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作品タイトル不明

孫次郎の婚姻③:『婚姻の儀』

皇女様をお迎えする時は『束帯』を身につけている。

その後、皇女様は牛車から輿へ乗り換えられる。

『近衛邸』(婿サイド)でも(嫁サイドも同様)門火を焚き、輿が門に入るときに、「請取渡し」の儀(貝桶渡しの儀も含む)が行われる。

ついで「輿寄」の儀式があり、それがすむと花嫁は輿から出て祝言の間(仮住まいの新居)に進む。

祝言の間は、家の中(ここでは仮住まいの新居)で最も奥の庭に面した所で、嫁は床の上座に座る。

次に婿が座につくと、待上臈(大臣の女)は祝儀の言葉をのべて両人を合わす。

まず最初の祝儀は、「式三献」と呼ぶ酒式から始められる。(令和でいう『三三九度』)

この時各人に御膳が三つずつ置かれ、そこに盃が三つ添えられている。

女房(貴人の家に仕える女)三人が出て、嫁より盃を始め、婿、待上臈と三人が三度ずつつぐのである。

式三献のあと、初献、雑煮が出る。

これは夫婦だけの宴で、父母、兄弟は立ち会わない。

(近衛邸本家の方で祝いの宴を開くのだとか)

こうして祝言が終了すると、夫婦は『白い衣装』に着替えていよいよ床入となる

さて「色直し」の衣裳は婿の方から土産に出されるもので、二日目の夜に赤や青の衣裳を着ることになるが、それまでは男女とも白の衣裳を着る。

そして嫁は色直しがすんだあとで、初めて舅、姑と対面する。『御簾入り』を含めて三日間。

以上が『婚姻の儀』の流れなのだとか。

その後『阿波国』へと下向するため、その前に一度、夫婦で主上(婿にとっては舅)へご挨拶に上がることになっている。

ちなみにこの時代の婚姻は夜に行われる。

一連の流れの説明を受けて、かつて娘のために用意した『お雛様』を思い出した。

「あかりをつけましょ、ぼんぼりに」だよねえ。三人の待上臈って三人官女だろうし。

そうこうしているうちに『前触れ』が来たので、『皇女』様をお迎えするべく身を正し、門前へ。

門前だけではなく『内裏』から『近衛邸』へと続く道が明るく篝火で明るく照らされている。

その道を『皇女』様御一行と思われる牛舎の集団がやってきた。

一際豪奢な唐庇の青い糸毛車。続くのは網代車の車輪をとって 轅(ながえ) をつけた形のもので 網代輿(あじろごし) という輿。青竹を薄く削って編んだ編代の屋形で、黒塗りの押縁(おしぶち:材料の端部がずれたり、はねたりしないように押さえる細長い部材)で留め、この上に色を塗って模様を描いた輿。その後ろに庇なき糸毛車三台。 檳榔毛車(びろうげのくるま) 六台、 網代車(あじろくるま) 二台。童、下仕えが八人ずつ付き従っている。

これで終わり? と思っていると少し間隔を置いて 後方から牛車が延々と連なっていた。

あの集団は? と問う前に義父である稙家様がぽそりと小さく呟いた。

「あれは宴の客じゃ。わしらが相手をする」