軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第112話驚きの完全封殺

「金細工の台座に、このでっかい球はアイテム……それも転移系ですね。触ると守護者のいる空間に転移するタイプみたいです」

今回の守護者階層のギミックは、なかなか手が込んでいた。

台座の上に置いてある水晶玉のような宝玉に手を置くと、守護者のいる空間に直行できる仕組みは、空間系統の高等魔法とのことだ。

ただしそれは一般的な感覚で言うと、絶望的なギミックという事になるらしい。

龍宮院先生は、冷汗を浮かべてそれを前に喉を鳴らしていた。

「……つまり逃げ場がないってことか。一応確認しておくけど……撤退する気はないんだね?」

「ないです。では行きます」

「ううう……なんでこんなところに来ちゃったんだろう」

挑む前から弱音が飛び出したが、挑む相手と自分の実力を天秤にかけて方針を決めたのなら、圧倒的に先生が正しい。

中の敵にはまず勝てない。

絶体絶命。

それが現状の戦力分析の、正確な結果だろうと思う。

しかも先生視点で言えばまるでデータの無い謎の存在が待ち受けていて、勝たなければ逃げ出すことも出来ないかもしれないと。

うん。バカだ。ここに入ろうという奴はバカである。

そんなバカになっても目的地を目指そうという僕は、おそらく思考停止の大馬鹿野郎に違いなかった。

転移装置のアイテムに触れると僕らの身体はすぐさま守護者にいる場所に転移する。

なんでこんなまどろっこしい真似をしなければならないのか? その理由は転移後すぐに理解した。

「ごぼ!」

いきなり水中に放り出され、僕はもがいた。

流石に動揺したが、すぐに攻略君の声が聞こえて来た。

『落ち着け。呼吸は出来るはずだ。ここは閉ざされた空間でダンジョンともまたルールが違う。海を丸ごと閉じ込めるためにさっきの転移アイテムは存在するんだ。そして―――見ろ、あれが今回のおすすめ物件だね』

「……今その話する?」

攻略君の余りにも緊張感のない話題に僕は逆に冷静になった。

そして同じく水中に放り出されていた龍宮院先生を回収して、定位置に戻すと、僕も攻略君に習って穏やかに話しかけた。

「大丈夫ですか? 落ち着いて深呼吸深呼吸」

「水中なのにかい!?」

「そうそう。その調子ですよ。息が出来るでしょう? 落ち着いてください」

龍宮院先生が暴れなくなり、そこでようやくおすすめ物件とやらを確認すると、建物は水中にドカンと聳え立ち、驚くほどの存在感を放っていた。

「……城じゃーん」

「何だこれ?……」

それは僕にも分かんない。

金銀宝石で飾り付けられた絢爛豪華な中華風の城が、今回のボス部屋らしい。

そして城を守る様に立ちふさがるのは―――背丈が4メートル近い龍と人が混ざったような姿のモンスターだった。

端的に表現するなら龍人とでもいうべきか? 彼は立派な朱色の鎧姿で薙刀のような大刀を持っていて、こちらをすごい形相で睨んでいる。

それなりのレベルがある僕ですらすさまじい圧迫感を感じていたが、レベル30ほどの龍宮院先生は、身体の震えが止まらないようだった。

「あ、あれは……ヤバすぎる……絶対に勝てない」

「……大丈夫ですよ。備えは万全です」

「万全? そうだ旅行に行こう! みたいなノリで来ておいて?」

「道中苦労して色々集めたでしょう? 効率のいい攻略に無駄は少ない物ですよ」

そもそも相手がいかに強かろうと、こっちは戦闘を始める間も与えるつもりはない。

僕はさっそく用意してきた切り札を切って行く。

切り札その一。

僕は荷物から真っ赤な宝玉を取り出すと、龍人に向かって投げつけた。

これは別にぶつけなくてもいい。だってそのアイテムは竜の生命力が欲しくてたまらないのだから近くに寄っただけでも効力を発揮する。

水中を漂い、龍人の側に流れ着いたとたん、宝玉はゾッとするような輝きを発して、龍人に襲い掛かった。

「……ギャオオオオオ!」

「な、なんだ!」

水中に響く苦し気な咆哮で、龍宮院先生は慌てて自分の耳を押さえた。

宝玉から出る赤黒い光は触手のように龍人の体に巻きついて行く。

実体のないその光に大慌てで龍人は長刀を振り回して抵抗していたが、僕は光が触れた瞬間、龍人の纏うとんでもない圧力が消え失せていくのを感じていた。

「うっ……アレは。力を吸収している?」

混沌すぎる魔力の流れに気持ち悪さを感じているのか、龍宮院先生は青い顔で呟くが、正直僕もちょっと吐きそうだった。

「……そうですよ。ドラゴンの墓場で手に入れた、竜玉の力です。ドラゴン属性の生命力を吸収する特別なアイテムだと思ってください。あれに捕まったら、まともに動けるようなもんじゃない……はずなんですけど。結構動けてますね」

「ど、どうするんだい?」

「……もちろん。ここからが本番です。じゃあ行きますよ!」

十分に力を失ったのを確認して、僕は一息に龍人に襲い掛かった。

両腕をサブアームで捕まえ、僕自身もオーラでその動きを全力で抑えつける。

ついでに掴んだ竜玉をゴリゴリ体に押し付けてやれば、その効果はテキメンである。

「……っ!」

それでも恐ろしい力でもがいていたが、何とか抑えきれないほどじゃない。

普通ならここで更に一手ひねり出すのに一工夫するところだったが、今回はもう一人動ける人手があるので造作もないことだった。

「……今です! 先生!」

「えぇ! ここなの!?」

先生は死にそうな顔で驚いていたが、すぐさま意図を組んで動いてくれるのはさすがだった。

僕のリュックサックを踏み台にして、先生は加速。

さすが有名な探索者だけあって、でっかい金属の塊を持っていても水泳の選手のように鮮やかに龍人に飛びつくと、その腕にガッチリと渡した特別製の腕輪を装着して見せた。

「はい! お疲れさまでした! 攻略完了です!」

僕は分かりやすく終了を宣言する。

龍人につけられた腕輪からは禍々しい力が解き放たれて、装飾としてダイヤモンドで作られた瞳が魔力を帯びた輝きを宿していた。

宝石はとても強固な魔力的器だ。溜めておけば魔力の貯蔵庫となり、封印と合わせると魔力を吸収して奪い取るタンクにだってなる。

今回はテイムの為だけに作られた腕輪に組み込んで調整し、確実にテイムしていく。

元より厄介なアイテムで力を放出されていた龍人は気がつけば目から完全に光を無くして抵抗を止めていた。

「よし! これで守護者テイム完了です! お疲れさまでした!」

ただ実行役だった龍宮院先生は、未だに半信半疑のようで、ものすごく恐々と龍人の顔を覗き込んでいた。

「これでだいじょうぶなのかい? 本当に?」

「はい。もう大丈夫ですよ」

「突然襲い掛かってきたり……しない?」

「しないです」

腕輪を付けた体勢のまま、ピクリとも動かない龍人をつついている龍宮院先生は心配そうだ。

だがそう言えば僕としては事後になってしまって恐縮だが、一つだけ伝えておくことはあった。

「ああ、でも先生が命令すれば動きますよ。今こいつ、先生のテイムモンスターなので」

「………………え?」

さて現状テイムモンスター込みなら最強戦力が誕生した瞬間だった。