軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第484話 樽が必要だな、樽が

塔を無事、最上階まで攻略した僕たちは、瞬間移動で村に戻ってきた。

もちろんライカさんを、我が家の居候の部屋に連れていく。

「よお、ライカ! テメェも復活したんだな! だが聞いて驚け! この時代、確かに魔法は復活したみてぇだが、なんとこの村の連中がすでに討伐しちまったらしいぜ! オレたちが封印される必要なんてなかったってことだ! ぎゃははははっ! マジで笑っちまうよな!」

第一居候のミランダさんが、相変わらず昼間から酒のニオイをぷんぷんさせながら、ライカさんの姿を見るなりお腹を抱えて笑い転げた。

「笑っている場合ではない! てっきりまた魔王軍と血沸き肉躍る戦いができると思って、封印を受け入れたのだ! これでは話が違う!」

それに憤慨するライカさん。

「相変わらずですわねぇ、ライカはぁ! そ~んなに戦いたいのなら、わたくしが相手して差し上げますわよぉ! ただし、やきゅうけんで! や~きゅ~う~、するな~ら~、こういう具合にしやしゃんせ~♪ アウト、セーフ、よよいのよい! うふふっ、あひゃひゃひゃひゃっ!」

第二居候のエミリナさんも随分と飲んでいるみたいだ。

ていうか、何でこの世界にもこの宴会芸が!?

「……酔い過ぎだろう、エミリナ」

ライカさんは深々と溜息を吐く。

やっぱりミランダさんたちの仲間だったみたいだけど、幸いこの居候二人と違って、昼間から部屋に籠って酒ばかり飲むようなダメ人間ではなさそうだ。

戦うのが好きみたいだし、そっちの方面で村に貢献してくれるかもしれない。

と期待していると、

「こうなったら、私も飲むしかないな! 今日はやけ酒だ!」

「やっぱり飲むんか~~~~い!」

思わず全力で突っ込んでしまう僕を余所に、ライカさんはその辺に置かれていた酒瓶を無造作に掴むと、そのままラッパ飲みし始めてしまう。

「ごくごくごくごく……」

「えええええっ!? さすがにその量の一気飲みは危険でしょ!?」

僕の心配をよそに、ライカさんは一瞬で飲み干してしまった。

「ぷはああああああああああっ! おいおいおい、なんて美味い酒だ!? 長い間寝ていて久しぶりの酒だからかもしれないが、こんなに美味いのは初めて飲んだぞ!」

「そうなんだよ! この村の酒はマジでうめぇんだ! オレが昼間っから浴びるように酒を飲んでるのも、この村の酒が美味すぎるのが悪いと言っても過言じゃねぇ! ぐびぐびっ」

どう考えても過言だし、こんなに酷い責任転嫁は初めて聞いたよ。

「しかも、色んな種類のお酒があって、まったく飽きることなく飲めてしまいますの。わたくしもすっかり虜ですわぁ……ぐびぐびっ」

この二人、完全に依存症だよね……。

「ごくごくごくごくっ……む? もうないのか? おかわり」

「って、ライカさんそれ何本目!?」

「まだ五本だ。この程度では酔えない。樽が必要だな、樽が」

そんなミランダさんたちを遥かに上回る速さで、ライカさんが次々と瓶を開けていく。

まさか樽から直接飲むつもり……?

「言っておくが、こいつはオレたちの中で一番の大酒飲みだぜ?」

「そうそう、ライカにかかれば、お酒なんてまるで水ですわぁ」

「マジですか……」

こうしてうちに三人目の飲んだくれが加わったのだった。

……この人たち、こんなんでよく魔王軍と戦えたよね?

「そうだ! 水着コンテストをやろう!」

唐突にそう宣言したのは、毎度お騒がせのマンタさんだった。

マンタさんは、かつてこの村の南にあったマオ村の村長マックさんの息子で、年齢は三十代半ば。

フィアさんの結婚相手を決める荒野縦断レースでズルをしたり、村議会選挙に立候補しるも不正行為で落選したりと、最近では〝歩く迷惑図鑑〟と呼ばれている。

「そうすれば、合法的にうちの村の美人どころの水着姿を拝むことができるっ! さすが俺! なんて賢いんだ!」

本人はやる気満々だけれど、もちろんそんな下心満々の企画になんて、男性陣ですら誰も乗ってくるとは思えない。

「なんと素晴らしいアイデアであろう。村議会の議員として全面協力しよう」

「って、ガイさん!?」

いたよ、下心を隠そうともしないエロ坊主が。

ガイさんは東方のキョウ国出身の僧侶で、本来なら宗教的に煩悩はご法度なのだけれど、残念ながら煩悩まみれで宗派から破門になっている。

今も無類の女好きで、夜な夜な娼館に通い詰めているとか。

「これで村の議員だからなぁ」

「なに、水着コンテスト? はっはっは、それは最高の企画だ! 儂にできることがあれば何でも力を貸そう!」

「……ここにも煩悩まみれの男がいた」

マリベル女王の護衛隊長であるガンザスさんだ。

もう初老のはずなのに、精力的にお嫁さんを探しているなと思っていたけれど、まだまだ若い人に負けない性欲の持ち主のようだ。

「夜の方も『鉄人』であるからの! はっはっは!」

「聞いてないです」

賛同者はガンザスさんだけじゃなかった。

「では拙者も」

「え、ゴンくんもそういうキャラなの?」

アカネさんの弟のゴンくんは、ただの腹黒キャラではなく、むっつりでもあったらしい。

「オレも」

「俺も」

「おいらも」

「我も」

「協力するぜ!」

さらに次々と賛同者が現れ、協力を買ってでる。

……そうだった。

本来なら落選間違いなしのガイさんが当選するということは、それだけ煩悩に囚われた男性陣の組織票が入ったということ。

「やったぜ! これだけいれば、誰かが良い感じに会場を押さえたりとか告知したりとか諸々やってくれそうだ!」

マンタさんが喜んでいる。

言い出しっぺなのになんて他力本願……。

こうしてマンタさん考案の水着コンテストが、開催に向けて動き出したのだった。

「え? 僕はもちろん手伝わないよ?」