軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17.3人組の男爵令嬢? sideウィルハルト

「わぁ! ウィル様すっごく綺麗です! ノエルもお姫様みたいよ」

と、目の前で大はしゃぎのディア。

「……お礼を……言うべきなのでしょうか……?」

「言わなくていい」

きっと聞いてないしな。

お姫様=可愛い。と思っているディア。だから単に可愛いと言っているだけなのだが、ノエルは姫と言われて恐縮しまくっている。

そもそも綺麗も可愛いも男が言われて喜ぶ言葉じゃないのだが……今は女装に成功していると喜ぶべきなのか?

なぜ女装しているのか。それは先日変装用のドレス・ウィッグ・眼鏡が揃い、試着してほしいとディアにお願いされたからだ。

「せっかくなので、私も着替えてきます!」

そう言うと思っていたよ。

「うん。いってらっしゃい」

それにしても、例の男爵令嬢と友達になる発言には流石に驚いた。今まで何度も驚かされ、ディアの突発的な思い付きには慣れていたはずなのにな。

……俺とノエルが女装する、あまりの似合わなさにディアが計画を断念するだろうと義兄上は思ったのだろう。

甘い。

似合わなければ意地でも似合う物を見つけるのがディアだ。むしろ少し違和感が残ったとしても押し通すのがディアだ。

だから俺は、一発で女装が成功するドレスを仕立てた。

色や形、どれを選べば着痩せ効果が発揮するのか……幼い頃はそればかり考えていたんだ。その知識がここで発揮されるとはな。

「殿下、本当に決行するのでしょうか」

「ディアだからな」

「そうですか……」

この計画を誰も反対しなかったのは、あのサロンにいたほとんどが幼馴染だから。義兄上の考えも兄上が楽しんでいるだけなのも、ディア以外気付いていた。

もちろんディアを諦めさせるには、ディア自身に諦めようと思わせなければいけないことも。

すまないな、ノエル。

「ウィル様~。どうですか?」

支度を終えたディアが戻ってきたようだ。

「すごく可愛いよ」

「えへへ/// ありがとうございます」

クルッと回って見せてくれたその姿が可愛すぎる。ディアのドレスを一番地味にしたのに、可愛さは隠せなかったか。

「ウィル様の分は前髪を長めにしています。眼鏡と合わせて瞳の色を隠してくださいね!」

「分かった」

「ふふ。さすが王宮で働く侍女達ですね! お化粧技術が高いです」

ここにいる侍女達は、俺達が幼い頃から仕えてくれている者ばかり。今回の女装もディアのお願いを叶えているんだろうと、微笑ましげに見てくる。

仕立て屋に変な顔をされた時以上に辛い。

「2人に自信を付けるため、このまま街に出ましょう!」

「ま、街に……ですか……?」

「ノエル大丈夫よ? とっても可愛いから」

苦笑するしかない。

「殿下……最初から分かっていたんですか?」

「まぁな」

助けてくれとノエルが泣きそうな顔をしているが、むしろそろそろ慣れてくれ。

「私、気になっていたカフェがあるんです」

「学生街に出来た新しいカフェ?」

「はいっ!」

「じゃあそこに行ってみようか」

この姿、母上にさえ見られなければいい。見られたら確実に絵師を呼ばれ……流石に後世に残したくはないからな。

「あれ? そのカフェが気になると、ウィル様に話しましたっけ?」

「うん」

やばっ。これは影からの報告で得た情報だった。

「そうでしたっけ? ……ま、いっか。ウィル様、楽しみですねっ!」

「そうだな」

助かった……。ディアをエスコートするため、手を差し出す。

「あっ、ダメですよ。私達は今、3人組の男爵令嬢なんですから」

いつの間に男爵令嬢の設定が追加されていたんだ? 念の為にと生地の質を落としておいてよかった。

「すまない。つい癖でな」

「口調も気をつけてくださいね!」

「今は同じ爵位なんだ。ディアも敬語はなしだからな」

「ぜ、善処します」

さっき以上に泣きそうなノエル。

「でんかぁ……」

自分も敬語を使えないと気付いたのだろう。

店につき、一般席に案内される。

「——誰も怪しみませんでしたね——」

「——そうだな——」

これは女装のことではなく、上位貴族だと気付かなかったと言いたいのだろう。

「なんだか特別感があって楽しいですね」

やっぱりな。案内中から目を輝かせ、嬉しいのが手に取るように分かった。

外食する際、俺達は必ず個室に案内される。店のためにも周りの客のためにも俺達は個室を使うべきだが、楽しそうなディアが可愛いし、たまにはこういうのもいいな。

次は女装していない時に連れてこよう。

「大丈夫ですかね……?」

「心配いらないわ。ノエル、とっても可愛いわよ」

違うぞ。ノエルは変装中とはいえ、今からでも個室に移動すべきではないかと心配しているんだ。

「ノエル?」

「え?」

「ノエルよね!?」

誰かが近づく気配はしていたが、まさかノエルの知り合いだとは。もう少し化粧を……って、嘘だろ。標的の人物じゃないか。

「し、知り合い?」

「いえ。違います」

「でも名前……」

ディアもノエルも混乱しているようだ。一瞬ノエルを疑ってしまったが、この必死な様子に嘘はないだろう。

まぁいい。元々学園の外で近づく予定だったんだ。この機会を利用するしかない。