軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第127話 名前

「お母様!おはようございます!見てください朝起きたらプレゼントが……て、ええ!?」

屋敷のリビングで早速プレゼントを開封していたアリシアが朝の挨拶をしてくれる。

しかし、それは驚きの声に打ち消される。

まあそうだろう。母親が見慣れぬ赤子を抱いて出てきたのだから。

「どうしたのですか?その赤ちゃんは一体……」

「今朝イーディス様が、私たちの魔力から生まれた子供だと」

「どういうことですか?」

当然の疑問だろう。俺たちはアリシアに今朝イーディス様が言ったことをそのまま伝える。

「なる、ほど……突然の事なので驚きがとても勝っていますが、わかりました。お母様たちがそう決めたのなら私はそれが良いかと思います」

噛み砕く様に優しく言ってくれるアリシア。

「ありがとう」

「ありがとうございます、アリシア」

「家族が増えることはとても良いことです。ですから、そんなに気になさらないでくださいな」

そう言ってアリシアはセレスの腕に抱かれている赤子に微笑みかける。

本当に良い娘を持ったものだ。

「因みに、お祖父様や唯お姉様にはどうやって説明されるのですか?」

「どうって言われてもなぁ……見せるしか方法ないんじゃないか?」

「驚かれますよね……きっと」

「それは間違いないでしょうね」

暫く思案してみるも、特に思いつく策は無く。

見せるほかないだろうという結論に至った。

「驚きのあまり腰抜かすんじゃないか?」

「滅多なこと言わないでください」

「そうですよお父様」

悪い悪いと謝りながら俺たちは家へと向かった。

「おはよう父さん、母さん」

家のリビングに行くと、父さんと母さん、そして唯が揃っていた。

「アリシアちゃんおはよう!アリシアちゃん宛てのプレゼントこっちにも届いているよ!」

「ほ、本当ですか!うれしいです!」

「ほら、入口は冷えるだろう。さあ、入りなさい」

父さんの勧めで俺たちはリビングの中に入る。

「みんな、驚かないで聞いてほしいんだけど……」

「どうした?なにかあったのか?」

三者三様に疑問符を浮かべているところにセレスが入ってくる。

「え、は?子供!?」

「あらあら、まあ」

「どういうこと!?」

驚く三人に今朝方イーディス様から子供を授かったことを伝える。

「そんなことが……異世界ってすごいな」

「いえ、これは凄く例外的というか、初めてのことだと思います。イースガルドにいたときも、魔力から人間の子供が生まれたなんて話聞いたことがありません」

口をあんぐりと開けて驚く父さん。

「それじゃあ、この子は普通の子供なの?」

「イーディス様曰く、普通の人間の赤子とのことだよ。いまいち俺たちにも要領を得ないけど」

頬に手を当てて様子を伺う母さん。

「かわいい……」

セレスの傍に寄り、赤子を注意深く観察している唯。

皆一様に驚きを共有した後は、色々な質問が出てくる。

「この子の出生届とかの行政関係書類はどうなってるんだい?」

「そのあたりは全部イーディス様が変わりにやってくれたみたい。屋敷のポストに色々書類が入ってた。ほら、母子手帳も」

一緒に持ってきた書類類に目をやる。

正直この辺りは全然分からないので非常に助かる。

「男の子?それとも女の子?」

「男の子だそうです。名前はまだ決めていませんが」

まだ実際に関した訳ではないが、書類には男の子と記載があった。

「そうじゃん名前!この子の名前どうなってるの?」

「そこはこちらで決めた後、自動的に書類も書き換わるみたい」

「じゃあ、名前を決めないとだね」

「そうですね……この子の名前、どうしましょう?」

セレスの発言にうーんと唸る。

「アリシアちゃんの時はどうだったの?」

「私も気になります!」

「アリシアの時は妊娠した時に、男の子の名前と女の子の名前を用意していましたね」

今から8年前、懐かしい。

元々、種族が違う俺たちは子供が生まれる確率がとても低かった。

だから、妊娠が分かったときは飛び上がるほど喜んだのを今でも覚えている。

……今回は飛び上がる程驚いたが。

「じゃあ、その時の男の子の名前はどうなの?」

唯の提案に俺たちは否を返す。

「それですと、姉のおさがりみたいになってしまうので、ちゃんと考えようと思うんです」

「アリシアの時は時間が合ったからな、こんなすぐに決めろっていうのも難しい」

「それもそっか、いい名前になるといいね」

唯は赤子の頬を優しく突く。赤子はそれにぐずることなく朗らかな笑みを返す。

「イースガルドの名前を付けるべきか、日本の名前を付けるべきか……悩むな」

「地球で生まれた子ですから、日本の名前を付けるべきでしょうか……」

「どちらかしっくりくる方を選んだらいいんじゃない?」

母さんが用意してくれたお茶が冷める頃、まともな案が出始めた。

「……『 渚沙(なぎさ) 』羽鳥渚沙っていうのはどうだ?」

「良い響きですね。こちらも案がでましたよ『アルフレート・ユグドラシア』いかがでしょう?」

「いい名前だな」

両者紙に書き出して見合う。

どちらも甲乙つけがたい名前だ。

「アリシアは何方が良いと思う?」

「え?私ですか?」

「確かに、アリシアの意見も聞いてみるべきですね」

「いいのですか?私が……」

「アリシアも家族の一員ですから、ね?」

「そうですね……渚沙が良いと、思います」

暫くの沈黙の後、俺たちは決めた。

「この子の名前は、渚沙。羽鳥渚沙」

そう言って赤子――渚沙に目線をやる。するとふにゃりと笑う。

この子は良く笑う子だ。

「いい名前ね」

「俺もそう思うぞ」

「渚沙くん~唯お姉さんですよ~」

父さんたちにも受け入れられている。よかった。

どうか、この子に祝福あれ。