「欲しいです! 漫画のラインナップに口出ししてもいいですか!」

うむ。素直でよろしい。もちろん店員をやってくれるならその辺り全面的におまかせしたい。

「漫画どころかシアタールームの映画を選ぶ権利を上げるよ」

「……いや流石に無理だろそれ? ダンジョンの中じゃ電化製品は動かせないんだぜ?」

そんなの常識だろ?って空気で満面の笑みを作った松林君を見て、僕は一瞬脳がフリーズした。

「あれ? 僕、言ってなかったっけ」

最近ではすっかり当たり前になってしまっていたけど、そう言えば非常識だった。

これはちゃんと説明しておかないとまずい。

するとちょうどいいタイミングでピロリンと音が鳴った。

僕は自分のスマホを確認すると、そこには東雲さんからの連絡が届いていて、注文の品が完成したとそんな連絡に僕は遠い目をして呟いた。

「……ついに来たか」

「……何で普通にスマホ弄ってんの?」

「ああ、ゴメン。今売店の近くなら普通に使えるんだよ」

「はぁ!? ちょっと待って……マジだ! マジかぁ……」

やっぱり本気で長時間ここにいる松林君は自分のスマホも持ってきていたようで、慌てて取りに行くと、電源を入れて目を見開いていた。

「……気がついてなかったんだ」

「あったり前じゃん! 手に取ろうって発想がなかったよ! えぇ~? やだすごーい……音楽聞き放題じゃん。なにそれー」

「ポジティブだなぁ」

「気がつかなかったのはそれはもうしょうがないじゃん? いやぁ最高だわ!」

松林君がポジティブで本当によかった。

ポジティブは大事だし、楽しくするために思いついたことを試すのはいつだって忘れちゃいけない大原則である。

一先ず桃山君強化計画は発動するとして、天使達ももっと増やして労働力を確保しようかな?

浦島先輩を見習って僕ももっと活動範囲を増やすのも悪くはない。

何やらいろいろと事が動き出しそうな気配にちょっと僕もワクワクしていた。