作品タイトル不明
第485話 こちらはゼロです
マンタさんを初めとする村の男たちが、水着コンテストの開催に向けて動き出した。
「水着はこっちで用意しよう! 布面積は可能な限り少ない方がいい!」
「全方位からしっかり審査できるように、透明な板の上に立ってもらうのはどうであろう? つまり真下からじっくり拝むことが可能になる……じゅるり」
「素晴らしいアイデアだ。お前さん、天才か?」
「ぜひオレに審査員をやらせてくれ!」
「俺も俺も!」
「『神絵師』のギフトを持つヤスタ殿に、当日の様子を絵として残してもらうとしよう」
「おい、ここにも天才がいたぞ」
「それを本にして売りに出せば、バカ売れ間違いなしだな!」
「一部の女性には、ぜひこっちから参加をお願いしたいくらいだ。何かしらの参加報酬を出してもよいかもしれん」
「事前の予備選考は必須だろう! ネマばあさんなんかに出場されたら最悪だからな!」
「なるほど。それなら見目に優れた女性の水着姿ばかりを拝むことができるというわけだ!」
ネマおばあちゃんに謝った方が良いと思う。
まぁおばあちゃんの水着姿なんて確かに見たくないけど……。
「むしろ女性の質によって差をつけるのはどうだ? 参加費を払ってもらう女性、タダで構わない女性、こっちから報酬を出す女性、という感じで」
うーん、まだ議論段階だから色んな意見が出るのは当然だけど、女性たちが聞いたら激怒しそうなことばかりだなぁ。
……とまぁ、そんな感じで喧々諤々と話し合い、やがて大々的に開催の告知を行った。
村の各所にある掲示板にポスターを張り出し、大量のビラを刷って配り、さらに街頭でも呼び掛けて。
「さぁて、どれくらいの参加者希望があったかな!」
応募申込書をウキウキ気分で確認する、企画立案者のマンタさん。
「……ん? おかしいな? 一枚しかないぞ?」
担当者が項垂れながら告げた。
「すいません……応募が一人だけでした……」
「な、なんだってえええええええええええええええっ!?」
マンタさんは絶叫する。
「どういうことだ!? ビューティーコンテストには百五十人くらい参加してたはずだろ!? それが一人!?」
さらにその唯一の応募申込書を確認したマンタさんは、再び絶叫した。
「ゴリティアナじゃねえかああああああああああああああああああっ!」
どうやらゴリちゃんが申し込んでいたらしい。
「ちゃんと女性限定って書いてただろうがっ!」
「ゴリちゃんは女性だから間違ってないでしょ?」
「あれはどこからどう見ても男っ……いや、何ならもはや漢という第三の性別だあああああああああああっ!」
マンタさんは目を血走らせながら、
「くっ……だがこれはまだ一般募集枠が全滅しただけに過ぎない! 俺たちには、村の美少女美女に直接参加を求めた特別枠がある! 特別枠の女性たちの水着姿を拝むことができれば十分だ! それで、特別枠の方はどうなんだっ!?」
「こちらはゼロです」
「ゼロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
マンタさんは地面に両手両膝をつく。
きっとマンタさんを初めとするコンテスト運営スタッフたちの下心が、村の女性たちに見抜かれてしまっているのだろう。
「な、なぜだ……参加するだけで、生理用品一年分を貰えるというのに……っ!」
いや報酬も普通に気持ち悪い……。
「馬鹿な……これでは夢の水着コンテストが開催できぬ……」
「この機会に儂の嫁も探そうと思っておったのだが……」
「どうすればよいでござる……」
打ちひしがれる男たち。
と、そのときだった。
「ふふ、困っているようね!」
「「「っ!?」」」
現れたのは女性ばかりの集団だった。
全部で十五人くらい。年齢はかなりバラバラで、下は十代半ばくらい、上は五十代だろうか。
先ほどの言葉は、集団の先頭に立つ女性が発したものだ。
彼女は僕に気づいて、
「あら、ルーク村長。もしかして村長もこの運営に?」
「いえ、違います、アグネスさん。僕は念のため暴走しないか監視してただけです。見ての通り暴走してますけど」
彼女はアグネスさん。
実はこの村の最初期からの村人の一人で、『剣技』のギフトを持つバルラットの奥さんだ。
確か三十歳くらいのはずだけど、昨年、三人目のお子さんが生まれたとは思えないくらい若く見える。
「ふふ、それはそうよね。ルーク村長がこんな頭の悪い企画を考えるはずないもの」
「頭が悪いって、それは俺のことか!?」
マンタさんが抗議しているけど、どう考えても他にいないだろう。
なお、アグネスさんの他にも、五人組の冒険者パーティ『婦人会』のメンバーである『大剣技』ギフト持ちのバーバラさんや、同メンバーである『盾技』のギフトを持つハンナさんなんかの姿もあった。
割とご婦人が多い印象だ。
「水着コンテストのポスターやチラシを見たけれど、正直ってまったくダメだわ。なんたって、女性の気持ちをこれっぽちも理解してないんだもの。運営の顔ぶれを見なくても、モテないチー牛ばかりが集まったんだなって分かってしまったわ」
アグネスさんは、マンタさんを初めとする男たちを厳しく断罪した。
「ぐはっ……」
「こ、これは手厳しいのう……」
「……拙僧まだまだ精進が足りぬようである」
マンタさんたちは大ダメージを受けている。
「というわけで、この水着コンテスト、私たちに任せるといいわ!」
「「「え?」」」
唖然とするマンタさんたちを余所に、アグネスさんは自信満々に言うのだった。
「女性の気持ちが分かる私たちなら、今からでもこのコンテストを成功に導くことができるわ!」