作品タイトル不明
第487話 スイカを割らせまいとする意志が強すぎる
村に四度目となる夏がやってきた。
村があるこの荒野は、冬は寒いのに夏は暑い。
この村ができるまで人が住んでいなかっただけあって、なかなか過酷な環境だ。
でも室内に限っては非常に過ごしやすい。
というのも、ギフトで作った施設内はすべて、快適な温度と湿度に保たれているためだ。
それでも外は暑いので、一年の中で最もプール利用が増える時期だった。
室内で温水だから年中利用できるんだけどね。
「水着コンテストでは酷い目に遭ったぜ……しかもよく考えたらプールに来れば、水着女性なんていくらでも見放題だったんだよなぁ……無意味な企画をしちまった……」
先日の一件で項垂れつつも、毎日のようにプールに来ては、水着の女性たちを舐めるような目で見ているのはマンタさんだ。
……迷惑行為として牢屋に放り込もうかな?
ちなみにあの水着コンテストがきっかけで、何組かのカップルが誕生したとかしないとか。
「それにしても、コンテストでペアを組んだあいつ……なかなか良いやつだったな……もしあいつが女だったら……」
マンタさんが何やらブツブツ呟いているけど、聞かなかったことにしよう。
この村では夏になると、いくつかのイベントが行われる。
その一つがスイカ割り大会だ。
目隠しした状態でスイカを割るという遊び、なのだけど、今や競技と化し、いかにカッコよく奇麗にスイカを割ることができるのかを村人たちが競い合っていた。
「見てくれ、村長! 今年のスイカは今までとは一味も二味も違うぜ!」
競技に使うスイカを持ってきてくれたのは、『達人農家』というギフトを持つテオールだ。
そのスイカを受け取った僕は驚く。
「重たっ!?」
「だろう? その大きさでなんと二十キロもあるんだぜ」
しかも物凄く硬い。
「そう簡単には割れないように、極限まで硬さを追求したんだ。俺も試しに包丁で切ってみようとしたが、包丁の方がダメになってしまった」
テオールはさらに「秘密はそれだけじゃないぜ」と言って、
「表面の滑らかさに気づいたか?」
「言われてみたらツルツルだね」
「ああ。スイカに対して真っすぐ力が入らないと、簡単に滑って逃げちまうって仕組みだ」
「スイカを割らせまいとする意志が強すぎる!?」
テオールは拳を握り締めて叫んだ。
「だってよ! どいつもこいつも、当たり前のようにスイカを割り過ぎなんだよ! 目隠ししてるってのに、離れた場所からでも余裕で割っていくし! 俺は思ったんだ! そう簡単には割ることができないスイカを作って、みんなの鼻を明かしてやろうってな!」
いつもみんながあまりにも簡単にスイカを割ってしまうせいで、生産者として対抗心を燃やした結果、こんなスイカを作ってしまったみたいだ。
「ちなみに味もちゃんと美味しいぜ」
「そこは農家として妥協できないのね……」
実際このスイカによって、スイカ割りの難度が大幅に上がった。
「くそっ、確実に叩いたはずなのに全然割れてねぇ!」
「いてええええええっ!? 手があああああっ!」
「魔法も効かないなんて……」
村のスイカ割り自慢たちが、この最強のスイカを前に悉く敗れ去っていく。
その様子を見ながら、テオールは嬉しそうに勝ち誇る。
「ははははっ! やった! 誰にも割ることのできないスイカを追求したかいがあったぜ!」
スイカ割りの趣旨が変わってる気が……。
「割れないスイカ? ふふん、面白いじゃない」
しかしそこへ現れたのは、過去にこのスイカ割り協議での優勝経験もあるセレンだ。
目隠しした状態で二本の剣を抜く。
「い、いくらセレンでも、このスイカは割れないはず……」
テオールが緊張の面持ちで見守る中、セレンが地面を蹴った。
見えていないはずなのに一直線にスイカへと向かっていく。
セレン曰く、気配でスイカの位置が分かるらしい。
ただ、今回のスイカは表面がツルツルしていて、刃が完璧な角度で入らない限り斬ることができないはずだ。
「そこよっ!」
スパスパンッ!
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」
大歓声が上がった。
ここまで誰一人として割ることができなかった最強スイカが、一瞬にして食べやすい扇形に切り分けられたのだ。
「ふふん、どうかしら」
「そ、そんなっ……」
テオールは愕然としてその場に膝をつく。
だけど成功者はセレンだけでは終わらなかった。
続いて出てきたゴリちゃんが手刀であっさりスイカを割ってしまうと、フィリアさんは一キロ離れた場所から矢を何本も放ってスイカを真っ二つに割り、セリウスくんは空からダイブしながら豪快にスイカを両断した。
「拙者の剣の腕、見せてやるでござる!」
自信満々だったアカネさんは、スイカじゃなくて近くにいたマンタさんに斬りかかって失格になったものの、成功者は十人以上も出た。
「くっ……だが来年こそはっ……もっと硬さを追求して、絶対に誰にも割れないスイカを作ってみせるぞ……っ!」
悔しそうに宣言するテオール。
そこで何かを思いついたように、
「はっ? 自走して逃げ回れるようなスイカにすればいいのでは……っ!?」
それはもうスイカじゃないと思う。