作品タイトル不明
第219話 婚約者
新しい学年での学校生活に慣れてきた頃。
俺たちは昼食をいつもの面々と中庭で取っていた。
「なんだかんだこのメンツに収まったな」
遼はそう言いながら菓子パンを食べる。
新しい学年で新たな出会いはあったものの、3年ともなると新しいグループができることも少ない。
異世界のことを知っていることもあり、結局はこの面々で集まることが非常に多かった。
「アリシアはどう? 新しいお友達はできた?」
「はい! 皆さんとても良くしていただいています」
「ねね、今中等部では何が流行ってるの?」
そんな雑談を楽しみながら箸を進める。そんなおり、ふと葛西さんが言い出した。
「そういえばさ、セレスティーナさんのことがあってから異世界系の物語を読んでみたんだけどさ。セレスティーナさんに婚約者っていたの?」
その話題に俺は一瞬箸を止める。
「い、いきなりですね」
「ごめんごめん、気になってさ」
「……婚約者とまではいきませんが、婚約者候補の方はいらっしゃいました」
「やっぱりそういうのあるんだ」
「王族ですからね」
どちらの世界でも、王族・貴族というのは国の為、政の為に結婚をする。血による契約は下手な条約よりも強固で確実なものだったからだ。
セレスの国もその例に漏れず、セレスの上の兄弟たちは婚約ないし結婚をしていた。
「どの話も大戦の影響でお流れになりましたが」
「な、なんかごめん」
「いえ、そのおかげでカズヤさんと一緒に居られるのですから」
「それで、さっきからちょっと嫌そうに話を聞いている旦那さんはどういった感想をお持ちで?」
お茶を煽ってから俺は答えた。
「知ってはいたが、改めて聞くとちょっと……その、嫌だな」
そう思いを吐露すると、セレスは頭を撫でてくる。
「前にも言いましたが、私は好いた人でなければ結婚しませんよ? 父上にもそう伝えていましたし」
「それでも、セレスから男の話を聞くのは……ちょっと」
「ふふ、可愛い人」
貴族の、王族の義務だとはわかっている。だけど、好きな人にそう言った話があったと思うと、胸がざわつく。
醜い嫉妬の心を隠しきれず、思わず言ってしまう。
「まあわかるぜ、自分の恋人、ましてや奥さんからそんな話聞きたくないよなぁ」
「ご安心くださいな、私の初めては何もかも、カズヤさんですから」
「わかってるが、それでも御せないのが感情というものだ」
感情のままにお茶をまた煽る。
「どうしたら許してくれますか?」
「これからも傍にいてくれ」
「はい、もちろんですとも」