作品タイトル不明
第170話我に秘策あり
僕の手の中には黄金の指輪が一つ。
こいつは特別な指輪で、おそらく今現在その持ち主もほとんどいない希少な物ということもできるだろう。
それを手渡す? 同級生の女の子に? そこにどんな意味深いものがあるのか僕も理解して頭を抱えた。
「正直ヘルプです……どうしたもんですかね?」
「どうもこうも、危ないなって言いだしたのはワタヌキ君でしょう? ならちゃっちゃと渡してくるしかないんじゃないかなぁ」
「……それはそうなんですが、あのー……渡すのをお願いしたりなんていうのは?」
一縷の望みを込めて懇願すると、大層楽しそうな浦島先輩の返答が返って来た。
「えぇー? やだ♪ 女の子へのプレゼントを人伝に渡そうなんてふてぇ奴だなぁ。だいたいその指輪、宝石なんて問題にならないくらいの高級品でしょう? それをプレゼントなんて……結構な重さだなぁー大丈夫?」
「なんで更に渡しづらくなるような情報を足すんですか!」
「……またとない機会に興奮して?」
「ひどいんですけどぉ!? 僕はただ、アフターケアがしたいだけなのに……」
僕は思わずガクリと項垂れるが、浦島先輩のテンションは上がる一方だった。
「えぇ? それって罪悪感からの罪滅ぼしってことー? ワタヌキ君サイテー」
「ぐぐぐっ……ここぞとばかりに楽しんでいますね」
「そんなことないってー。まぁ冗談はさておき……付いては行くからさっと渡してきなさいよ」
「……そうっすね」
しかしどうやって?
また議論は振り出しである。
ここまでやってしまって放置なんてありえないのは、その通りなんだ。
正面から渡しに行く?
いやいや、そもそも「ジョブを変えて?」 なんて申し出はそう簡単に受け入れられることではない。
このままじゃ危ないですなんて説得しようにも根拠が薄い。
なんとか確実に、納得のいく形でジョブチェンジをしてもらうにはどうすればいいか?
しかしピンチを強く自覚したその瞬間、僕の脳細胞は最大の活性を見せた。
ダンジョンで自然にアイテムを手に入れる方法は限られるが……まるでない訳ではないじゃないか。
「!……よし。これならいけるかもしれない!」
「お? 告白の台詞、何か思いついた?」
「告白じゃないです! でもダメかもしれませんが……当たって砕けてみますよ」
「よし! その意気だワタヌキ後輩!」
浦島先輩はまず間違いなく、甘いラブコメの可能性を期待しているのはわかるんだけど、おそらくその望みは叶うまい。
僕はひとまず、周りにたかる精霊をごっそりとオーラで捕獲した。
「……手を貸すからお前らも協力しろ」
自分でもビックリするくらいの低い必死の呼びかけに、精霊達は応えた。