軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第26話 それでも

昔話を終えたセレスさんは若干耳を赤くしたお兄を一瞥した後、両手をポンと叩き言った。

「夜も更けてきました。続きはまたの機会に」

セレスさんのその一声で一様に解散となった。

お兄は一体どんな10年間を過ごしたのだろう。

初めはワクワクドキドキなファンタジーライフを想像していた。

けれど、どうやら現実は違うようで、悲惨な戦場。

セレスさんとケインさんが語ったことはほんの僅かだろう。

私はどうにも筆舌し難い気持ちに苛まれた。

両親と唯を屋敷から家へと帰した後、屋敷の応接室には和也とセレスティーナ、アリシアにケインが残った。

頃を見計らったのか、ケインが膝をついた。

「――隊長、身勝手な振る舞い申し訳ございません」

「いや、いい。いつかは話さなきゃいけなかった内容だ」

そうは言いつつも視線は俯く。

「大丈夫ですよお父様!魔術や私たちを受け入れてくださった方たちです!何も心配――」

「そういうことではないんですよ、アリシア」

明るく振る舞うアリシアに笑いながら訂正を入れるセレスティーナ。

「お父様――カズヤさんが気になさっているのは、自分の事を明け透けに話されて恥ずかしいのです」

「わかっているのなら言わないでくれ……」

そう言い口元を抑える和也。それを見て一同笑う。

「全く、アリシアもそろそろ寝なさい。ケインはいつもの部屋を使ってくれ。来客の予定なんてなかったんだ、少し不便でも文句言わないでくれよ?」

「お心遣い痛み入ります」

「はーい、お父様」

おやすみと挨拶をして二人も部屋から出る。

そうして沈黙が部屋を包む。

それがどうにも辛く染み入る。

「……」

「……お部屋に行きましょうか」

和也とセレスの部屋、二人は装いを楽なものに着替え、それとなしに並んで座る。

「……カズヤさん」

ポンポンと膝を指し、和也を誘う。

和也はそれに応じ、力無く頭を預けた。

「大丈夫です、きっと受け入れてくれますよ」

「だけど……俺は人殺しだ」

和也がもっとも引っ掛かっていたのはそこにあった。

例え、異世界であっても、危機的状況であったとしても、魔物を魔族を、人を斬ったことには変わりない。

「そうですね、それは変えることはできませんね」

セレスティーナは和也の頭を撫でながら続ける。

「でも、その時カズヤさんがその選択をしなければ、ここにはくる事はなかった。私たちのもとに帰ってくることはなかった。そう考えると、私はカズヤさんの罪を許容します」

ひどい王女ですよねとセレスティーナは自嘲する。

「それは――!」

「だって、幾千幾万の犠牲があったとしても、カズヤさん一人がいなくなることの方が私にはひどい話です。想像すらしたくありません」

何も言えなくなった和也はまたセレスティーナの膝に頭を預ける。

「もっと言えば私も人殺しです。一緒ですね」

見惚れるほどに艶然な彼女、さらに彼女は言葉を続ける。

「もし受け入れられなかったら、旅に出ましょう。日本を回ったら別の国へ、この間アメリカという国の話を聞きました。あそこも行ってみたいです!お金なら心配ありませんしね」

「でも、アリシアはどうするんだい?」

「今度聞いてみます?迷わず貴方を選ぶと思いますよ?」

――どうしてそこまで

そう喉から出かかった時、和也の唇は彼女に塞がれた。

「愛しているからです。例え貴方が魔王になろうとも、私は貴方を愛しているのです」

「――ありがとう」

そうして今度は和也から口付けをした。

3つの月が霞む夜、また二人の愛が深まった。