軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34.新しい出会い*3年前

ハービー子爵夫人の姉はブラック侯爵夫人。その夫人の夫であるブラック侯爵の妹が……サブリナの母だったの。

それがなぜ少し厄介なのか。それはブラック侯爵が、クリスハルト殿下の命を狙った主犯じゃないかと容疑がかかっているから。そう、実行犯がいた孤児院はブラック侯爵領にあったのだ。

もちろん他にも理由があって容疑者になっているのだけど、どれも証拠としては不十分で捕らえることができないでいる。

「母がお茶会に呼ばれた時、既に計画していたのだろう」

「えっ、2年も前のことですよね?」

「サブリナ嬢は元々、兄上の婚約者候補として名乗りを上げていたからね」

「そうでした」

クリスハルト殿下が亡くなり、第二王子ではあるけど側妃腹のウィル様が王位継承権を放棄すれば、ラインハルト殿下が王となる。サブリナが王妃……ブラック侯爵からすれば姪が王妃となるのだ。

「側妃様がウィル様を王にするつもりがあるのか、それを確かめるためのお茶会だったのでしょうか」

「理由の1つだったと思う」

王妃様と側妃様が仲良しであることは有名だけど、少しでも側妃様が裏切る可能性があるって判断されていたら……。

「こっわっ」

想像すると恐ろしく、つい令嬢らしからぬ声を出してしまった。

「ね。怖いよね」

ウィル様、今ニヤってしたの見ましたからねっ!

今回、クリスハルト殿下の暗殺を阻止したのは側妃側の人間である私達。事件自体なかったことにするため箝口令を敷いたけど、殿下が生きている時点で失敗だと分かる犯人には関係ない。

そんな中、側妃様がタイミングよく『あんずをもう一度食したい。献上せよ』なんて言ったら、疑っていますって言っているようなもの。

なのでラインハルト殿下主催のお茶会を開いてもらい、そこに殿下とサブリナ、互いの親族や関係のある者を招待する。ただ、ずる賢い大人も、命を狙われているクリスハルト殿下も呼びたくない。

だから王立学園に入れば同級生となる者しか呼ばないという、どうせ学園に通えば関わりができるのになぜ? と、疑問に思わなくもないお茶会を開くことにしたのだ。

「本当は解決するまでディアには伯爵邸から出てほしくないんだけど」

「でも私が参加しないと怪しまれますよ」

「……風邪をひいたことにすればいい」

心配してくれるのはありがたいけど。

「ウィル様……ハービー子爵令息とあんず取引の話をする、きっかけ作りのお茶会ですよ?」

「……分かっている」

まぁ、暗殺未遂事件について何か証言をとれるかもしれない。メインの開催理由はそっちだけどね。

事件以来の王妃宮……ピリピリとした雰囲気が漂っているわ。そりゃそうよね、主犯の関係者も招待されているんだもの。

ちなみにクリスハルト殿下はナタリー様の公爵家に避難済み。

「楽しみのような、少し怖いような」

「ディア、今日は絶対僕から離れないでね」

「はい」

今日は側妃宮の使用人にお手伝いに来てもらっており、私達は側妃宮の使用人から手渡された物しか口にしない予定。

一応ね。

「サブリナ嬢には話してあるの?」

「はい。干し果物の種類を増やしたく、ハービー子爵領のあんずが気になっていると伝えてます」

お茶会が開始され、ラインハルト殿下はブラック侯爵家の縁戚にあたる伯爵令息と話しだした。殿下はこのお茶会で尻尾を掴みたいと仰っていたものね。

……サブリナは何も聞かされていないのかしら?

ウィル様と私は飲み物を手に持ち、招待客を観察しながらサブリナが声を掛けてくれるのを2人で待つ。

「誰かと話に行く?」

「いえ。このまま待ちたいです」

別の誰かと話しても言いんだけど、結果あんずの話しが出来ないままに終わったら、私的には実のないお茶会になるし。

「つまんなくない?」

「全く。ふふ。ウィル様? 私達がお茶会を2人で過ごすなんて、お手の物じゃないですか」

それに……頻繁に会う私には分からなくても、久々にウィル様を見た令嬢達には変化が手に取るように分かるのだろう。自分に自信がある令嬢達が、ウィル様に声をかけたくてウズウズしているのよ。

でも今日はあなた達の相手をする暇なんてないから、無視させてもらうわね。

なんて過ごしていると、ようやくサブリナが1人の令息を連れてやってきた。きっと彼がハービー子爵令息なのだろう。

サブリナが私達を紹介してくれ、彼の名前がノアール・ハービーだと知る。

「えっ、五男?」

「姉も2人いて、7人兄弟の末っ子です」

「そう。大家族なのね」

そりゃあ家計が苦しくもなるはずだわ。

「あの、あんずに興味があるとサブリナ様から聞いたのですが」

「そうなの。実は私、干し果物って言って——」

まずはドライフルーツの話をし、そのまま食べるだけしかなかった果物の可能性を広げたいのだと力説した。

「素晴らしいです!」

「ありがとう」

「実は本日、あんずをお持ちしました」

「本当に!?」

「はい」

控えていた使用人から受け取り、差し出された果物。

「これはっ!」

「はい。こちらがあんずでございます」

アプリコットだ! そうだった、そうだった。あんずってアプリコットじゃんね、普通に忘れてたわ。

「これって私が頂いていいの?」

「もちろんです」

やったー!! これでザッハトルテが完成する。ザッハトルテに使っているのってアプリコットジャムだったもの。いやー、ずっと引っかかってたからスッキリしたわ。

「子爵領ではあんずを含め果物は沢山できるのですが、果物だけでは飢えを凌ぐことが出来ず……また果物の廃棄量も問題でして——」

果物は多少放っておいても沢山実るのに、小麦や野菜、主食となるものは上手く育たないらしい。そっか……でも私専門家じゃないから、それを解決するなんてことは無理だよ? 土壌も関係してるのかもねってちょっと思ったくらい。

それにしても初対面の私に言うって事は、それだけ切羽詰まっているのかしら?

「果物が沢山実るのよね? 詳しい話を聞かせて」

「はいっ!」

私は果物が沢山ほしく、ハービー子爵令息は果物を沢山買ってくれる相手がほしい。

むふふ~。

「ディア……悪い顔になっているよ」

「っ! 失礼しました」

商機が見えて嬉しくなっちゃった。私、ジャムを作りたいのよね。