軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第162話様子がおかしい

「あ、ありがとうございます! 家宝にします!」

いやいや……やめてね? なんならコップ置きとかカップラーメンの重しとかにしてほしいから。

えぇ~? 何その反応超怖い。

あの見下すような視線しか知らない会計先輩が、今はずいぶん人が丸ごと変わってしまったように見えた。

いや、見失っていたことは悪かったけれどもね? 指示を聞かなかった方にも全然責任がないわけではないと思うとか一言言ってやりたかったというのに、小言の一つも出てこない。

彼の名誉のために泣き止むのを待ち、そしてなぜか人生で初めてのサインまで書いてしまった、僕、ファイアーボールヘッドである。

この先輩本当によくわからない人だ。

しかしファンだと言われて悪い気もしない。

すっかり今までの事は水に流した僕は、さっそく彼にも特別なごちそうを作る手助けをしてもらうことにした。

今倒した、このマンモス型モンスター。こいつはすぐにでも材料を剥がねばならなかった。

おあつらえむきに横たわるマンモスっぽいモンスターは、きっと素晴らしい体験を僕らに提供してくれるはずだった。

僕はこれだけの大物だ、食材を切り出すだけでも大仕事だと判断する。

だから僕は愛用の解体用ナイフを取り出して、予備を彼に渡した。

「わ、私ですか?」

そう君。

「手伝ってもらっても?」

そう言ってみると会計先輩の表情は明るく変わった。

「はい! 喜んで!」

「……」

飛び上がりそうなほど嬉しそうにナイフを受け取った会計先輩はやっぱり様子がおかしい。

いったいなんでこんなことにとそう思う一方で、僕の認識そのものがすごく気になる。

ただもしバレてなかったとしたら、僕は正体をバラすのがなんだか怖くなってきた。

呼び出したアームでマンモスと救助者を運んで戻ると、拠点には連絡が無事行き渡っていたようだった。

浦島先輩とも無事合流できたようで、僕は部の仲間とようやく顔を合わせることができた。

「おお! おかえり……ぬお! ずいぶんでっかいの獲って来たね!」

「ええ。ちょうどいいところにいたんですよ。下処理はしてきましたんで後は食べるだけです」

「マンモス……! どう見てもマンモスだよ!」

「そうですねマンモスです」

そして如月副会長が興奮して僕の服を引っ張っておられる。

ざわざわと場が盛り上がっているのも感じられて、雰囲気は良さそう。

だが期待が高まるにつれ僕の不安はだんだんと形のあるものになって来た。

マンモス料理なんてやったことがないですしね。

こういう時は攻略情報の一つでも攻略君に訊ねてみるつもりだったが、勢いよく手をピンと掲げた如月副会長からずいぶん熱の籠ったリクエストをいただいてしまった。

「ステーキ一択!」

「そ、そうですか? じゃあ……そうしてみます?」

「ぜひ!」

お、おう。わかった頑張ってみる。

如月副会長の気合は十分だったが、実は僕だって気持ちは同じだった。

そりゃあステーキ一択だろう。これ重要なことだ。

「あのぉ……私もいいでしょうか?」

そして会計さんもおずおずと声を上げるが、やらかしたからってそんな顔しないでも大丈夫ですよ。

ちゃんとあなたの分も用意しますとも。