軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37.王子様との恋愛フラグ

「没落理由は借金の返済ができなかったから、だそうです」

「ブラック侯爵に?」

「そこは知らないと言われました」

ノエルはお助けキャラだし、そこまでの設定をゲーム上で語られていなかったのかな。

「フラワー男爵が学費を支援するって話は?」

「私はフラワー男爵家の使用人となり、男爵の好意で学園に通うとのことでした」

なるほど。諦めていた学園に通わせてもらえたことに感謝し、ローズの恋を手助けしていたってところね。

「一応聞いておくわね? ノエル、男爵家の使用人に」

「なりたいわけありませんよね」

食い気味で否定されてしまった。

「そうよね。変なこと聞いちゃってごめんなさい」

ローズの知っているノエルの過去は、それくらいだったそう。

情報が少なくてノエルを見つけるのが大変だったとまた言っていたみたいだけど、その前に使用人としてノエルがいないことに疑問を抱くべきでは?

「あと言いにくいのですが……」

言葉通りすっごく言いにくそうなノエル。

聞いてみると……。

なんと! 私とウィル様がカカオを投げつけ捕まえた少年、暗殺を成功させちゃうみたい。

「それは本当なの?」

「はい」

ローズは『実行犯は捕まったけど主犯は捕まっていないの。その主犯なんだけど、サブリナの伯父さんなのよ。内緒よ』と言ったそうで。

呼び捨てかよ。せめてサブリナ 様(・) ね。

「ブラック家が取り潰しになったのって結構大きな事件だったのに、彼女は知らないのね」

「信じられないことに」

「本当に貴族なのか疑いたくなるわ」

でもこの情報のおかげで、ゲームではブラック侯爵が捕まっていないことが分かった。

「キース、デイビットに続いて狙われていたのはラインでした」

ウィル様と一緒に他2人の殿下へ報告するため、クリスハルト殿下の執務室に集まっている。

今日はナタリー様とサブリナは呼んでいないの。ブラック侯爵の話題は避けられないし、既にたくさん傷付いたサブリナを更に傷つけたくないからね。

2人には後で私から話す予定。もちろんブラック侯爵の名前は出さないわ。ラインハルト殿下が狙われていた事実と、婚約者が狙われている令嬢は、ローズにしょうもない冤罪をかけられるかもってだけ話すつもり。

クリスハルト殿下とラインハルト殿下が並んで座り、私とウィル様が対面のソファーに座っているんだけど……。

「私もあちらに」

「ディアはここね」

「ですが……」

お兄様含め側近の皆様は立っているのよ? 私ただの伯爵令嬢だし、この部屋にいるメンバーの中なら下から数えた方が早いんですが。

誰も気にしていないって顔をしているけど、めっちゃ気まずい。

「い、いじわるです」

「ふっ。いじわるされたいの?」

「違いますっ! 既にいじわるだと申しているのです」

「ん゛ん゛っ」

ニコニコ顔のクリスハルト殿下に呆れ顔のラインハルト殿下。今の咳払いはお兄様ね。

「失礼しました」

ありがとうお兄様。きっと帰ったら怒られるだろうけど、今は感謝します。

「ディアは何も悪くないよ?」

「いえ。悪いと思います」

「そう?」

あの……お願いですから私の腰に当てている手を、どけていただけないでしょうか。

おっと、引き寄せないで。

「ウィルハルト殿下、そろそろご報告を」

引き寄せられてたまるものか、とぐっと力を入れる。

「ディア、今なんて言った?」

「…………ウィル様」

どう考えたって、王太子の執務室で呼んでいい呼び方じゃないでしょ。

「相変わらず仲が良いね」

「はい」

「兄上はいいですよ。俺はもう見飽きました。教室でもこれですからね」

「っ!!」

教室では節度ある行動をして……ウィル様が近いなってことはあるけど///

「ディア可愛い」

といって抱きしめてくる。離れようとしたけど、顔の赤みが引くまで隠してあげるねって言われたので、お言葉に甘えることにした。

……あれ? ウィル様に抱きしめられているこの状況、赤みひくかな?

「もう、大丈夫です」

「まだだめ」

「その……」

「発言してもよろしいでしょうか」

お兄様?

「許可する」

「ありがとうございます。妹を私の隣に立たせてもよろしいでしょうか」

「なぜだ」

許可したのは王太子殿下だよ~。なんでウィル様が理由を聞くのよ。

「妹は殿下の婚約者ではありますが、今はまだ伯爵令嬢ですので……というのは建前で、妹の顔は私が隠しますゆえ」

お兄様~! 今は神の声に聞こえるわ! お兄様を見ると、さっさとこっちに来いと視線を送られる。

「お兄様の隣に行きます」

「ディア……」

「いい判断だよ」

クリスハルト殿下は相変わらずのニコニコ顔だけど、そろそろ報告しろってことですよね。

本当すいませんでした。

*

報告が終わり、今後について軽く話し合いほんの少しの雑談。

えっと……まだここにいるの?

私が解散の合図を出せるわけもなく、大人しく3年前に起こったことを考えていると、あることを思い出した。

雑談が始まって早々、隣に来たウィル様を見上げ……。

「そういえばこの頃からでしたよね」

「うん?」

「ウィル様が俺って言うようになったの」

「そうだったか?」

「ふふ。はい」

周りが『俺』って言うようになったことに気付いて、僕も! って変えたのよね。ま、私はずっと『僕』って言ってほしかったかもって思っちゃってたけど。

「あ、ディア笑ったな」

「ふふふ。笑ってないでーす」

「こらっ」

後ろからぎゅっと捕まえられてしまった。

「あの時のウィル様可愛かったです」

「可愛くないから」

可愛かったもん。『僕が俺っていうのは変?』って聞いてきたのが。

「……あのさ。俺達の存在忘れてるよね」

「っ!!」

そうだった! ラインハルト殿下の呆れ声で、まだ執務室だったことを思い出した。

……怖くてお兄様の方を見れないわ。

「ウィル様、離してくださいませ」

「やだ」

「ウィル様!」

うぅ。。ウィル様の力が強くて、全く抜け出せない。

「睨むなよウィル」

「まぁいいじゃないかライン。実際、2人のおかげで俺は生きてるんだから」

ゲームでは成功してしまう暗殺計画。ラインハルト殿下は自分のせいで兄が亡くなってしまったと落ち込み、また主犯である婚約者の伯父を捕らえられなかった事に苦しむそう。

攻略の鍵は、そんな苦しみを癒やすことだったんだけど……乙女ゲームなのに設定が怖いわっ! もっと別の設定あったでしょ。兄と比べられるのがコンプレックス、とかさ。

諸悪の根源であるブラック侯爵はもういない。そもそも暗殺は未遂で終わっているから、ラインハルト殿下だって苦しんでない。

自身を王にするため他の兄弟を暗殺しようとする者がいる——それは特段珍しいものでもないからね。未遂事件まで苦しんでたら、王族なんてやってられないもの。

ふぅ。実際はサブリナを悪役令嬢にすることなく、未来の義弟の恋愛フラグもしっかり折れていて、ほんっとうによかったわ。