軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話 絶望への反抗

ダンジョンの四〇階層をソロで攻略したらこれまでになかったナニカが発生した。

恐らくだが、隠し部屋が出現したとかそんな感じだと思われる。

「……」

嫌々ながら実際に音がした方に目を向ければ、そこには今までなかったはずの扉があった。

「はぁ」

ここまでくればもうどうしようもない。

腹をくくって扉を開ければ、その先には不思議なイキモノが楽しく暮らす不思議な世界が……なんてことはなく、そこはただ中央にデデン! と宝箱が居座っているだけの部屋だった。

「ですよねぇ」

俺様がクリア報酬だ! と言わんばかりに自己主張を続ける宝箱。

さすがにアレが宝箱を模した魔物ということはないだろうが、油断してはいけない。

アレに罠が掛かっていないとは誰も言っていないのだから。

あぁそうだ。アレは確かにクリア報酬なのかもしれない。

だが同時に『隠し部屋を見つけたことに興奮した探索者が警戒を忘れて宝箱を開けたら当たり前のように死亡トラップが仕掛けられていました。宝箱を開けた欲深い探索者はそのまま死にましたとさ。ざまぁw』と探索者を嘲笑うためにダンジョンが用意した悪意の塊でもある。

もしかしたら罠なんて仕掛けられていないかもしれないが、少なくとも俺にはそれを試す勇気はない。

「とりあえず収納」

かといって、目の前の宝箱を放置するつもりはないので、いつも通りルームの中に入れて、ダンジョンの外に出てから中身を確認することにした。

ここまではいい。

ここまでなら「ソロでダンジョンを攻略したら隠し部屋を見つけて、その中にあった貴重なアイテムをGETしたぞ!」で済む話だ。

問題はここからだ。

これから他の場所でも確認する予定だが、恐らくこの隠し部屋の出現条件は”ソロでダンジョンを攻略すること”で間違いないはず。

数十秒経ってから出現したのは探索者に回復する時間を与えるためか、それとも『なにもない。いたずらか』と思って出ていくことを期待したかのどちらかだと思われる。

その辺はダンジョンの仕様なので俺がどうこう言ってもしょうがないので、別にどうでもいい。

問題は こ(・) の(・) 程(・) 度(・) の(・) こ(・) と(・) を(・) ギ(・) ル(・) ド(・) の(・) 連(・) 中(・) が(・) 検(・) 証(・) し(・) て(・) い(・) な(・) い(・) わ(・) け(・) が(・) な(・) い(・) ということだ。

いや、正確には、ギルドの連中はこのことを知らなかったのだろう。

アレで役人としては優秀な連中が”ダンジョンの最奥には条件付きで出現する隠し部屋がある”なんて、ある意味ではありきたりな設定を見逃すはずがないからな。

当然、隠し部屋が出現する条件として”ソロでの攻略”が該当する可能性だって考慮していただろうし、検証もさせていたはずだ。

さすがにこの時期のギルドナイトにはソロで攻略するなんてことは不可能だが、レベルが七〇を超えていた彼らなら簡単に攻略できる。

なので彼らはギルドの上層部に命じられてソロで挑んだことがあるはずなのだ。

当然、この隠し部屋についても把握していたはず。

そうであるにも拘らず、俺はこの隠し部屋の存在を知らなかった。

役人からも『内緒で攻略してこい』なんて言われたこともない。

それはつまり、 ソ(・) ロ(・) で(・) 攻(・) 略(・) を(・) 命(・) じ(・) ら(・) れ(・) て(・) そ(・) れ(・) を(・) 実(・) 行(・) し(・) た(・) ギ(・) ル(・) ド(・) ナ(・) イ(・) ト(・) が(・) 、 ギ(・) ル(・) ド(・) に(・) 報(・) 告(・) を(・) し(・) な(・) か(・) っ(・) た(・) ということだ。

何故? 考えるまでもない。

将来的に隠し部屋の中身を自分が独占するつもりだったからだ。それしかない。

ギルドとしても、どれだけギルドナイトの報告を疑わしく思おうともソロで攻略できるだけの人員はいなかったし、監視を付けたとしてもその時点でソロではなくなるので、隠し部屋が出現しなかった可能性がある。

というか、出現しなかったのだろう。

こうなればあとはギルドナイトの胸三寸。

知っていたのは誰だろうか?

