軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

筋肉の卵

うーん、声を潜めて会話しているのだろうけれど、私の耳はかなり優秀なのか声を拾ってしまう。

いったいどんな噂が広がっているのか。光属性のハズレ嫁ってだけじゃないのかな?お礼を言うことに驚かれるとか……。悪役令嬢扱い?

壮年の恰幅の良い男が一人、私の前に出て帽子を取って頭を下げた。

「料理長のクックです。お手伝いすることがあれば言ってください。それから……」

クックが申し訳なさそうに視線を落とす。

「その、贈り物はお菓子でしょうか……生憎と砂糖はあまり量がないので……必要ならば仕入れておきますが……」

砂糖は高価だからあまり置いてなくても仕方がないよね。王都でも、砂糖よりも蜂蜜の方が出回っていたくらいだ。とはいえ、侯爵家はそれなりに資産もあったし、貴族たちが開くお茶会は見栄の張り合いだったからお菓子もそれなりに並んでいた。

中には金持ちアピールをするために、ほぼ砂糖といった、ただただ甘いだけでおいしくもない物を出すところもあったっけ。かわいがられていた8歳までの記憶を思い出す。

「えーっと、甘いものは……」

レッドの顔を思い浮かべる。甘いものが好きそうな顔はしてないよね。黒髪黒目。鋭い目つきなのに甘いマスク。うーん。イケメンだよね。整った顔してた。あの顔で甘未?

いや、意外と人に隠れてパフェをおいしそうに食べる線もありだな。

……いや、だめだめ!甘いもの食べ過ぎて、お腹がたるんじゃったらどうするの!

推し筋肉が!私の推し筋肉がぁ!

そうだ。育てるのだ。

私はレッドの筋肉を!よりすばらしいものへと!元ギルド長のガルダ様の神筋肉のように!

育てる楽しみ。うひゅひゅ。おっと、変な声が出そうになった。あぶないあぶない。

「砂糖は必要ないわ。軽食を届けようと思うの。材料を見せてもらえる?」

日本の知識チートで料理の定番といえば、柔らかいパンとかプリンだ。どっちも作り方など知らない。定番のもう一つはマヨネーズ。

……脂肪かよ!筋肉づくりには不要。

必要なのはプロテイン。そう、プロテインはタンパク質!良質なたんぱく質をたくさんとると、破壊された筋肉が超回復して育つのだ!

「あら、随分たくさんの卵があるのね?」

養鶏でもしなけりゃこんなに卵が手に入らないのではというくらいの量がある。

「ああ、そうですね。冬を越すために鶏は欠かせませんから。たくさん鶏を飼育しているので、卵も豊富にとれます」

なんと、どうやら本当に養鶏みたいなことしてるってことか。

「牛や豚は?」

「牛は乳を搾るために数頭はいますが、豚も牛も外に出していると冬を越せませんから……鶏は小屋に入れられますが……」

なるほど。鶏なら、養鶏団地じゃないけど、二段ベットや3段ベットみたいにすれば狭い空間でもたくさん飼育できるか。暖炉で温めた部屋の一室に場所を作れば各家庭でもそれなりに育てられる?

それにしても……。

鶏肉と卵!良質なたんぱく質!これは素晴らしいことですぞ!

筋肉育てるぞー!