軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第466話 死に損ないが

魔王の拠点に辿り着いた僕たちは、螺旋状の坂道を駆け上がっていた。

所々に横道があるけれど、無視して上へ上へと上っていく。

「……ちっ、何も出てきやしねぇな」

「そうねぇん。逆に不気味な感じだわぁ」

当然ながら魔族との激突を想定していたというのに、まだ一度も遭遇していないことに、逆に僕らは警戒心を強めていた。

「父上たちが倒してしまった……? それとも、上で待ち構えているのかも……?」

「……気を、付けろ……この先に……複数の、反応が、ある……」

そのときディルさんが注意を促す。

少し走る速度を緩めて進むと、やがて通路が大きく開けた。

円形の広い空間だ。

岩の中にこんな場所があるなんて不思議だと思ったけど、地面や壁が平らに均されているので、人工的に作った部屋かもしれない。

その部屋で、複数の人影が戦っていた。

「っ……父上!」

父上と四将たちだ。

部屋の中にはアルマル族と思われる獣が倒れ、どうにかまだ交戦を繰り広げているのが、右半身が白銀の毛並みの狼、左半身が黄金の毛並みの虎という、特殊な姿の獣だった。

だがそれも父上たちの猛攻に圧倒されていた。

ついには父上の斬撃をまともに浴び、地面に倒れ伏す。

「六魔将の一人だというから少しは期待していたが……所詮はその程度か」

「くっ……人間めぇぇぇっ! たとえこの命に代えてでも、魔王様のところには絶対に行かせぬぞぉぉぉっ!」

「ふん、死に損ないが。ならばとっとと死ね」

致命傷を負いながらも、手負いの獣さながらに再び飛びかかろうとする半狼半虎の魔族へ、父上がトドメを刺そうとする。

「待ってください!」

「…………お前たちもここまで来たのか」

慌てて僕が叫ぶと、父上は剣を止めた。

「っ……何だ、これはっ……」

半狼半虎の魔族は、ビビさんが放った黒魔法で影ごと身体を縛り付けられている。

「久しぶりじゃねぇか、親父。生きてやがったとはな」

「……ラウルか」

ラウルも、地下牢から父上が脱走して以来の再会だろう。

「ふはははは! ラウル様、また大きくなられたな!」

「ほほほ、エデル様の若い頃にそっくりですね。やはり同じ『剣聖技』のギフトを授かったもの同士といったところでしょうか」

四将たちが言う通り、確かにラウルはまた父上に似てきたかもしれない。

背も高くなったし……。

父上たちがそんなやり取りをしている一方で、半狼半虎のアルマル族が、ビビさんに気づいて吠えていた。

「貴様っ、なぜ人間に与している!?」

「正気に返ることができたからだ。お前も今から正気に戻してやろう」

「どういう意味だ!?」

「すぐに分かる」

聖水を手にしたビビさんが、アルマル族の頭にぶっかけた。

「があああああああっ!? な、何だ、これは!? 全身が焼けるように熱い!?」

しばらく地面をのた打ち回っていたアルマル族だったけれど、やがて呪いが身体から抜け、大人しくなった。

「う……お、オレは、一体……?」

「正気に戻ったようだな。アルマル族の族長、ガオガルガよ」

「っ……そうだ……オレは、今まで何を……」

ガオガルガという名前らしい。

我に返ったのか、その目に段々と理性の光が宿っていく。

……見た目は完全に獣なので、逆に違和感があるけど。

「呪いだ。やつは……魔王は、呪いによって我々魔族を服従させているのだ。私も同じだったが、彼らのお陰で解放され、自我を取り戻すことができた」

「なるほど……おおよそのことは理解したぞ。しかし、なんと恐ろしい呪いなのだ。今の今まで、間違いなくオレはやつのことをまるで神のように崇めていた……自分がそれを支える六魔将の一人に選ばれたことを、この上ない喜びと考えていたほどだ……」

ガオガルガさんは悔しそうに獣の顔を左右に振る。

「どうやってその魔族の女を仲間にしたのかと思っていましたが、そういうことでしたか」

納得したように頷いたのは、四将の一人、ネオンだ。

「うん。それで彼女に案内されながら、ここまで来ることができたんだ」

「なるほど。だからこんなに早かったのですね。まさか我々が追いつかれるなんて」

「むしろ何の情報もないのに、普通にここまで辿り着いてる父上たちが異常だと思うけど……」

詳しいことを聞きたいところだけど、ここは敵地の中心、そんな余裕はない。

「オレにも協力させてくれ! やつに一矢報いねば気が済まん!」

「と言っているが、どうだ?」

「もちろん構わないよ! 六魔将が二人も共闘してくれるなんて百人力だしね!」

「「その呼び方はやめてくれ」」

二人が口をそろえて嫌がった。

確かに六魔将というのは、魔王軍が結成されてからのもので、正気に戻った二人にとってはむしろ黒歴史なのだろう。

「ふははははは! 急に頼もしい仲間がたくさん増えたな!」

「……ふん、私の足手まといにはなるなよ」

父上が鼻を鳴らしながら走り出す。

それを即座に四将たちが追い、僕たちもそのあとに続いた。

それにしても、まさか父上たちと共闘する日が来るなんて……。

敵だったら恐ろしいけれど、味方ならこれほど頼もしい人たちはいないかも。