軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第476話 勝てないけど負けないって

「おい、村長! 教えてくれ! あんたの親父はどこに行ったんだ!?」

「え? チョレギュさん、どうしたの、急に?」

モリルモアさんが既婚者だと知り、魔大陸から村に戻ってきた万年婚活アマゾネスのチョレギュさんが、なぜか急に父上のことを聞いてきた。

「モリルモアがダメだったからな! 次はあんたの親父を狙おうと思ってよ! モリルモアには敵わなかったけど、あたいの旦那になるに相応しい強さだ!」

「いや、僕の父親なんだけど? モリルモアさんと同じ既婚者だよ?」

「あんたの親父はお尋ね者だろ! とっくに破婚してるはずだ!」

「まぁ、そうだけど……」

犯罪者のバツイチと結婚したがる人、初めて会ったかもしれない。

「父上はもう三十代後半だよ?」

チョレギュさんはまだ十代のはずだ。

他のアマゾネスたちがゴールインしてしまったから焦っているのだろうけど、三十代のお尋ね者バツイチを狙わないといけないほど、まだ必死になるような年齢じゃないと思う。

「そのくらいなら問題ないぜ! むしろあたいはちょっと歳がいってる方が好きだったりするからな!」

「そ、そう……」

「ちゃんと子供を作れるなら十分だぜ、お兄ちゃん!」

「子供ができる前提で呼ばないで!?」

あの父上とアマゾネスの間で生まれてくる子供とか、想像しただけで恐ろしい……。

「生憎だけど、父上がどこにいるかは分からないんだ」

モリルモアさんが正気に戻った後、いつの間にか四将たちと共に姿を消してしまったのだ。

実は一度この村を訪ねてきた際にこっそり村人登録し、どこにいるのか分かるようにしておいたのだけれど、どうやら村の領域内にいないようで、居場所不明なのだ。

僕の村はすでにほぼ大陸全体に及んでいるので、まだ範囲外である魔大陸に留まっているのかもしれない。

ちなみにセルティア王国は、国家転覆を企てた父上を大罪人として指名手配しているけど、それは恐らく表向きの話。

あの父上たちを捕まえるのは不可能に近いと理解し、実質的にはすでに諦めているだろう。

「くそ、使えねぇな!」

「えええ……」

「あんたの弟は、あの槍使い女ががっちりガードしてやがるしよ……」

「ラウルも狙ってたんだ……」

びっくりするくらい節操がない。

正直、強ささえあれば誰でもいいのだろう。それがアマゾネスの特性だと言えばそうなんだけど。

「ああああっ! どっかに強ぇ男はいねぇのかよおおおおっ!!」

頭を抱えて絶叫するチョレギュさん。

と、そこへ。

「ルーク、お邪魔するよ! って、もしかして来客中だった?」

ダイモン族のモンモルが遊びに来てくれた。

低身長コンプレックスを持つ者同士で意気投合したこともあり、仲良くしている。

……平均身長の低いところに来たことでコンプレックスが解消されたのか、毎日すごく生き生きしているけど。

「男だぁっ!」

「うわっ、何だっ!?」

婚活バーサーカーモード状態で目を血走らせるチョレギュさんのターゲットにされ、モンモルが後ずさる。

「しかもダイモン族の男だぁぁぁっ! にしては背が低くて弱そうだが……」

「どうせおいらはダイモン族としてはチビだよ!」

「まぁいい! 強けりゃなんでも構わねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「ひっ!?」

「モンモル、逃げて!」

モンモルに躍りかかるチョレギュさん。

本来は屈強なダイモン族だけど、モンモルは例外だ。

アマゾネスのチョレギュさんと戦ったら、ボコボコにされてしまうだろう。体格だって長身のチョレギュさんの方がいいくらいだ。

「男おおおおおおおおおおおっ!」

「っと」

「~~~~っ?」

迫りくるチョレギュさんを、モンモルは軽い動作で受け流した。

勢い余って地面にひっくり返り、何度か床を転がって壁に激突する。

「あ、危なかった……な、何なんだ、この危ない女は……?」

「彼女は婚活モンスターなんだ! 気を付けて、こんなことじゃへこたれないから!」

「婚活モンスター……?」

「やるじゃねぇかああああああっ!! 男男男男男おおおおおおおっ!!」

再びモンモルに襲い掛かるチョレギュさん。

ていうかここ、僕の家なんだけど……せめて訓練場とかでやってよね……。

「っとと」

「~~~~っ!?」

チョレギュさんが繰り出した回し蹴りを、モンモルはその威力に逆らわないよう自らも回転しながら受けると、そのままリビングの端まで放り投げた。

「男男男男男男男男男おおおおおおおおおおおおっ!!」

「よっと」

「~~~~っ!?」

三度チョレギュさんが躍りかかったけど、またしても気づいたらモンモルによって放り投げられていた。

「ていうか、モンモル、チョレギュさんの攻撃を何でそんなに簡単に受け流せるの!?」

「いや、おいら、もっとデカくて強い連中に揉まれて育ってきたんだぞ? せめて上手く力を殺したり受け流したりできないと、簡単に怪我をしてしまうだろ?」

どうやらそれで、この合気道のような高度な技術が身に付いたらしい。

「残念ながらできるのは受けだけなんだ。おいらの腕力じゃ攻撃しても効かないし。だから今まで喧嘩で一度も勝てたことがない。まぁ、負けることもないけど」

「十分すごいよ!? 勝てないけど負けないって、どこかの主人公みたいじゃん!」

「そ、そうかな……?」

ぜひ僕に一度その技術を教えてもらいたいところだ。

一方、感動する僕とは裏腹に、チョレギュさんは絶叫した。

「強いのか弱いのか分かんねぇ男はやめろよおおおおおおおっ!? 判断に困るじゃねぇかあああああああああああっ!?」