軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第92話 黒

「……傷はもう大丈夫なの?」

重い空気の中、母さんがそう溢した。

「うん、魔王を倒したら治ったから」

セレスは俺の肩を抱き、言葉を続けた。

「話はまだ続くのです」

「続くって言うのは?」

「物語のように魔王を倒して終わり、ではなかったのです」

魔王討伐を成し遂げた親衛隊の帰路はとても険しいものだった。

通常の魔物に加え、魔王軍の魔物、それに魔族。

魔王を討伐したことにより、統率が取れなくなったのか、その攻撃に一貫性が無くなり、対応は困難を極めた。

やっとの思いで帰還した和也は、凱旋もほどほどに皇帝に謁見した。

「魔王討伐、ご苦労であった」

「はい、皇帝陛下」

「……本当に魔王を討伐したのか?」

「俺がこの手で確かに切り伏せました」

その言葉に貴族たちの間にどよめきが起こる。

「それはこのケインが保証いたします。隊長は確かに魔王を切り伏せ、魔王は灰塵と化しました」

「副隊長と同じく、セレスティーナ・ヴィ・ユグドミレニアが保証します」

「そうか……」

皇帝は深く玉座に座り込み、ホッと息をついた。

「そうか、魔王が倒れたか……」

「今後魔物の動きが活発になるやもしれません。急ぎ対策をとらねば」

貴族たちがまた慌ただしく動来始めた時、皇帝が声を発した。

「改めて、魔王討伐ご苦労であった。して、何か望みはないか?」

「元の世界への帰還を、お願いします」

その声にまた貴族たちは響めく。

「……で、あるか。そうよな……」

「皇帝陛下?」

「……まこと、心苦しい限りだが、勇者の帰還魔術は魔王軍によって奪われてしまったようなのだ」

その言葉に息が詰まった。

「それではカズヤ様はどうなるのですか!?」

皇帝は重い口で言った。

帰れない、と。

血の気がサーっと引いていくのが肌感でわかる。

視界が段々とノイズ混じりになり、耳もキーンと聞こえなくなる。

次の瞬間、俺の視界は真っ暗になった。