軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7.

「そう……それは何歳ぐらいの頃?」

「えっと……三歳になったばかりの時だった気がする。僕に誕生日プレゼントを持って来てくれて」

「誕生日プレゼントを?」

私はロンの言葉に少し驚いた。

先程聞いた台詞だと彼の祖母はロンを厄介払いしたいように思えたのだ。

でも贈り物を持参したということは孫として扱う気はあったのだろうか。

「うん、大きな犬のぬいぐるみ。本当は本物の犬にしようとしたけど止められたんだって」

「そうなの……」

「アルヴァ叔父様が犬が大好きだったからって」

「え……」

「お婆様は優しかったけど途中から僕のことをアルヴァ叔父様と間違えてたみたい」

ロンのあどけない声に冷や水を浴びせられたようになる。

無意識に侍女のマーサに視線を向ける。彼女は暗い表情をしていた。

「それでお婆様は僕を抱きしめてこの家を出て私と一緒に行きましょうって言って、お父様に連れて行かれちゃった」

それから一度も会ってない。寂しそうにロンは言う。

「でもお婆様からいただいたぬいぐるみはちゃんと大切にしてるよ」

「……そう、きっとお婆様も喜ぶわ」

「えへへ、そうだと嬉しいな」

私は笑顔を作ってロンに言う。彼はそれを素直に喜んだ。

その後私はマーサと無言で示し合わせて話題を変え、ロンとお菓子を食べて帰った。

お茶とお菓子の用意をするマーサを手伝う振りをして、二人で話したいと伝えてある。

別の侍女と交代した後に部屋に向かうと言われて私は頷いた。

自室に戻るとアイリを呼んで紅茶を頼んだ。

ロンの部屋で飲んできたばかりだが、それでも考え事には必要だと思ったのだ。

彼の祖母は原作には出てこない。

ケビンの母親にあたるが結婚式にもいなかった気がする。

(父親はもう亡くなっているのよね)

それは知っている。

父親が事故で亡くなったのが雨の日だから、雨の日は憂鬱な気分になると漫画でケビンが語っていたから。

謝る事が出来ないまま死に別れたと寂し気な笑みでエリカに語っていた。

しかし母親については一切彼はエリカに何も言わなかった。

描き切れなかったのか不要なエピソードと作者に判断されたのかわからない。

ただロンの説明を聞いていると前公爵夫人は精神を病んでいる可能性が高い。

彼女は孫である彼を息子と誤認識した上で連れ帰ろうとした。

推測になるが息子たちの悲劇を回避しようとしたのだろう。

まだアルヴァが幼い内にケビンから離せばリリーを巡った問題は起きなくなるから。

(……という事は前公爵夫人もアルヴァの死は兄弟間のトラブルの結果だと思っている?)

そう判断しているとしたら彼女は何か証拠でも持っているのだろうか。

それ以前に前公爵夫人はまだ存命なのだろうか。

ロンが三歳の時だから今はそれから五年後だ。普通なら生きている可能性が高い。

だがその後一切ロンと会っていない上に前公爵夫人は精神に問題を抱えている。

紅茶を飲み終わると私は傍に控えていたアイリに告げた。

「少しだけホルガーの所に行ってくるからマーサが来たら待って貰って」

「かしこまりました」

ホルガーを公爵邸に慰留しておいて良かったと思う。

彼は元家令だ。五年前の件も知っている筈だろう。

私は紅茶を一杯飲んだだけで公爵夫人室を出た。