日頃から『武者修行』と称して単独でダンジョンに潜っていた剣聖と、日頃からギルドの役員から色々な依頼を受けていた上忍は間違いなく知っていただろう。

ダンジョン攻略を面倒くさがる大魔導士と、ダンジョン攻略にあまり興味がない弓聖は微妙なところ。

単独で動くことを嫌っていた聖騎士は知らない可能性がある。

単独行動を禁じられていた俺についてはいわずもがな。

恐らく剣聖は武者修行とほざきながら他のダンジョンにも隠し部屋があるかどうかを確認していたのだろう。

で、隠し部屋が出現したのを確認したら、その時点で踵を返していたと思われる。

扉を開けてしまえば宝箱と対面してしまうからな。

宝箱には”開封後周囲三〇メートル以内に生きている人間がいなければ即座に消えてしまう”という仕様の他に”確認されてから半径三〇メートル以内に人がいなくなると一〇分で消滅する”というふざけた仕様がある。

ちなみに開封から消滅に要する時間が僅か0・5秒なのに対し、確認から消滅に要する時間が一〇分程度あるのは『宝箱を用意した存在が、それを見つけた探索者が一〇分の間になんとか宝箱の中身を得ようと四苦八苦する様子を眺めて愉しんでいるから』なんて説が有力である。

さすがはダンジョンの悪意。

性格が悪い。

そんなダンジョンの悪辣さを知っている剣聖は、敢えて宝箱と対面しないことで宝箱の消滅を回避していたのだと思われる。

隠し部屋に通じる扉に関しては、おそらくだが一定の時間が経過すれば消えるのだろう。

それならギルドの連中が把握できなかったことにも納得できる。

そうこうして情報の隠蔽に成功したら、あとはギルドから依頼を受けて攻略に当たるであろう上忍と口裏を合わせておくだけでいい。

四〇階層を攻略できていた探索者はもとより、ポーションの回収を命じられていた軍や警察に所属していた探索者たちとて、入手できるハイポーションやポーションの数を減らしてまで何度も同じ実験しようとは思わないだろうからな。

剣聖や上忍は、いずれ自分が宝箱の中身を得るために必要なスキルである【収納】を覚えたら肥大化させたアイテムバッグを担いで回収する予定だったか、もしくは商人か旅人のジョブを得た弟子や子供に例の指輪を使ってソロで攻略できるレベルまでレベリングしてからこの情報を伝えてアイテムを回収させる予定だったのではなかろうか?

それを今回、俺が回収してしまった。

これをしくじりと言わずなんという。

今はまだいい。

だが、このままでは近い将来、剣聖がソロで潜った際に隠し部屋の中身が空である――つまり何者かが剣聖よりも先にソロでダンジョンを攻略した――ことを知ってしまう。

たまたま空だったと誤認してくれればいいが、他のダンジョンに潜って隠し部屋の中身を確認されたらその時点でアウト。

剣聖がソロで攻略する前に俺がソロで攻略してしまえば”隠し部屋があったが全部空だった”ということになるかもしれないが、さすがにそんなことで誤魔化されてくれるほど間抜けではないだろう。

必ずや『自分以外の攻略者』の存在に気が付くはずだ。

「……どうする?」

このことを知れば、ギルドや剣聖は『獲物を横取りされた』と考えるはずだ。

連中はそういう性格をしている。俺は詳しいんだ。

剣聖はともかくギルドと敵対するにはまだ早い。というか、無理だ。

ステータス上はすでにギルドナイト全員と戦っても勝てる領域にいるが、社会的な力が足りない。

それ以前に、家族を人質に取られたら奥野が裏切って死ぬ。

現時点で単純なSTRでは負けているからな。正面切っての戦闘ならまだしも彼女に奇襲される可能性を考えたら、ギルドから彼女の家族を護れる程度の社会的な力を持つ後ろ盾が絶対に必要だ。

「とはいえ……」

龍星会以外の後ろ盾を作るにしても、半官半民の組織であるギルドに対抗できるのは同じ成り立ちで形成されているものの方針の違いから対立している大阪のギルドか、日本以外の国家しかない。

交渉自体はハイポーションやエリクサーがあればどことでもできるだろう。

しかし、大阪に関しては細かいことまで知らないし、他の国と言ってもどこが信用できるかわからないときた。

下手な国や組織にハイポーションやらエリクサーのことを明かして『ころしてでもうばいとる』をやられたら意味がない。

「あ~。もうめちゃくちゃだよ」

考えれば考えるほどじり貧だ。

ソロで攻略なんてするんじゃなかった。なんて考えても時すでに遅し。

「……こうなったら本気で龍星会を巻き込むか?」

いままでは隠れ蓑的な役割を期待していたから適当なアイテムを渡すに留めていたが、もうふっきれちゃおうか?

あそこのお嬢さんのこともあるし、個人的には嫌いじゃないんだよな。

裏切ることができないくらいズブズブになっちゃう?

「うん。悪くないかもしれんね」

規模の拡大に伴い彼らが面倒ごとに巻き込まれる可能性も増えるが、業務の拡張に伴い面倒ごとが増えるのは世の常とも言えるし。

「ヨシッ!」

そうだ。そうしよう。彼らには俺と関わったのが運の尽きと思って色々と諦めてもらおう!

というか、俺と関わっていなければ会社は数年以内に潰れて、社長のお嬢さんも金を稼ぐために夜の店で働かされていたんだ。

彼らだってそんな絶望の未来よりは面倒ごとと向き合っている方が数倍マシだろう?