作品タイトル不明
第206話 小児科での邂逅
「え?」
「あ、やっぱりセレスティーナさんたちじゃん」
声を掛けてきたのはクラスメイト。
このようなところで鉢合わせるなんて思ってもみず、どうしていいものかと固まる。
「田中さん、お久しぶりです」
「うん、久しぶり。二人はどうしたの?」
「ええっと……」
息子の6か月検診であると素直に告げるなんてことはできない。
しかし、現在進行形で渚沙を抱っこしている状態。
どう言い訳しようか。
「えっと、田中君はどうしてここに?」
「妹がちょっと風邪気味でさ、それで来たんだよ」
「そ、そっか」
「あれ、その子……」
不味い、触れられた。どうする、暗示でも掛けるか? こんな大衆の面前でそれはできない。どうしたものか。
いろんな考えが脳内を錯綜する。
「妹ちゃんか弟ちゃん?いいなぁ赤ちゃん。かわいいな~」
「え、ええ、そうなんですよ。お義父様たちの都合が合わず、代わりに私たちがここに」
「そっか、大変だな」
どうやら弟妹と勘違いしてくれた様子。
俺たちはその勘違いに乗っかり、誤魔化す。
「田中君は妹さん見なくて大丈夫なの?」
「あの子はほら、おもちゃの所に夢中だから……でも流石に一人はまずいか。いってくるよ」
「はい。それではまた学校で」
「ああ学校で」
そうして田中君とは別れる。
ほどなくして、会計を済ませ、俺たちは帰宅の途につく。
「いやあ、さすがに驚いたな」
「ですねぇ」
「ああいうこともあるから、気を付けないと」
「でも、気を付けるといってもどうするんですか? お外に出られなくなってしまいますよ?」
「そうだよなぁ」
意外と世間は狭い。今回のことでそれが良く分かった。
それを気を付けるだなんて、家から出ないしか対策はないだろう。
「いっそのことバレてしまったほうが楽なのかもな」
「それは……そうかもしれませんが、せめて大学に行ってからじゃないと……」
「わかってるさ」
どうにも柵からは逃れられないらしい。
「まあ、今後も気にしない方向でいこう」
「今回みたいになったらどうするんです?」
「……その時は暗示を掛けるか、適当に誤魔化す」
その言葉にセレスは笑う。
「じゃあその時は対応お願いしますね?」
「ああ、任せとけ」
「あーぶ、う!」
「ごめんなさいね、私たちばかりお話しちゃってました。じゃあ……この後公園でも行きましょうか」
「いいな。天気もいい。寄っていこうか……いや、アリシアも呼ぼうか」
「そうですね。一緒に行きましょう」
昼下がり、眠くなる陽気の中、俺たちは家に急ぐ。
今日もまた平和だ。