軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34.廃棄処分の人魚は【新品】になりましたが、主様が尊すぎるので、歌で理性を溶かして私だけのモノに作り変えてもいいですか?【Side:真魚美】

【Side:真魚美】

私の名前は 真魚美(まなみ) 。 人魚(セイレーン) の末裔です。

元々、私は海の底で、仲間達と一緒に暮らしていました。

……今は昔、ある日のこと。

海から顔を出した岩場に座り、私が歌を歌っていると……一人の、船乗りの男性が漂流していることに気づきました。

船が難破したのでしょう。

幼かった私は、彼が可哀想で、つい助けてしまいました。

瀕死の彼を元気づけるため、セイレーンの歌で彼を励ましたのです。

目を覚ました彼は、私の手を握り言いました。

「君の歌声は世界一だ。君の魂に惚れたんだ……!」

そう、熱烈なプロポーズをしてきたのです。

当時はまだ、恋を知らない乙女でしたから、戸惑いました。

でもあまりに毎日のように、熱烈に求婚してくるものだから……私は彼からの求愛を受け入れることにしました。

彼の仲間が、彼を助けに来るまでの間、私たちは恋人として過ごしました。

幸せな日々……だったような気がします。

しかし、そんな幸せは長く続きませんでした。

ある日目覚めると、私は醜い半魚人の姿に変えられていたのです。

本当に突然のことで、困惑しました。

セイレーンの族長に相談したところ、海に住む悪い魔女の呪いではないかとのことでした。

急いで魔女のもとを訪ねると、彼女はあっけらかんと、私に呪いをかけたことを明かしました。

どうやら、私の恋人に片思いしていた同族のセイレーンが、嫉妬に狂って依頼したとのことでした。

……元に戻して欲しいと頼んでも、無理だと突っぱねられました。

いくら頼んでも、呪いを解いてくれませんでした……。

私はどうにもならず、愛する彼に助けを求めました。

けれど、彼は私を見るなりこう言ったのです。

「うわぁ……! なんだこの化け物は! 汚らわしい! 近寄るな!」

彼は私を蹴り飛ばしました。何度も……何度も……。

そこで私は気づいたのです。

彼は私の歌声でも魂でもなく、ただ「美しいセイレーンの外見」だけを愛していたのだと。

私は、泣きました。

呪いで醜い姿にされ、信じていた人に裏切られ、心も体もボロボロになっていました。

そして嘆き、悲しみ……泣き続けた結果、喉は潰れ、自慢の歌声すら失いました。

私の持つ全てを失った私は、「ゴミ」として、奴隷商人に売り払われました……。

そこからのことは、あまり……思い出したくはありません。

醜い魚人だと、誰もが私を罵り、殴りつけてきました。

みんな、私を見た目だけで判断する。

声も見た目も失ったゴミには……価値がない。

こんな臭い魚人なんて、誰も……愛さない。

そう、思っていたのに。

『……ゴミじゃあない。人に、ゴミとか、二度と言うな!』

あの時。

あの方――リオンちゃんだけは、違いました。

最も醜く、薄汚れていた私を見て、本気で怒ってくれた。

私の価値を、認めてくれた。

そして、【 商品修繕(リペア) 】。

リオンちゃんの手から流れる、温かくて、強引で、とろけるような魔力。

それが私の全身を駆け巡り、内側からぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、作り変えられていく感覚。

その瞬間……私は、理解したのです。

この方こそ、私の求めていた……『つがい』様なのだと。

「 真魚美(まなみ) 、進路はどう?」

「……っ! は、はいっ。順調……だよ、リオンちゃん」

操舵輪を握る私の隣に、リオンちゃんがやってきます。

8歳の、小さな子ども。

でも、その体には底知れない魔力と、海よりも深い優しさが詰まっています。

……だめ。

直視しちゃだめ。

見つめていると……また、あの「本能」が疼き出してしまう。

セイレーンは、歌で異性を惑わす魔物です。

気に入った人を見つけたら、その理性を歌で溶かし、何も考えられない操り人形にして海へ引きずり込み……子供を作るの。

それが、私たちの種族としての「愛し方」。……リオンちゃんって男の子かな、女の子かな。わかりにくいけど……でもいいんだ。

女の子同士でも、セイレーンには、子供を作る方法があるから。大丈夫。

(リオンちゃん……いい匂い……)

潮風に混じって、この子の甘い匂いが鼻腔をくすぐります。

あぁ……今すぐ、この子を抱きしめたい。

あの小さな耳元で、【服従の歌】を囁きたい。

そうして、トロンとした目になったリオンちゃんを船底の部屋に連れ込んで、誰にも渡さないように鍵をかけて……。

毎日、毎日、私の歌だけを聞かせて。

私のご飯だけを食べさせて。

私のことしか考えられないようにして。

そうして、私の卵を、お腹いっぱいに……。

「真魚美? 顔が赤いけど、大丈夫?」

リオンちゃんが心配そうに、私の額に手を伸ばしてきます。

ひゃぅっ。

そ、その手で触られたら……!

また、リペアされた時の、あの熱い感覚を思い出して……!

「だ、だいじょうぶ……! ちょっと、日差しが強い……だけ」

私は必死に、スカートの裾を握りしめて耐えます。

だめ。

そんなことをしたら、リオンちゃんに嫌われてしまう。

前の男のように、「化け物」を見る目で見られてしまうかもしれない。

それだけは、絶対に嫌。

私は、「清楚で役に立つお姉さん」でいなきゃいけないの。

そうすれば、リオンちゃんはずっと傍に置いてくれる。

頭を撫でてくれる。

(……でも)

私はチラリと、甲板にいる他の女性陣を見ます。

美しい女騎士のキリカさん。

妖艶な美女のグーラさん。

高貴な雰囲気のアナさん。

みんな、リオンちゃんを狙っている強力なライバル。

(……もし、リオンちゃんが他の誰かのものになりそうになったら)

その時は――理性なんて捨ててしまおう。

全力の【魅了の歌】で、リオンちゃんの心をハッキングして、私以外を愛せないように脳を作り変えてしまえばいい。

「……えへへ♡」

「真魚美? なんか今、すごい含み笑いしなかった?」

「ううん? ……リオンちゃんの役に立てて、嬉しいなーって……思っただけ♡」

私は精一杯の「良い子」の笑顔を作る。

大丈夫。

今はまだ、我慢できる。

だって、この船の舵を握っているのは私。

進路を決めるのも私。

いつか、誰もいない無人島に船を漂着させることだって……私にはできるんだから。

「面舵いっぱーい♡」

私は愛しいご主人様を乗せて、今日も海を往くのです。