作品タイトル不明
42 ※残酷な表現があります
旦那様や護衛の騎士と、カップを取る為に出されたヤコブソンの手の傷を、しっかりと確認しました。
目の前に置かれたカップを、何の疑問も持たずに手に持つヤコブソン。
彼にはこの銀杯の意味が解らないようです。
本当に、何も勉強をしていなかったのですね。
なぜ前回の私は、こんなクズを盲目的に愛していたのでしょう。
「ちっ、たったこんだけか。ケチ臭い」
中のワインの量を見て舌打ちしてから、ヤコブソンはワインを一気に飲み干しました。
貴方は知らないようですが、そのカップには一口で飲み干せるほどしか入れないのが 仕(・) 来(・) り(・) ですからね。
最期のワインです。
よく味わってくださいね。
獣の咆哮のような声をあげながら、ヤコブソンが床を転がり回ります。
喉を掻き毟り、爪の痕が何本も何本も付き、血が滲んでいます。
これほど苦しむ毒だったのですね。
それをこのクズと馬鹿女は、まだ成人もしていなかった 前(・) 回(・) の(・) ルパートに飲ませたのです。
護衛の一人が床に落ちていた銀杯を拾い上げ、同じワインを注ぎます。
それを布に包まれているフローラの口をこじ開け、流し込みました。
本来は一人1個使う銀杯ですが、フローラは王族では無いので良いでしょう。
あぁ、今、床を転がり回っているクズも王族籍ではありませんでしたわ。
だって私の旦那様は横に座っている方ですから。
グッタリとして全然動かなかったはずのフローラが、カッと目を見開き喉を掻き毟り始めました。
ソファからずり落ち、布に包まれたまま芋虫のように動きます。
「あが!……がっ!……がほっ!」
苦しみながらも愛する者達は引かれ合うのでしょうか?
二人はお互いにぶつかり合い、最期の触れ合いを楽しんでいるようです。
この苦しみ方を見て、私に向かって「とても苦しんでいたよ」と、楽しそうにルパートの死を報告してきた二人。
冤罪で一族郎党皆殺しにしようとしたくらいですものね。
人間のわけがありませんでした。
貴方達を殺すほど憎んでいる私でも、両親に楽しく報告する事は出来ないでしょう。
私はまだ、ギリギリ人間でいるようです。
かなり長い間苦しんで、最期には目や耳、鼻や口から血を含んだ色々な物を垂れ流しながら、クズ達は絶命しました。
床に敷かれていたカーペットごと、二人は屋敷から運び出されます。
ソファの上に足まで上げて縮こまっていた前王と前王妃。
貴方達の罪は、あのクズをこの世に誕生させた事。
ちゃんとした教育をしなかった事。
前(・) 回(・) 、クズと一緒になり私達家族を処刑した事。
そして懲りもせず、今回も私達を嵌めようとした事。
悪事に加担しなければ、助かる道も有ったかもしれないのに、残念でしたね。