作品タイトル不明
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「どなたか事情がわかる方はいらっしゃいますか?」
私の言葉に、一人の女性が進み出ていらっしゃいました。
まぁ!侯爵夫人です。
確かご令嬢は昨年卒業してますが、来年ご子息が入学されるからとドレスを寄付してくださったのです。
パーティーにも参加してくださっていたのですね。
「偶然側に居りましたので、わたくしが説明いたしましょう」
場の空気がピリッと引き締まります。
「あちらの令嬢の胸元のリボンが、持っていたお皿へ入って汚れたのに気付いた先程のご令嬢が、親切に教えて差し上げたのです」
言われて見てみると、フローラの胸元のリボンは片側だけ茶色く変色しておりますわね。
「そしたら ア(・) レ(・) が突然怒りだし、持っていた皿をご令嬢に投げつけたのです」
侯爵夫人は ア(・) レ(・) と言いながら、フローラを扇子で指しました。
「全然親切なんかじゃなかったわよ!」
フローラが怒鳴りますが、相手が侯爵夫人だと判っていないのでしょうか?
さすがに公爵家、侯爵家の顔くらいは判りますわよね?
「何が「お召し物に新しい柄が増えておりますわよ」よ!厭味ったらしいわね!」
啞然としてしまいました。
おそらく周りにいる全ての方が同じ気持ちでしょう。
貴族は遠回しに物を言う事が多いです。
相手の恥になるような事を、特に公の場ではハッキリとは言わないものです。
フローラは皆様の前で「リボンに食べ物のソースが付いてますよ」と言われたかったのでしょうか?
それは食い意地が張ってみっともないですね、と周りには思われるのですが。
「貴女には、貴族の親切は不要のようですわね」
侯爵夫人の横に、伯爵夫人が進み出てきました。
お二人が並ぶと壮観です。社交界を牛耳って……牽引してくださってるのは、このお二人なのです。
「では、望み通りにハッキリ言って差し上げますわ。貴女、ドレスを作られた時より太ったのね?お腹の横の縫い目がほつれているわよ、みっともないわね」
皆の視線がフローラのドレスの横の縫製へと集中しました。
私から見える側は、縫い目はほつれていませんが、布が引っ張られて引き攣れています。
もう少し力が加わったら、布の方が破れそうです。
安定期に入って、子供が成長してきたのかもしれませんわね。
妊婦の自覚がないから、体の線があらわになるデザインにしてしまったのでしょう。
このような状況なのに、王太子はフローラの横で立ち竦んでおります。
フローラを止める事も、場を収める事も、何もしないのです。
ある意味、フローラのお披露目は成功と言えますわね。
王太子の 寵愛(ちょうあい) は、間違いなく会場に居た全員が知る事になりましたから。
フローラの非常識さが少しでも露見すれば良いとは思ってましたが、王太子の無能さも露呈してしまいましたわ。