軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第468話 だいぶ別物だと思うけど

魔王が玉座から悠然と立ち上がる。

……やっぱり大きい。

三メートルに迫る背丈に加えて、ダイモン族らしい分厚い胸板と肩幅の持ち主で、もちろん腕も足もめちゃくちゃ太い。

邪神の力で魔王になったから大きくなったのか、元から大きかったのかは分からないけど、ゴリちゃんすらも上回るパワーがありそうだ。

加えて、猛烈な闘気。

一歩ずつこちらに向かって歩いてくるだけで、僕みたいな弱い人間は気圧されてしまう。

しかも先ほどアカネさんの持つ聖水の瓶を、闘気を飛ばして遠距離から割ってしまう技術を持っているというのだ。

「ふん、悪くない闘気だ。まずはお手並み拝見といくか。ガイオン」

「ふはははは! お任せあれ!」

父上が促すと、ガイオンが巨大な棍棒を手に魔王に立ち向かっていった。

ガイオンも二メートル越えの巨漢なのに、魔王と比べると小さく見える。

「四将の切り込み隊長ことガイオンだ! 魔王の力とやらを我に見せてみるがよい!」

豪快に棍棒を振り回し、強烈な一撃を繰り出すガイオン。

対する魔王は避けようとすらせず、ただ片腕を掲げた。

どおおおおおおおおおんっ!!

凄まじい音が鳴り響き、ガイオンの棍棒が魔王の片手に防がれる。

「この程度か?」

「っ……まだまだぁっ! ぬおおおおおおおおおっ!!」

満身の力を棍棒に込めるガイオン。

だけど魔王の片腕はビクともしない。

「人間にしてはパワーのある方だが、しかし所詮は虫けらよ」

「~~~~~~っ!?」

魔王が逆の腕を突き出すと、爆音と共にガイオンの巨体が吹き飛ばされる。

「ほほほ、あのガイオンが力で負けるなんて。ですが、これならどうです?」

魔王の頭上に巨大な岩が出現。

メリベラが黄魔法で作り出したそれが、勢いよく魔王の頭上へと落下した。

「無駄だ」

だが魔王は、数トンはあるだろうそれを、片手で軽々と受け止めてしまった。

それどころか、こちらに向かって投げつけてくる。

「はっ!」

その岩が真っ二つに割れた。

父上が剣で叩き斬ってしまったのだ。

「面白い、これが魔王か! この私が本気で相手をするのに相応しい!」

魔王の強さに絶句する者たちが多い中、父上はむしろ目を輝かせていた。

全身から魔王に匹敵するほどの苛烈な闘気が滾り、手にする剣にまでそれが帯びていく。

地面を蹴った父上が、一足飛びで魔王の懐へ。

下段から放たれた斬撃を、魔王は今までのように腕で受けようとはしなかった。

素早いバックステップで剣を躱す魔王。

それでも父上の剣は僅かに届いていたのか、魔王の腹部に薄っすらと切り傷が浮かび上がる。

「どうした? 先ほどのように腕でガードしないのか?」

「……安い挑発だな。良いだろう、乗ってやる」

父上の剣が目にも止まらぬ速さで閃いた。

しかし魔王は今度はそれを避けようとはせず、両腕で捌いていく。

「ふはははは! エデル様の剣を素手で防ぐとはな! さすがは魔王だ!」

「闘気を瞬間的に収束させることで、あの斬撃を受け止めてるのよぉん! でも言うのは簡単だけど、相当な技術と集中力がないとできない芸当だわぁん!」

「魔王もすごいけど、アルベイル卿も途轍もない剣技だわ……」

たった一人で魔王と互角にやり合う父上に、一番驚愕したのはラウルだ。

「こ、これが今の親父の本気なのか……? 以前オレが対峙したときより、遥かに強くなってやがる……っ!」

かつて父上と直接剣を交え、しかも父上と同じ『剣聖技』のギフト持ちだからこそ、分かる部分があるのだろう。

「当然でしょう。エデル様はあれ以来、自らを過酷な環境に置き続け、ひたすら己の剣を鍛え上げてこられたのですから」

ネオンが誇らしげに頷く。

でも、成長期のラウルならともかく、あの年齢でさらに強さを増すなんて……一体どんな訓練を積んできたのだろうか。

「はあああああっ!!」

「~~~~っ!?」

父上が裂帛の気合と共に放った斬撃が、ついに魔王の鉄壁を破った。

剣を受け止めた腕から、盛大な血飛沫が舞う。

「どうした? 魔王とはその程度か?」

「ぬかせぇぇぇっ! 人間ごときが、調子に乗るなぁぁぁっ!」

魔王の髪が逆立つ。

全身の筋肉が膨張したせいか、それともさらに勢いを増した闘気のプレッシャーのせいか、さらに大きくなったように見える。

「っ……あれこそが、ダイモン族が戦闘魔族と言われる所以っ……やつらは憤怒と共に、その強さを増大させることができるのだ!」

ガオガルガさんが叫ぶ。

「怒るほど強くなるなんて、攻撃を受けるほど強くなるゴリティアナみたいじゃない……っ!」

「いや、ゴリちゃんのとはだいぶ別物だと思うけど……」

セレンの発言に思わず横やりを入れてしまう。

「私を怒られたこと、後悔させてやろう」

「ふん、そう言ってやはり期待外れ、なんてことはな――」

父上がすべて言い切る前だった。

信じられない速度で自ら距離を詰めた魔王が、剣のガードごと父上を吹き飛ばしてしまう。

「「「エデル様!?」」」

父上は二十メートルほど弾き飛ばされ、背後の壁に叩きつけられた。

「先ほどの言葉、そっくりそのままお返ししてやろう。どうした? 人間は所詮その程度か?」