軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40.枝豆と豆腐*2年前

「ディアは枝豆を何で知ったの?」

「本です。大豆がまだ緑色のうちに収穫したものだと書いてありました」

これは本当。枝豆を手に入れるためにもそれなりに理由が必要だと思い、家にある本を手当たり次第確認したもん。

「そんな昔の本もお読みなのですね」

「え?」

「実は我が家にある古い文献に枝豆の事が書いてあり、今年試しに収穫してみたのです」

「そういえば……私が見た本も古かった気がします」

なんにせよ、枝豆の提案をせずに済んだのは幸運だわ。これでずんだ餅も作れ……

っ!! 作れないじゃない! お米がないもの。最近無意識に和菓子レシピを考えるようになったのって、お米が食べた過ぎる気持ちが溢れてるとか?

残念だけどお米は別の機会にまた探すとして、せっかくだから枝豆パン辺りから作ってもらおうかな。

*

「ディア、枝豆が出来上がったみたいだ」

「ふふ。楽しみですね」

さすが側妃宮。枝豆が高級レストランの一品みたい。

友人と成人後初めて行った居酒屋で食べた枝豆が、病みつきになる美味しさだったのよね……あれってどうやって作ってたんだろう? なんて懐かしい思い出に浸りながら枝豆を手に取る。

美味しい~。どうしよう、手が止まらないわ。

「っ!! 美味しいっ」

家で食べた物より美味しいと、ジェームズ様が目を見開いていらっしゃる。きっと家では塩茹でにしなかったのだろう。

みんな美味しいとパクパク食べ、一瞬でなくなってしまった。お酒なしでこれだ。絶対大人達にも好評のはずよ。

「あっ!」

「どうかした?」

にがりはどうしよう。塩は全て岩塩で海水から塩を作ってないのよね。

海に面している辺境伯領は……あらま、私達と同年代がいないじゃない。これだと学園で知り合えないし、社交界に出るまで知り合いになるのは困難ね。

「……辺境伯領に行きたい」

「ディア!?」

「あっ! いえそのっ、海が見てみたいなぁと思いまして」

「海? また急だね。うーん、視察の予定もないしなぁ」

しまった。領地に行ってなんとか知り合うきっかけを作れないか、って考えていたからついつい口に出してしまったわ。

「でもいつか連れて行ってあげるからね」

そう言ったウィル様の目が、他の誰かに連れて行ってもらわないようにって語っているように感じた。

分けてもらった大豆を手に家へと帰る。

よしっ。明日から早速豆腐作りよ! まずはにがり以外で凝固剤となるものを見つけるところからよね。

ふふふ~。成功したら今までと同じ様に製造権とか諸々買い取ってもらい、ジェームズ様の家に任せる予定。やっぱり生産地で加工もしちゃうのが一番だと思うしね。

それにウィル様を絡めるから実績になるし、正直うちも元々持っている事業があるのにメープルシロップとジャムを追加しちゃって手一杯なのよ。

きっと数年間は利益の何割かも支払われることになるだろうから……それを元に豆腐レシピを増やしていこう。

うんうん。程よく稼ぎ、完成品をいつでも購入できるのが理想よね!

なんて軽く考えていたけど……豆腐が完成しない。

豆乳とおからは出来てジェームズ様はもちろん宰相にも感謝されたし、おからクッキーを作ったりダイエット食品も作ったけどさ!

豆腐~!!

今、ものすごく『にがり 代用』で検索したい。

はぁ。言うだけ言ってみようかな。隣で豆乳スイーツを美味しそうに食べているウィル様を見つめる。

「ウィル様、海って塩辛いって本当ですか?」

「最近よく海の話題を出すね。そんなに見たい?」

「実は今読んでいる小説に海が出てくるのです」

「……ディアが読んでるのって恋愛小説だったよね?」

「そうですよ」

うん。無理があるってことは分かってるよ。百歩譲って海が出てくる話があったとしても、それが塩辛いだなんてことまで記載されている恋愛小説、まぁないよね。

「本当に塩辛いのか気になってしまって」

「そっかぁ」

強引だけどこのまま話を進めよう。

「塩味なんですよね?」

「確かにしょっぱいとか、辛いとかって本には載っているけど……塩なのかな?」

塩なの~!

「もしかしたら新しい塩の供給源になるんじゃないかなって」

「あはは。ディア、それは無理だよ」

「試したのですか?」

「だって水だよ?」

あー、なるほどね。たしかに海水は塩水であって塩そのものではないもんね。さすがに小説に塩の作り方が載っているっていうのは無理があるし、なんとか海水から塩を作ってもらうように……塩って蒸発させるだけで出来るっけ?

なんで前世の私は『海水 塩 作り方』って検索しなかったのよ!

まって! 豆腐への道のり、長すぎない?

「はぁ……」

「ディア!? そんなに海を見たかったの?」

そういう意味じゃないのよ。

「海……」

「確かに海は美しいと辺境伯から聞いたことがある。小説にも海の美しさが描かれていたんだね」

「そんな感じです」

「海は時間によって色を変えるそうだし、見てみたいよな」

えっ!?

「色が変わるのですか?」

「光のあたり具合で変わるそうだよ」

あぁ、朝日とか夕日で色が変わるってことね。ワクワクしているウィル様には申し訳ないけど、それは知ってるよぉ。

ん? 海、キレイなんじゃ……?

世界の絶景ランキングに匹敵するくらいに、美しい海な気がする!

わわわ!

「ウィル様と海を見たいです」

塩とかにがりとかどうでもよくって普通に海が見たくなった。クラウディアになってからはまだ海を見たことないし。

「うん。……兄上と相談しようかな」

「クリスハルト殿下ですか?」

「そ。視察の相談をね。俺もディアに海を見せてあげたいから」

わお! イケメン。

「ふふ。その言い方だとウィル様は海を見たことがあるような言い方になっていますよ」

「ふはっ、本当だ」

えっその顔、めっちゃカッコいいんだけど。ウィル様に見惚れていると、いつの間にか膝の上に乗せられて抱きしめられてしまった。

最近膝の上に乗せられることが増えたのよね。可愛いよりカッコいいが似合うようになっちゃったのもあって、近いとドキドキしちゃうよ。

「ディア、顔が真っ赤だよ」

「うぅ///」

指摘されたのが恥ずかしく、ウィル様の首に腕を回し顔を隠した。

脂肪よりも筋肉が増えたウィル様。ウィル様ダイエットのために色々してきたのは私なのに、ぽよぽよウィル様が完全にいなくなるのは寂しいなぁなんて両極端な事を考えてしまった。