軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

57.青いユリの花束

結婚式を来週に控え、今日は母2人とお茶会。

式当日、2人はお揃いの髪飾りを身に付けるそうで……楽しそうで何よりです。

「ねぇクラウディア? ウィルハルトのカッコいいところを教えてくれないかしら?」

「それ、お母様も聞きたいわっ」

少女のようなキラキラとした目を向けてくる。

ふっふっふ~。

いつも友達にウィル様の話をする時は遠慮してるんだよね。だってウィル様の魅力を知って、ウィル様を好きになられちゃったら困るから。

でも2人相手ならその心配はない。それにお父様と国王陛下の話も……うん、興味ない。だから思う存分聞いてもらおう。

「もちろんですっ。ウィル様って、いっつも私を守ってくださるんですよ。それこそ幼い頃から」

「ふふ。あの子ったら、大好きな女の子に好かれたくて必死だったものね」

だ、大好きな女の子///

「懐かしいですわね」

私達、王宮にいる時も伯爵邸にいる時もいつも2人一緒にいた。

ダイエットだ! ってヨガもどきをしたり、私作ラジオ体操をしたり……食事改善の為って言い訳して、厨房に忍び込んだこともあったわね。

「いつだったか、2人で変なポーズをとっていたこともあったわよね」

「庭に絨毯を敷いてね」

「それで侍女長に怒られてはしょぼくれて」

あれは形から入ろうと思って、ヨガマットの代わりに使ったのよね。

確かお父様が外国から仕入れた貴重な絨毯を使っちゃって。だって出し惜しみしてたのか使われていなかったから、これはいらない物なのかなって思っちゃったんだもん。

でも慌てた侍女長に『これは室内用の絨毯ですっ。屋外用の敷物もありますので、今後は使用前に仰ってください』って言われちゃったんだよね。

お父様に謝りに行った時も『そうか……いや、いいんだ。殿下が敷くと……そう仰ったんだもんな』って遠い目をしていて流石に反省したわ。ま、使い続けたけど。

「あの時も私が持ち出したのに、ウィル様が庇ってくださって」

「えっ、クラウディア!? あなたそれをずっと隠していたわね」

「あっ……」

「ふふ。守った息子が誇らしいわぁ」

いやでもあの後ちゃんとウィル様にも謝ったし、お礼も言ったし……きっと問題ないはず。

「あと歌を歌いながら踊っていたのも可愛かったわ」

「自作のわりに毎回同じ曲だったあれですよね。今では伯爵家の騎士達も訓練前に踊っていますよ」

「まぁ! 王宮騎士もよ」

きっとラジオ体操のことだろう。曲は多分間違ってる箇所もあっただろうけど、入りは間違わなかった自信があるし。騎士のみんなはカウントしながらだけど、これは広めた自分を褒めてあげたい。

「ふふっ。よく厨房にも忍び込んでは怒られていたわね」

「まぁ。王宮でも忍び込んでいたのですか」

「では伯爵邸でも?」

「もちろん忍び込んでいましたわ」

えぇ……料理人達は大歓迎だったし、ちゃんと手が空いている時間帯を確認してから行ってたよ?

……確認、したよね? あれ? どうだったっけ?

「そういえば侍女や執事に怒られる際、毎回私を背に隠してくださいました」

これは……確認してなかったかも。

「まぁ!」

うん、でも時効だよね。

「怒られてもウィル様と一緒で楽しかったんです。庇ってくださるウィル様はカッコよかったですし」

私の前に立って両手を広げ『ディアは悪くないからっ』って。

「それにそれにっ! 市井にお出かけした時だって必ず馬車道側を歩いてくださいますし、人が多い場所では私が誰かにぶつからないようにって、気を配ってくれるんですよ? もう本当、私には勿体ないくらいカッコよくって」

最初はあまり変わらなかった背丈も、いつの間にか大きくなって……それがとっても頼もしくて……ウィル様に守られると嬉しくなっちゃうの。

ふふっ。

「ウィルったらやるじゃない」

「そうなんです。私との約束は必ず守ってくださいますし、いっつもそばにいてくれて……私、ウィル様の事が大好きなんです」

「ふふっ。娘が幸せそうで嬉しいわ」

ウィル様もヒロインだけじゃなく他の誰にも目移りせず、ずっと私を好きでいてくれてる。

「だそうよ? 良かったわね。ウィルハルト」

「っ!?!?」

いつの間に後ろにっ!? いったいどこから聞かれていたんだろう。

「…………///」

「ウィル様……」

「うん……///」

口元を手で隠されているけど、耳まで真っ赤にされているウィル様。

「さっさと自分の王宮に連れて帰りなさい」

「ふふ。若いっていいわね~」

「ディア」

「……はい///」

差し出された手を取って、ウィル様のエスコートで移動する。その移動中に確認してみると、なんと最初から聞かれてしまっていたみたい。

ウィル様の王宮に到着すると、屋内に入らずにユリの花が咲き誇る庭園へと連れてこられ……そしてその真ん中で片膝をついたウィル様。

「クラウディア」

両手で私の手を取り、私を見つめてくる。

ま、待って、これってアレだよね? こ、心の準備をさせてほしい。

「俺はディアに出会ってからずっと幸せで、きっとディアに出会うために生まれてきたんだって思ってる」

「っ、、、」

待ってよ~! 自然と涙も溢れてきちゃったじゃん。

「ディア。これからもずっと俺の隣りにいて欲しい」

そうして青いユリの花束を差し出すウィル様。

マリッジリングじゃないところが異世界って感じ。でも王族だけが渡せる青い花。その中でもユリは私達にとってとても大切な花だから。

だから指輪なんかより全然嬉しくて。

「はいっ」

私が返事をするのが早いか、ウィル様が私を抱きしめるのが早いか……ギュッと抱きしめられ、もう幸せすぎて倒れちゃいそう。

「花束、嬉しいです」

「いつかちゃんとしたユリの花束を贈りたいと、ずっと思っていたから」

照れていた私には聞こえなかったけど、初めてユリを貰ったあの日にもそう仰っていたと以前ポーラに教えてもらったの。

「ふふ。初めて頂いたユリの花、あれは押し花にして飾っているんですよ?」

「もしかしてディアの部屋に飾ってる、額縁に入ってるアレがそうなの?」

「はいっ」

「ありがとう。嬉しいよ」

本当は栞にしたかったけど、流石に大きすぎて断念したのだ。ユリってドライフラワーにできるのかな? 帰ったら一番長く持つ保存方法を、庭師に確認しにいかなきゃね。