軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56.

レオの子供部屋から離れ、入浴と着替えが必要なカーヴェルとも一旦別れる。

自室にアイリと一緒に戻ると夕食を摂ることにした。

空腹だと怒りやすくなるし、何より一息吐きたかった。

公爵夫人室にある大き目のテーブルに夕食が並べられる。

実家とは比べ物にならない位豪華な料理だった。

酔いたくないのでワインは断ったがそれでも贅沢さは薄れない。

孤食なのでひたすら食事に集中する。

ケビンや子供たちもこのように一人で食事をしているのだろうか。

ロンからはその内一緒に食事をと誘われているけれど。

会話もせず食べ進めるとそこまで時間もかからずデザートまで完食した。

少なくとも厨房はちゃんと仕事をしているし私に対する嫌がらせも感じられない。

それは有難いことだった。

食器を片付けたアイリが淹れてくれた紅茶を飲みながら考える。

レオ付きメイドたちは侍女長マレーナを筆頭に格差社会を作り上げていた。

勤務期間や実家の家格が判断基準のようだが、それを基準に古参が新参に仕事を押し付けるのは間違っている。

更に古参組は勤務時間内に菓子を食べるなどしていた。

彼女たちは解雇で良い。

仕事を押し付けられていたメイドたちに確認したが誰も人数が減ることに難色は示していなかった。

寧ろ、給金を上げなくていいので古参メイドたちを解雇か別部署に回して欲しいとまで要望された。

確かに自分たちと同じ給料で遊んでいる人間は居るだけでストレスになるだろう。

ただ意外なことにマレーナに対して新参メイドたちはそこまで悪感情を抱いていないようだった。

寧ろいてくれないと困るという様子だ。

理由は大雑把に二つ。

不機嫌なレオを上手く宥められるのが現状マレーナだけ。

リーダーや責任者的な役割を新人たちはやりたくない。

こういった主張を新人メイド全員がしてきた。

私の顔色を窺う様子が感じられたのはマレーナに対し私が良い感情を抱いていないと察したからだろう。

(……彼女たちの考えも理解は出来るのよね)

別に新人たちはマレーナを慕っている訳ではないと思う。

ただマレーナが居なくなると自分たちが大変になると思っているから残留を望むのだ。

しかし新人たちにそう思わせる程レオはマレーナに依存しているのは危うい。

(二人で一緒に寝たり入浴は流石にしていないみたいだけれど)

レオはきっと母性を求めている。

原作でもエリカに心開いた後は甘えきっていたし、怖い話を聞いた夜はエリカに寝かしつけを頼んだりもしていた。

それでエリカがレオと一緒に眠ってしまい、ケビンが「俺でさえまだなのに」とレオに軽く嫉妬するエピソードもあった。

それは初夜でエリカに冷たくしたケビンの自業自得だし子供相手に下らない嫉妬をするんじゃないと突っ込みたくなったものだ。

(レオをマレーナから精神的にも物理的にも引き離さなきゃね)

まず入浴に対して他の使用人と同じようにさせる。

マレーナが拒否したならその時点で解雇で良い。

(ただそこまで素直に動くタイプに思えない……)

とんでもない行動をしているのに、そこを責めようとすると納得できなくもない理由を言ってくる。

しかも反省はしていますと言った素振りでだ。解雇しづらい厄介なタイプだった。

公爵夫人権限で問答無用で解雇することも考えたが、それをするとマレーナに懐いているらしきレオがかなり拗れる気がする。

下手すると私を憎んで殺すかもしれない。温かな食事を摂ったばかりなのに寒気がした。

母親を亡くしたレオは恐らくろくなケアをされていない。そして父親の無関心とマーベラ夫人による歪んだ差別教育が彼を形成した。

マレーナもレオの人格形成に関わってはいるだろう。多分自分に依存させる形で。

(レオの依存先を分散できればいいのだけれど)

一番良いのは弟のロンと和解して仲良くすることだ。しかしそれはやれと言って出来るものではない。

人生の半分どころか大半、レオは弟に対する悪感情を抱えて生きてきたのだから。

深く溜息を吐くと扉がノックされる。

アイリが誰何すると、相手はカーヴェルだった。