軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第474話 お化け屋敷なんで

「クエックエックエッ! ヤア、久しぶりだねぇ!」

「あ、ゴイル族の、クエンさん。お久しぶりです」

空から舞い降りてきたのは、ゴイル族の族長であるクエンさんだった。

和平会談のときに会っているのでよく覚えている。

なにせ、その羽毛が派手派手しい極彩色なのだ。

実はゴイル族の男性は、クジャクのように派手になればなるほど異性に好かれるのだとか。

なので大半が頑張って染めているらしい。

ただ、クエンさんの場合はどうやら完全に天然のものらしく、ゴイル族においては美の極致とまで言われているそうだ。

そしてゴイル族が派手なのは羽毛だけではない。

ファッションも派手さを追求するようで、クエンさんが身に着けている衣服もすごく派手だった。

正直、目がチカチカする。

「キミは相変わらず地味な格好だねぇ! そんなことじゃあ、女性にモテないだろう?」

「そ、そうですか」

「そうだ! このボクが美しく着飾ってあげようじゃないか! もちろんその地味な色の髪も肌も染めた方がいい! ボクの手にかかれば、今日からキミもプレイボーイさ!」

「せっかくですけど、遠慮しておきます」

ゴイル族の感覚で派手にされたら堪ったものじゃない。

「そうかい、それは残念だねぇ! キミは意外と磨けば光るタイプだと思ったんだけれど! そうそう、染めると言えば、キミが作ってくれたあの遊園地! なかなか悪くない色合いだと思うんだ!」

「あ、そうなんですね」

遊園地なので、基本的にはカラフルな色合いにしてあるのだけど、それがゴイル族の好みに合致しているという。

「ただ、もっともっと派手にしてくれてもいいと思うんだよねぇ! そうしたらボクたちゴイル族の間でも話題になって、この街にたくさん訪れるようになると思うよ!」

「なるほど……」

先ほどの僕への余計なお節介とは違って、こちらはなかなかありがたい意見だった。

現状、ゴイル族の観光客があまり多くないと思っていたけれど、色を派手にするだけで増えるというのならすごく簡単だ。

施設の色は、スキルを使えば一瞬で変えることができるしね。

というわけで、クエンさんのアドバイスも貰いつつ、遊園地の配色をもっと鮮やかなものに変えていった。

「いいねいいねぇ! これは本当に素晴らしいよ! 見ているだけでテンションが上がってしまう! これは間違いなく同胞たちが殺到するだろうよ!」

クエンさんが大絶賛してくれた通り、それからゴイル族がこの遊園地目当てで街にどんどんやってくるようになった。

ホテルの一部も、彼らが好む色合いのものに改装してみた。

「ボクが言った通りだろう! それにボクのイメージを伝えるだけで、ここまで完璧に再現してしまうキミもなかなか才能があると思うよ!」

「あ、ありがとうございます」

「……ただねぇ、一か所だけ、どう考えても違うなって場所があるんだよねぇ!」

「え? どこですか?」

「あそこだよ!」

クエンさんが指で示した先にあったのは、お化け屋敷だった。

「何なんだい、あの地味な建物は!」

「いや、お化け屋敷なんで」

「あれももっと派手にしよう!」

「さすがにそれは」

派手なお化け屋敷なんて聞いたことがない。

どう考えても怖くなくなってしまうだろう。

クエンさんとそんなやり取りをしているときだった。

「ルーク村長!」

「あ、ヴァラドさん」

「これは一体どういうことなんですか!?」

「はい?」

「この遊園地ですよ! まさか、こんなに居心地の悪い空間にしてしまうなんて!」

「えええ……」

どうやらヴァンピア族にとって、この派手派手しい遊園地は改悪だったらしい。

「元から割と派手だったとは思うんですけど……」

「そうです! ただ、そこは仕方ないかと思っていましたよ! それがまさか、さらに酷くされてしまうなんて! これではさすがに遊ぶのも辛いです!」

「な、なるほど……」

ちなみに赤色だけは大丈夫らしい。

「全部赤く染めていただくか、もしくはもっと地味な色合いにしていただくか、どちらかにしていただきたい!」

「おいおい、ヴァンピア族の、あまり困らせるんじゃあないよ」

クエンさんが割り込んできた。

「残念だけれど、これでこの遊園地は完成形さ。地味になんてできるわけがない」

「っ、ゴイル族のっ……なるほど、これはあなたの仕業というわけですね!」

「その通りさ。おっと、一つ訂正だよ。これが完成形と言ったけれど、あと一か所、修正しなくちゃいけないところがあったんだ。それはここ、お化け屋敷さ!」

「な、何だって……っ!?」

「この地味の極致のような建物を、もっと派手でカラフルで楽しいものにする。それでこの遊園地は真の完成となるのさ!」

これには温厚なはずのヴァラドさんが激高した。

「今やこのお化け屋敷は、わたくしたちヴァンピア族の聖地です! それを改悪するなんて、絶対に許しはしません!」

いつの間にか聖地にされてた!?

「クエックエックエッ! 悪いけれど、もう決まったことなのさ!」

いやいや決まってなんかないよ!

「っ……この鳥頭めぇぇぇっ! 血抜いて焼き鳥にして喰ってやろうかゴルアァァァッ!!」

「誰が鳥頭だっ、この吸血野郎……っ! その地味な面洗って出直してきやがれぇぇぇっ!」

急に汚い言葉で罵り合い始めた!?

「す、ストップストップ! 喧嘩しないで!」

今にも殴り合いを始めそうになる二人を、僕は慌てて制する。

「双方が納得する方向で何とかするから! 抑えて抑えて!」

遊園地を二つ作ることになった。

一つはすべてが派手なゴイル族向きの遊園地で、当然ながらお化け屋敷もカラフルなものにした。

もう一つはすべてが地味なヴァンピア族向きの遊園地で、そもそも園内全体をお化け屋敷のようにした。

結果、どちらの遊園地も大繁盛し、両種族から大いに喜ばれたのだった。