軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ギルド長視点4

攻撃できないからなんだというんだ。攻撃以外に必要な力など腐るほどある。

敵をいち早く見つけることができる者が一人いれば、不意打ちを受けて負傷する者が減るかもしれない。

敵の興味をうまく引ける者が一人いれば、そちらに注意を向けている間に攻撃することで致命傷を与えられるかもしれない。

攻撃だけがすべてではない。

騎士は剣の腕を鍛え、攻撃魔法を訓練し、強いことが求められる。

しかし、冒険者を見て、腕っぷしの強さだけがすべてではないといやほど学んだ。

長く冒険者を続けている者が、必ずしも強力な攻撃魔法が使えたり、剣術に秀でているわけではない。

アリスのおかげで、この先どれだけの命が救われるだろう。

アリス……。

空が点滅するように光っている。

アリスの魔法なのか?

アリスは、街を救うために魔法を使っているのか?

ワーウルフに閃光弾を?

しかし、こんなに魔法を使い続けられるものなのか?

「応援が到着した!」

「戻れ!騎士が来たぞ」

西側の壁の扉の前にいた人々がほっとしたように声を上げる。

ギルドの受付嬢が弓を下ろして俺の顔を見た。

青い顔をしている。無理をしていたのだろう。

「アリスは?」

俺の問いに、受付嬢は階段の上を指さした。

そうか。壁の上ならば安全だろう。

ほっとした瞬間、先ほどまでの光の点滅が終わった。

アリスの、光魔法が終わった!

ソウが、扉の外で踏ん張っていた人たちに戻るように声をかけ、騎士たちと入れ替わるようにと指示している。

「任せる」

声をかけると振り向きもせずソウが片手をあげた。

もとより、騎士のことは騎士団長であるソウの領分だ。公爵が口出すことではない。ギルドと合同で動く場合はギルド長の俺と話をする必要はあるだろうし、火魔法が必要であれば俺の出番もある。

激しい雨はやみそうにもなく降り続ける。

階段を駆け上る。

「アリスっ!」

いない。

いや、違う!

アリスの姿を探して目に映らなかった。違う、視線を足元に移せば、アリスが倒れている。

「アリス!アリス!」

壁の上の冷たい石の上にうつぶせで倒れていたアリスの体を起こす。

「アリス、大丈夫かっ!」

息を確かめる。

呼吸はしている。生きてることにほっとするが、すぐにぎゅっと心臓が縮む。

真っ白になった顔。冷え切ったからだ。

激しい雨に打ち付けられ髪も乱れ顔に張り付き、ボロボロな姿。

「侯爵令嬢が……。今頃ドレスを着て暖かい部屋でゆったりとお茶を飲んでいられたはずなのに……!」

もしかしたら、アリスは公爵領にいてくれるかもなんて。

淡い期待を持っていた自分が恥ずかしい。

流刑地……そう呼ばれる土地なのだ。

優しいアリスだ。孤児たちを……いや、この領地の人々を見捨てることができないかもしれない。だけれど、それは、優しさからくるものであり、……同情だろう。

彼女の希望でも喜びでもない。

王都に戻してあげなければ。

優しさから、留まると言い出せないくらい……。

公爵からないがしろにされればどうだろう。

屋敷ではどのように過ごしているのか。

使用人には必要以上に手を貸さないように命じるべきだろうか。

いいや違う。ギルドに顔を出すなといえばいい。街の中の人たちのことを知らなければ……。これ以上子供たちとの接触がなければ……。

閉じ込めるみたいだが……。いいや、閉じ込めるわけじゃない。

ギルドに向かうなと言うだけだ。街は危険だからとでも言おう。王都へ行くのは自由だ。近くにも華やかな領はある。行くのは自由だ。

閉じ込めるわけじゃない。アリスを……リリアリスに。侯爵令嬢として、公爵夫人として幸せに過ごしてほしいだけだ。

いつまでも冷たい雨に打たれさせるわけにはいかない。

アリスを抱き上げると、わーっと声が上がった。

何事だ?と、壁ん上から街の外に視線を向ける。

「なんだ、これは……」

1000はいるだろうか。ものすごい量のワーフルフが、倒れている。

「ワーウルフロードを倒したぞ!」

騎士団長の言葉に、歓声が上がった。

「気絶している間に、息の根を止めろ!急げ!」

気絶?

冒険者たちと騎士が入り乱れるように、倒れている大量のワーウルフのもとへと広がり、次々に首を落としていく。

いったい何が起きているんだ?

どうして大量のワーウルフが倒れている?

毒ガス?

「あ!カイ、無事だったのか」

血まみれになってはいるが、歩いて扉の内側に移動するカイの姿が見えた。

アリスを抱えて階段を下りていく。

「カイ、何があった?」

「アルフレッド様、リリアリス様は?」

カイが心配そうに俺の腕の中のリリアリスの顔を覗き込んだ。

「生きている。だが、体が冷え切っている。ここはもう大丈夫だろう。屋敷に戻る。カイ、お前も戻って傷の手当てを受けろ」

カイが首を横に振った。

「いいえ、一度ギルドに戻ります。リリアリス様は目を覚ました後に、きっとサラや子供たちがどうなったのかと心配されるでしょうから。状況を確認して来ます」

カイの言葉に、ハッとする。

確かにアリスならば「みんなは?」と真っ先に尋ねそうだ。カイが、俺以上にアリスのことを理解して彼女の望むように行動しようとすることに複雑な感情が沸き上がる。

「分かった。アリスは無事だと、皆にも伝えてくれ。それから、この状況に至った経緯も報告してくれ。毒ガスの類ではないんだな?」

カイも他の冒険者も傷ついているがワーウルフのように意識を失って倒れているわけではない。もし、毒の類なら無事というわけにはいかないだろう。そもそも、これだけ激しい雨が降っているのにガスが充満するとも思えない。

カイがうなづくのを見る。ギルドの受付嬢が毛布をアリスにかぶせてくれた。