軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

It‘s show Time!

やがて、通りに出ていた全員が広場に戻ってくる。

「少しは落ち着いたか……?」

「か、顔の筋肉が引き攣りそうですぅ……!」

巨大竜車に戻る際に、ソフォイルがテレサロにそう問いかけ、震える声で答えているのが聞こえた。

「お手を。ダリステア様」

「ええ」

逆に落ち着いていて疲れた様子も見えていないダリステアが乗り移る際に、ツルギスが手を差し出すのが見えた。

「ちょ、そろそろ下ろしなさいよ……!?」

「ダメだよ。ニーナは虚弱なんだから」

ステップを上がったズミアーノは上機嫌でニニーナを横抱きにしており、女性達の黄色い歓声を浴びている。

「エイデス、貴方はアレやらないでね」

「何故だ?」

ウェルミィは、下の甲板に移動したお義姉様が赤い顔をしているので、レオが何かしたわね、と睨みつけつつ、エイデスを牽制した。

「恥ずかしいからに決まってるじゃない……!」

「最初の夜会でもやったがな?」

「状況が全然違うわよ!」

表面上はあくまでも穏やかな微笑みを崩さないように注意しつつ、横目で手を取ってエスコートしてくれるエイデスに噛み付く。

「残念だな」

必死になっているウェルミィを内心面白がっているのだろう、瞳の奥に楽しそうな色が浮かんでいる。

冷酷非情とか呼ばれてるくせに、こういうところはまるで悪ガキのようだ。

そうして、全員が竜車の最下層テラスに集まると、エイデスがふと空を見上げた。

「どうしたの?」

「いや。そろそろ始まるのでな」

何が? と問いかける前に。

ーーー空気を揺るがす竜の咆哮が、突如辺りに響き渡った。

竜車を引く地竜のもの、だけではない。

空中からも聴こえて、民衆までもが静まり返る。

「!?」

「大丈夫だ」

と、ふわりとエイデスの正装である片マントの掛かった腕で包み込まれ、耳元で囁かれる。

「今日のパレードのメイン、サプライズの時間だ」

そうして、すぐに視界が開けると……王城の方角から、五色の光の軌跡を引く何かが、綺麗な三角形の編隊を組みながら飛来するのが目に映る。

同時に、一斉にファンファーレが響き渡り、軽快な音楽が鳴り始める段に至って、竜の咆哮が『ショーの合図』だと気づいた民衆が一気に盛り上がる。

「飛竜……!!」

編隊の先頭にいる白い飛竜が、旋回を始めると、隊列を崩して飛竜が各々に舞い始めた。

翼の先から放たれる光の軌跡が空中に残って、さらに枝葉を伸ばしていくのを見るに、あの光はおそらく魔術によるものなのだろう。

そうして、徐々に描き出されていったのは……。

「ライオネル王家の紋章……!?」

「ご名答だ」

金色の獅子を模した紋章が、音楽に合わせて色鮮やかに青い空に輝くと、周りの飛竜達が旋回して紋章を囲い、全く同じタイミングで中央に向けて渦を描くように切り込んでいく。

そして、紋章の中央で五騎が一斉にすれ違うと、紋章が揺らいで光の波が広がり、ドミノ倒しのように塗り替えられていく。

現れたのは、教会の紋章だった。

「わぁ……!」

テレサロが明るい声を上げる。

おそらく、女性陣は全員知らなかったのだろう、全員が目を丸くして空を見上げていた。

続いて二騎の飛竜が、二つの円を描くように動き、また紋章が切り替わる。

今度は、オルブラン侯爵家の紋章と、カルクフェルト伯爵家の紋章。

「凄い……! なんて繊細な連携魔術……!」

「流石だなぁ。王都の飛竜隊、練度で負けてそうだね」

ニニーナとズミアーノが、ショーの内容よりも技術に感心していた。

次の二騎がそれぞれの紋章の真ん中を横切ると、次はアバッカム公爵家とデルトラーデ侯爵家の紋章。

「如何ですか? ダリステア様」

「ええ……信じられないくらい綺麗だわ……」

ダリステアは、最初の竜の咆哮で驚いてツルギスにしがみついた姿勢のまま、肩を抱かれて空を見上げている。

そして、音楽が盛り上がりに向けて加速していく中、白い飛竜が二つの紋章を同時に横切ると……さらに小さい円に分かれて、四つの紋章が姿を見せた。

一つはエルネスト伯爵家の。

一つはリロウド伯爵家の。

一つはロンダリィズ伯爵家の。

一つはアバランテ辺境伯家の。

「一騎で、四つの……!?」

「ッ……アイツ、いつの間にあんな……」

イオーラお義姉様が口元に手を当て、レオが何故か悔しそうな顔をする。

そして、音楽の最高潮に合わせて再び五騎が渦を描くと、一つに纏まって巨大なオルミラージュ侯爵家の紋章に切り替わり、続いて浮き上がるようにリロウド公爵家の紋章。

曲の終わりに合わせて再びライオネル王家の紋章に切り替わり、解けるように宙に溶けた。

爆発する歓声の中、五騎の飛竜が礼を述べるように再び編隊を組んで旋回し、王城へと戻っていく。

「凄かったわ……いつの間に準備したの?」

「我々は何もしていない。あれは、レオが無理やりねじ込んだ」

「無理やり?」

どういう意味かと、ウェルミィが問いかける前に。

「王城に戻れば分かる。きっと、さらに驚くだろう」

事情を知っているらしいエイデスは、それ以上語るつもりはないようで、その小憎らしい表情に、ウェルミィは口を曲げた。